第4話 妄想という魔物

今の医者は、私の症例について、躁鬱と妄想は関係ない可能性があると言った。

妄想。これが魔物なのだ。これから過去にあった妄想を列挙して行く。


1.この街の人は、皆、ゾンビだ。(17歳の頃)

  突然の妄想ないし、幻覚だった。私はそのまま家出した。

2.きっとアムネスティが助けに来てくれる。(大学生、ツアー中に)

  コンダクターに殺されると妄想した。狂っていた。

3.私はいつか、精神病になるだろう。(20代より)

  これは妄想というより予感だろう。予感は当たった。

4.私はノストラダムスが預言した、世紀末の大王だ。(1990年代)

  これは天の声。よくある妄想らしい。  


■38歳(1999年)で精神科初診


5.今開発中のシステムにCIAが強い関心を持っている。

  画期的なシステム開発のマネージャーをしていた。

6.今度の株主総会で動議が出され、私が取締役に就任する。

  完全なる妄想。いかれていた。

7.私は命を狙われ、追われている。

  これはよくある追跡妄想。タクシーで良く逃げた。

8.親友がライフルで撃たれ殉死した。

  重要人物妄想の派生だろう。

9.私が引退を表明すれば、お餞別で即日、30万円は集まるだろう。

  誇大妄想だろう。

10.ホテルの隣室から殺し屋の声が聞こえる。

  重要人物妄想に、幻聴が加わっている。

11.画期的な日本の防空システムを開発したので、報奨金が現金輸送車でやってくるだろう。

12.俺は来年、某大学の学長になる。

13.俺は来年、某一兆円超の時価総額の上場企業の取締役に就任する。

14.来年は社会福祉法人の理事長になろう。

15.父は今年、ノーベル平和賞をとるだろう。

16.空き巣が入ったと思い、警察を呼ぶこと10回。


その他、多数。婚活妄想というのもある。私はこの風俗嬢と結婚するのだ。あり得ないし。来月になれば金が入る。入らないし。

病相がここ数年で変化した。昔は躁状態でも記憶はあった。しかし、この3年ほど前から記憶が飛ぶことがある。病状が進行しているということだろう。

これだけの病的妄想をして、貴方のは妄想ではない、過剰な想像だと言い放ったヤブ医者がいた。それが精神科医療の現実。暗澹たる状況。泥沼的なのだ。

暗澹たる状況なのは精神科医療だけではない。俺の今の状況も暗澹としている。いや、そういう話ではないな。妄想についてだな。妄想のメカニズム。そこに切り込まないとダメだろう。ああ、俺には無理だ。妄想編はこれで切り上げて次に行こう。




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