第12話 夕食

俺は、なんとかレベルを1つだけ上げることができ、レベル5になった。その時「目の前にある俺の右足のサンダルを1メートル北の方角へ移動させる」という文章の北の部分を南、西、東に変えたり、1メートルを100センチや0.001キロや1000ミリに変換させて15回発動させ、レベルを上げていた。

レベルを上げている間に時間が過ぎ、気づけば、夕方になっていた。時間もちょうど良かったので、夕食を作ることにした。作ると言っても、切って焼くだけだけどね。


今回は前みたいに、火の使い方ではなく、木などを燃やそうと思っている。それは、あまりMPを使いたくないというのもある。敵対している魔族が1人増えたのだ、何をしでかすかわからない。そのため、万が一に備え、できるだけMPを残しておきたいのだ。


俺は、早速文章魔法で火を点け、木に火を移させた。それから、なんとか火を消さないようにしながら、火を大きくしていった。

十分火が大きくなったところで、俺は肉を取り出し、切りながら焼き始めた。最初は、今朝までに下処理をしておいたものから食べ始めた。下処理は、臭いを消すだけで他には何もしていない。


俺が切りながら焼き、食べていると「くぅぅぅ」とお腹が鳴る音が聞こえた。


俺は、その音が聞こえた方を見ると魔族の女が目を覚ましていることに気づいた。俺は、すぐ動けるように立ち上がり、警戒した。

しかし、女は攻撃をする意思はないらしく、何もしてこなかった。そのことに安心した俺は、再び座り食べるのを再開した。


「————!!!」


俺が食べ始める女は、抗議のつもりなのか、声を上げていた。しかし、俺には何と言っているのかさっぱりわからなかった。

それよりもお腹が空いていたので、俺はそれを気にせず、肉を食べることにした。


「————!!!!!」


そのことが納得いかないのか、さっきよりも大きな声で何か言っていた。

俺もさすがにうるさいと感じ、話を聞くことにした。しかし、言葉がわからないため、どうにかする必要があった。


簡単に思いつくのは、文章魔法で言葉を通じるようにすることだ。


今は何か考えるのも面倒だったため、それを実行することにした。

文章もテキトーに「目の前の女の話す言語がわかるようになる」と入力し、発動させた。

俺が端末を使っている間もそのことが気に入らないのか、女は何か言っていた。何を言っているかはさっぱりわからないけど。


文章魔法を発動させると、さっきまで聞き取ることができなかった言葉も聞き取ることができるようになっていた。


「——いい加減にしてよ!私の目の前で何、美味しそうに食べてるんですか?!なんですか、みせびらかしてそんなに楽しいですか?!それに、早く拘束を解きなさい!私にこんなことをしてタダで済むと思っているんですか?!」


