第3話
4人と一匹は朝食を取りながら、今後の行動を決めるための情報の共有と話し合いが行われていた。
「ふむ、ではそのカオステラーとやらを倒してしまえばこの
猫の確認を込めた問いにレイナは他の三人の予想に反して緩く首を振った。
「確かに、今までの想区で言えばそう。でも、もうカオステラーを倒して、私が調律してどうにかなる段階ではないの」
「それって、どういう意味?」
エクスが眉を顰める。
「そうね、例えば、エクスが毒に侵されたとするわね」
「僕!?」
「例えよ例え」
「話を続けるけど、毒は毒消を使えば治るけれど、毒を受けて時間が経てば経つだけ、生命の危険が高くなるわ。何とか救えたとしても、それを持ち直す体力が無ければ死んでしまう」
「つまりこの想区はカオステラーって毒に侵され、持ち直す体力のない瀕死の重症ってワケか。でもお嬢はここに来たときにまだ間に合うっつってなかったか?」
レイナは頷いた。
「ええ、そうよ。ただし、主役さえ見つかればね。
でも、現状からすれば、『間に合うかもしれない』かしら」
「冒頭にあれだけカッコよくキメといて、断定から可能性の話になりましたか」
「仕方ないじゃない!事態は刻一刻と動いているのよ!話を戻すけれど、
この地に
「まあ、もし仮に、主役がカオステラーに乗っ取られてたとしても、ぶっ倒して正気にもどして動いてもらえば何とかなるかもってか?お嬢」
「まあ、そうなるわね。調律が先にしろ、後にしろ、主役がその通りに動いてさえしてくれれば、何とかなるかもって感じね。あとは、そのカオステラーの事なんだけど……」
「カオステラーがどうしたの?」
レイナは何か言いかけて口を閉じ、迷うように口を開いた。
「急激にカオステラーの気配が希薄になってきているの」
その一言に全員の表情が引き締まる。
「そりゃどういうこった、お嬢」
「消えたのではなくて、ですか?姉御」
「ええ……」
「つまり、この想区からカオステラーが去りつつある……ってこと?」
「いくつか良いか?」
レイナが口を開きかけたとき、それまで聞き役に徹していた猫が会話を遮るように手を挙げ、レイナはエクスから猫へと意識を切り替え、一つ頷いた。
「ええ」
「ふむ、まず、そのカオステラーの気配はまだ消えていないという事で良いか?」
「ええ、完全には消えてはいないわ」
「ふむ……、ではもう一つ、仮にそのカオステラーがこの地を去ったとして、ぬしらが主役と呼ぶ者さえいれば、この想区は救われるのか?」
「それは……、断言できないわ。この私の感じているのは誰かに憑依したカオステラーの気配。そしてカオステラーの元は
レイナの言葉に猫は金色の眼を細める。
「成程」
猫は帽子のつばを目元まで引き下げた
猫の感情は
「吾輩は故郷の最期をこの目にするつもりでこの地に来たが、面白い。娘御よ、ぬしの想いが何処まで通るかはわからぬが、それに乗ってやろう」
猫の口が笑みの形に引き上げられる。
「猫さん、猫さん」
そんな猫の腕の毛をシェインがチョイチョイと詰まんて引っ張た。
「乗ってやろうは構いませんが、そもそも主役が見つかっていないんですよ?それとも猫さんは主役の居場所に心当たりが?」
視線が一斉にあつまる中、猫は笑みを深めた。
「主役ならば、ぬしらの前にいるではないか」
集まった視線が一気に疑問符のこもったそれに代わった。
「え!?主役は粉ひき小屋の三男のカラバ侯爵だよね」
「カラバ侯爵ってのは人間だろ?」
それを聞いた猫はカラカラと笑い出した。
「何を言っている。粉ひき小屋の三男をこの想区の王へと導くのは猫の役目」
「つまり、ひょっとして、この想区の主役は……」
猫は4人のそれぞれの反応を気に入ったのか喉をゴロゴロと鳴らしながら、うむ、と一つ頷いて見せる。
「かつて、吾輩を助けた旅人は、この想区をこう呼んだ」
「『長靴を履いた猫の想区』と」
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