第13話 1日の終わり
あの夕食の後から、女はかなり不機嫌になっていた。「なんで私だけ不味いの?」と聞かれたため、ネタばらしをしたのだ。そしたら、不機嫌になったのだ。面白がってやった俺も悪いとは思った。でも、人の食糧をもらう立場なのだから、少しくらいは遠慮しても良いと思うのだ。十分な量は与えたはずだし、そんな不機嫌になる方がおかしいというものだ。
俺は食糧を分ける理由の1つとして、この女に道案内などをさせるということも考えていた。でもこの調子だとそんなことはしてくれそうになかった。まあ、いじめた俺が悪いんだけど。
そのため予定を変え、この女はこのまま放置して、俺が1人で進むことにした。放置するのはかわいそうだから拘束を解くことも考えたが、拘束を解いたら襲われそうなので、解放するのはなしだ。
まあ、魔族は友好的ということも信用できなくなったから、この女を人質として連れて行くのもありだが、この女にその価値があるかはわからないため、やはり放置することにした。
予定も決まり、早速ここを離れたいのだが、あいにくと夜なので、今日はここで一夜を明かし、翌朝出発することにした。そのため、今日はもう寝ることにした。
俺が横になり、寝ようとした。
「ちょ、ちょっと!何寝ようとしてるのよ!」
俺が寝ようとするとさっきまで、一言も喋らなかった女が、俺に話しかけてきた。
明日の朝も早いので、俺はその言葉を無視して、寝ることにした。もう、この女を利用できるかもわからないので、この女の言うことに耳を傾ける必要もないと判断したのだ。
「寝るなぁ!」
なんか、上からの言いように俺は、やはり無視することに決めた。
「ほんと待って!寝ないで!」
さっきと比べると少しだけ、良くなった。だからと言って、起きてはやらないけどね。
「お願いします!寝ないで話を聞いて!」
なんか、ものすごく必死だけど、何かあるのか気になった。まあ、話くらいなら聞くかと思い、起きようとした。
「起きろって言ってるでしょ!寝たふりなんてしてないで起きなさいよ!」
俺はその言葉で完全に起きる気がなくなり、無視して、寝ることにした。全く人に頼む態度じゃないことを知ってもらいたい。
それから、しばらく無視し続けていた。本当なら、寝たいのだが、うるさくて寝れない。
だから、静かになるまで待つことにした。
少しすると急に静かになった。これで眠れると思っていた。
「お願い、だから、起きてよ」
と、今にも泣きそうな声で、そんな言葉が聞こえてきた。
なんで、そこまで必死なのかはわからないが、聞いていてかわいそうになってきたため、俺は起きて話を聞くことにした。
「さっきから、なんだよ」
俺が起きたことを知るとさっきまでの暗さはなくなり、顔を輝かせていた。
「その大したことじゃないのですが」
「そうか、なら、おやすみ」
大したことじゃないようなので、俺は再び横になった。必死だったから、何か命に関わることかと思っていたが、そんなことはないと知り、寝ることにした。
「ちょっと待ってください!嘘つきました!本当はすごく大事なことなんです!」
振り回されているように感じた俺はもう関わる必要はないと思い、無視した。
「お願いします!もう一度だけチャンスをください!」
と、やはり必死に訴えてきた。それにチャンスくらいは与えても良いかと思い、聞くことにした。
「これで最後だからな」
俺が起き上りそう言うと、やっぱり嬉しそうに顔を輝かせていた。
「はい!それで結構です!」
「それで話ってなんだよ」
「それはですね。この拘束を解いてほしいんです」
俺は、拘束を解いて、の辺りで話を聞くのをやめ、寝ることにした。そんな危ないことやるわけないだろ。
「ちょっと、寝ないで話を聞いてください!」
必死に訴えてきているが、そればかりは俺も話を聞くことはできない。だから、俺は無視することにした。
「わかりました!拘束を解いてとは言わないので、話だけでも聞いてください!お願いします!」
拘束を解かなくて良いとのことなので、話くらいならと思い聞くことにした。それにさっきからの必死さに何かあるのかと、少し気になったのもある。
「わかったよ。話くらいは聞くよ」
「あ、ありがとうございます!」
必死過ぎてさっきから、言葉使いが敬語みたいになってきていた。そのため、そこまで必死になる理由が余計気になってしまった。
「それで、なんでそんなに必死なんだよ。何か危ないことでもあるのか?」
「危ないって、こんな自然の中が危なくないわけがないじゃない!モンスターに襲われるでしょ!」
「え?全然襲われたこと無いけど?」
「当たり前でしょ!あんたが出てきた森にモンスターなんて一匹もいないんだから!あの森が特殊なだけで、このあたりにはモンスターがたくさんいるんだから!——ってそうよ!なんであんたはあの森から出てきて平気なのよ!」
「ん?あの森ってそんなにやばいのか?」
確かにあの森に死にかけたっぽいが、もしかして、俺が思っている以上にやばいのか?