「え?拘束を解かないとやばいの?」


俺は素直に何かやばいことでもあるのかと思い、聞き返してみた。


「い、いきなり話さないでください!びっくりするじゃないですか!」


「ご、ごめんなさい」


俺は、女の勢いに押され、つい頭を下げて謝ってしまった。女は、俺が頭を下げたことを変に思ったのか、首をかしげていた。


「言葉はわからないけど、謝られているのかしら?良い心がけだわ」


俺は、そのことを聞いて少し混乱した。俺の言葉が通じてないみたいなのだ。でも女の言葉は聞き取れている。

そのことを少し考えていたら、その理由がわかった。

俺は文章魔法で女の言葉がわかるようになると入力した。しかし、それでは俺は女の言葉がわかるが、女は俺の言葉はわからないのだ。


俺は急いで、文章を考え直し、「目の前の女と会話することができるようになる」と入力し、発動させた。


「謝るくらいなら、この縄も解いてくれるかしら?」


それと、俺が謝ったことで女の毒気はすっかり抜けているようだった。


「それは無理だ」


「?!?!?!」


俺の言葉がわかるようになり、女は驚いているようだった。


「何、驚いているんだよ」


「え?え?え?」


俺は、その戸惑いぶりが面白くて、ついからかってみたくなってしまった。


「なんだよ、そんなに話せるのがおかしいか?」


「え?そうじゃなくて、いや、それもあるんだけど。え?」


「一旦落ち着けよ」


俺のその言葉で、少しは冷静さを取り戻したのか、深呼吸をして落ち着こうとしていた。

しばらくそうしていると、ようやく落ち着いたのか、話し出した。


「あなたが魔族語を話せるのは、今は考えないでおくことにするわ」


「おう、それはありがとう?」


「別にお礼を言われるようなことではないわ。それより、あなた!私の目の前でそんなもの食べないでもらえますか?!目障りです!」


女は、落ち着いたことで自分が怒っていることを思い出したらしく、語調が強くなった。


しかし、そのすぐ後に「くぅぅ」と女のお腹が小さく鳴った。

俺は意思と体が噛み合ってないと思ったが、何も言わないでいると、女は顔を赤くしながら、言った。


「べ、別に食べたいとかじゃありませんから!ただ、しばらく肉を食べたらいけないだけですから!」


女は意味不明な説明をしていた。俺は苦笑いした。心の中では食べたいんだなと思っていた。

しかし、本人は食べたくないと言っているので、俺はその言葉に従い、女にはあげず、自分食べることにした。


「あっ、そう。なら、いらないんだな?」


俺がそう言い、肉を口に運び、食べようとした。


「え?あっ」


「ん?どうかしたか?」


「べ、別になんでもありません!」


食べたくないと言ってしまったため、今更食べたいと言えなくなってしまっているようだった。

それから、俺が肉を口に運び食べる度、女は羨ましそうにこちらを見てきていた。

それで、俺が女の方を見ると、すぐに目を逸らし、食べたいわけじゃないとアピールしてくるのだ。

さすがにかわいそうだなと思い、食べさせてやることにした。


俺はそのために、女の近くに行った。

俺が近づくと女は警戒して、少しでも近づかれないように離れようとした。でも手足が縛られているせいか、ほとんど離れることはできないでいた。


「な、なに?」


女は警戒しながら、そう聞いてきた。


「いや、肉を欲しそうにしてたから、恵んでやろうかな、と思っただけだ」


そう俺がいる言うと、嬉しそうな表情になった。しかし、いらないと言ってしまっているためか、すぐに顔を逸らし、興味なさそうに言った。


「べ、別に人間に恵んでもらわなくても、大丈夫よ」


「あっ、そう」


俺は、いらないと言われてしまったので、そのまま引き下がり、また1人で食べようと思い、元の場所に戻ろうとした。


「え?ちょっ、待ちなさいよ!」


「ん?なんだよ、いらないんだろ?それに目の前で食べちゃいけないんだろ?それなら、離れた方が良いだろ」


俺は女が肉を食べたいことをわかっていたが、あえて意地悪な言い方をした。


「うぐ、そうだけど……」


「それなら、俺は離れるから——」


「待って!」


「なんだよ」


俺が女に背を向け、歩き出そうとしたら、また止められてしまった。


「えっと、その……そうよ!」


「?」


おれが答えを待っている間に良いアイデアでも思いついたらしく、誇らしげに言ってきた。


「別に、その肉に興味はないわ!」


「あっ、そう」


「ま、待ちなさい!まだ話は終わってないわよ!」


俺は、興味ないと言われたので、離れようとしたが、まだ話は終わってないらしく、また止められてしまった。


「それで、なんだよ」


「別にその肉はいらないけど、あんたがどうしてもいらないって言うなら、私が貰ってあげるわ!」


完璧な言い訳ができたと思ったのか、胸を張りながら、そんなことを言っていた。

しかし、俺は、その言い方なら、問題ないと思い、こう言った。


「別に俺はいらないからお前に恵んでやるわけじゃないよ。それに、人の物を貰う態度じゃないだろ。そんな態度取るなら、恵んでやらないからな」


「え?」


俺の態度が予想外だったのか、女は俺の言葉を理解できず、呆けていた。

それでも、俺の言葉を理解すると、話しかけてきた。


「ま、待って!」


「あん?」


俺は少し不機嫌そうに聞こえるように返事をした。


「ま、待ってください!」


「ん?なんだ?」


俺の顔色をうかがうようになった女を見て、俺は女よりも優位になったみたいで気分が良かった。


「その、先ほどは大きな態度をとってしまい、ごめんなさい!それで、もしまだお肉を分けていただけるのなら、私に恵んではいただけませんか?」


俺は、女が変わり過ぎて、別人を相手しているみたいで少し気持ち悪かった。

でも、素直に欲しいと言えていたので、俺も意地悪はやめて、あげることにした。


「俺も悪かったよ。ほら」


俺はそう言い、肉を食べさせた。女も最初は食べさせてもらうという行為に抵抗があったのか、食べるのを躊躇っていたが、自分の手足を動かせないことを思い出したことと、腹減りには勝てなかったらしく、食べ始めた。


