人間領のボッチ 3
私に割り当てられた部屋に入り、見回した。部屋は10畳くらいの広さでベッドや机、椅子くらいしかなく、簡素なものであった。
私は意外に広い部屋であることに驚いた。離れた部屋に連れて来られたため、もっと酷い部屋だと思っていた。でもそんなことはなく、ただ良い部屋が遠い所にあっただけなんだと自分の中で勝手に解決した。
1人離れた部屋に連れて来られた時は何か怪しいと思っていた。しかし、怖くて理由を聞けずにいた。それに何か変な言葉も聞こえてこなかったのも聞かなかった理由である。
ベッドに横になると意外と布団が柔らかく、良い部屋に割り当てられたことがわかった。それで待遇が良いことに気づいた。そう思うとあの聞こえていた声も異世界に連れて来られたストレスなんかで聞こえていた幻聴なんじゃないかと思えた。それに自己紹介などのときに言われたのは心読みではなく翻訳という恩恵らしいから、幻聴と思えばいろいろと納得できた。
コンコン。
ベッドの上で休んでいるとそうドアをノックする音が聞こえた。
私はそのノックの音に驚き、飛び起きた。
「は、はい」
「喜読さん、入っても良い?」
私が言葉を詰まらせながら返事をするとそう返事が返ってきた。
「どうぞ」
私は声からクラスメイトの宝造寺さんだとわかったのでそう返事を返した。まあ、名前を知ったのはさっきの自己紹介の時なんだけどね。
ドアが開き、人が入ってくると宝造寺さんは1人で他には誰もいなかった。
「宝造寺さん、夜遅くに、何か、ありましたか?」
私は普段から人と話さないので、言葉に気をつけながら、そう聞いた。
「喜読さん、さっきも言ったけど、私あまり苗字で呼ばれるのは好きじゃないから、言美って呼んでよ。それと私も喜読じゃなくて心奈で良いかしら?」
「わかりました。えーと、言美、さん」
「さんって、それにその言葉使いも気になるけど、まあ、それよりも用事が優先かな」
「用事?」
「ん?もしかして、何か用がないと来ちゃいけないの?」
「そういうことじゃないけど」
「それなら良いじゃない。まあ、用事ってほどじゃないんだけどね。ちょっと聞きたいことがあって来たんだよね」
聞きたいって何だろ?私に聞くことなんてないと思うんだけど。
「それで聞きたいことってなんですか?」
「うん、それなんだけど、単刀直入に言うと心奈の恩恵って翻訳じゃないでしょ?」
「え?どうしてそう思うんですか?」
私はそう思った理由が気になりそう聞き返した。
「私の恩恵は知ってるでしょ?」
「はい。確か、嘘見抜きでしたよね?」
「そう!それで私はあの人たちが心奈の恩恵で嘘を教えていたことがわかっているんだよ。だから本当の恩恵が知りたかったんだよ。心奈は自分の本当の恩恵が分かる?」
「——っ!?」
言美さんの言葉でやはりあれが幻聴ではないことが確定してしまい、私は気が重くなった。それと同時に言美さんに心読みのことを言っても良いものかと気になった。伝えてしまったら言美さんも危なくなると思ったからだ。
「……」
「黙っちゃって。それは知らないってこと?」
「……」
私は言美さんの恩恵が嘘見抜きなので、ここで嘘をついてもすぐにバレてしまうことがわかったので、何も答えないことにした。それに言美さんも巻き込みたくなかった。
「無言ってことは、翻訳じゃないのね?」
「——っ!?」
そう聞かれたが答えることはできなかった。
「はあ。まあ、心奈にも言えない理由があるのはわかるけど、同じ世界のクラスメイトくらいは信用しても良いんじゃない?」
『私って、ここまで信用なかったの?』
「ごめん、なさい」
私はそう答えるのが限界であった。
「そう、言えないのなら仕方ないわ。変なことを聞いちゃってごめんね。それじゃあ、私は帰るね」
そう言うと言美さんはドアの方へ歩いて行き、ドアを開けた。
「そんな辛いなら、私たちに相談しても良いんだよ?」
ドアを閉じる前に言美さんそう私に言った。
その言葉で私はその優しさに泣きそうになってしまった。
『これではっきりしたわ。こっちの人間は信用しちゃダメ』
ドアが完全に閉まった後、そんな言葉が聞こえてきた。言美さんは私の言葉から何か確信を得ていたようだ。
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