この女何か思いついたみたいで、余裕さが戻っていた。
「やばいってものじゃないわよ!あの森では1日も生きられないのよ!それに一度森に入ってしまえば、数日後には死んでしまうのよ!」
自分が優位に立っていると思っているらしく、最初の自信が声に戻ってきていた。
「え?」
俺はその言葉聞いて慌てて浄化をした。そういえば、森を出てからは、浄化をしてなかったことに気がついたからだ。
俺は、浄化したことで安心し、ホッと一息ついた。
「何か安心しているみたいだけど、もう遅いわよ?まあ、この拘束を解いてくれれば、私が死なないように魔法を使ってあげても良いけど?どうする?」
「ん?別に使ってもらわなくて良いけど?拘束なんて解きたくないし」
「はあ?!あんた死ぬの怖くないの?!」
「いや、怖いも何も死ぬわけないし」
「あんたが森から出てきた時点で、正しく魔法で浄化しないとあんたの死は確定してるのよ!わかる?」
「いや、だから正しく浄化したから、問題ないって言ってるんだけど」
正しいかどうかはわからないが、問題はないと思うし。
「人間が正しく浄化できるわけないじゃない。そんな嘘言ってないで素直に私の魔法で浄化されなさいよ!」
「そんなこと言われても、浄化は終わってるし。それに、俺、あの森で一度死にかけたけど、今は普通に生きてるから、大丈夫だと思うけど?」
「え?そうなの?」
急に女の声が弱々しくなった。
「ああ、そうだけど?」
「ちなみにどんな感じだったの?」
「ん?えーっと、息苦しかったかな?それ以外は特に何もなかったと思う」
これは女にとって1番聞きたくない答えだった。女は、どうなるかまでは言ってなかった。だから、それを言い当てられたことで、この男が正しく浄化できていることを表していた。
これで、女は逃げる唯一の方法を失った。それは女にとって死を覚悟させるものでもあった。このあたりには凶暴なモンスターが多くいる。その中を拘束された状態で切り抜けるのは難しい。
もう一つあるが、それを実行するのはもう絶望的であった。それは、この男と仲良くなることだ。だが、私が襲ってしまったことで、この男は私のことをかなり警戒してしまっている。そのせいで、仲良くなるなど、無理であった。
そのため、手詰まりとなり、絶望するには十分であった。
「なあ?急に黙ったけど、どうしたんだ?」
「いや、もうどうしようもなくなって諦めているところよ」
「ん?何を諦めるんだよ?」
「何って生きることよ」
「なんで、そうなるんだよ。俺はお前を殺したりなんてしないぞ?」
生きることを諦めるっていうことは、俺が何かしない限りは問題ないと思った。だから、俺に殺す意思がなければ、死なないはずなのになんで生きることを諦めるのかわからなかった。
「それなら、この拘束を解いてよ」
「だからそれは無理だ」
「やっぱり、私を殺すつもりなんじゃない」
「なんで、そうなるんだよ」
「なんでって、こんな拘束されている状態で、モンスターに襲われたらどうしようもないわよ」
「そんなことないだろ?俺に使った魔法でも使えば、問題ないだろ?」
「確かに、数が少なければそれで問題ないわ。でも、この状態で囲まれたら、どうすることもできないわよ」
「確かに」
俺は、魔法が使えれば、拘束しておいても死ぬことはないだろうと思っていたが、意外なところに盲点があった。かといって拘束を解くわけにもいかない。
俺はどうするか迷っていた。
このまま何もしないで放置するのは簡単だ。でもそれで、襲われてしまい死んでしまえば、目覚めが悪いというか、気分が良くないのは確実だ。それは嫌だし、自分がそれを防げたにも関わらず、何もしなかったというのは、罪悪感に襲われてしまう。
だから、俺は拘束を解かずに何か無いか考えていた。
「そうでしょう?それなら、この拘束を解いてよ」
「だから、それは無理だ」
「それなら、寝ないで私を守ってよ」
「なんでお前のために俺が身を張らなければならないんだよ。それに、俺なんて使い物にならないぞ?」
「使い物にならないわけないじゃない。私の攻撃を防げるんだから、それで守ってよ」
俺はその言葉で、気がついた。この女にも同じ魔法を使えば良いということだ。そうすれば、俺としても安心だ。それに、これができれば、俺はこの女のことを気にせず寝れる。
そうとわかれば、俺は女のそばに行き、早速文章魔法を発動させた。文章は「目の前の女の体の周りに10秒毎にMPを1消費する障壁を常時展開」と入力した。俺の時よりも消費MPは少ないが問題はないと思った。まあ、魔法使えるだろうから、大丈夫と思ったからだ。
魔法はちゃんと発動したみたいで、目を凝らせば、膜みたいのが張れていた。俺の方の膜も残っていたみたいなので、よかった。これで安心して眠れるというものだ。
俺は再び、女から離れ、横になった。
「ちょっと!急に近づいてきて、何も言わないで戻らないでよ!それより、寝ないでよ!」
そんな風に女は騒いでいたが、1日の疲れもあったので、すぐに寝てしまった。やっぱり、気にすることがないと、周りがうるさくてもすぐに寝られる。
何度か悲鳴みたいなものが聞こえてきたような気がしたが、幻聴だと思い、気にしないで俺は寝続けた。
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