一切れの肉は、すぐに食べ終わってしまい、女はこちらを見上げ、次を寄越せ、とでも言いたげな顔でこちらを見ていた。

俺は、それがムカつき、もう恵んでやらないと思ったが、俺も意地悪をしてしまったと負い目があったため、そのことには目をつむり、食べさせることにした。

女は、よほどお腹が空いていたのか、夢中で肉を食べていた。俺はそれがなぜか動物に餌を与えているみたいで楽しくなり、肉をスライスしては焼き、焼いたのを食べさせることに俺も夢中になっていた。


しかし、気がつくと肉はなくなっていた。


俺はそのことでようやく今夜、俺が食べるはずだった肉を全て食べさせていることに気づき、後悔していた。

でも、女の幸せそうな顔を見ると、怒る気にもなれなかった。


俺は仕方ないので、新しい肉を取り出し、食べることにした。

俺が、肉の下準備をしようとしていると、女に話しかけられた。


「ところで、この肉ってなんの肉なの?これだけ美味しいともしかして、人間領から持ち込んだものだったりする?」


「ん?いや、持ち込んだものじゃないぞ。というか、昨日この辺りでとったものだ」


「え?この辺りでこんなに美味しい肉なんて手に入らないと思うけど……」


その言葉で俺は、正確な位置まではわからないことに気づいた。オークを近場から召喚したためだ。近くにはいるはずだけど。


「まあ、そんなことは別に気にしてないわ。私が気づいてないだけかもしれないし。それより!この肉はなんの肉なの?!」


「オークだと思うけど」


「え?……私の聞き間違いかしら?オークって聞こえたのだけれど?」


「うん、オークって言ったからね。まあ、正式な名前は知らないから、そうとは言い切れないけど」


「なんだ、あんたが勝手に呼んでただけなのね。私はてっきり、あの醜く太った、女を苗床としか考えてない、モンスターのことかと思ってたよ」


「ん?それがオークっていうなら、その肉もおそらくオークの肉で間違いないぞ?」


「おえ、おえぇぇぇ」


女は俺がオークの肉と断言すると、何故か嘔吐いていた。


「何してんだ?」


「何って、あんたに食べさせられた肉を吐き出そうとしてんのよ!なんてもの食べさせるの?!」


「はぁ!?お前が食べたいって言ったんだろ!」


「あんたが無理やり言わせたんでしょうが!」


俺は、その言い草にムカついた。


「食べたそうにしてたから、食べさせたのに、今度は吐き出したいとか、失礼だろ!」


「そんな、あんたが美味しそうに食べてるからでしょ!」


女は最終的には、俺が悪いと言い出し、また嘔吐いていた。

俺はもう、食わせてやるもんかと思い、1人取り出した肉を焼き食べ始めた。


「俺の大事な食糧を奪っておいて、吐きたいとか、ふざけんなよっ」


「変な肉じゃなければ、こんなことしてないわよっ」


どうしても譲らない女に対し、俺はかなりイラついていた。

そのため、俺は肉を取り出したまま、なんの下準備もせず、スライスし焼いて食べた。


そのため口に入れ、噛んだ瞬間、俺は肉を吐き出した。


「おえぇぇぇ」


その光景を見ていた女は。


「ふん、あんただって吐くんじゃない。それなのに私には吐くなとか、おかしいんじゃないの?」


俺はそのことに対し、苛立ち、女にも同じ目に遭わせてやると思い、俺は肉焼き始めた。

俺の食べた肉は、お前が食べたものとは違うと言うことを思い知らせてやるのだ。


「ん?どうしたの?焼いたりなんてして。もしかして今度は吐かないようにするってこと?」


俺はその言葉を無視、調理を続け、良い焼き加減になったところで、女のところに向かった。


「な、なによ」


女はこちらを警戒していた。

俺はそんなことお構い無し、こう言った。


「口を開けろ」


「え?な、なんで私がそんなことしないといけないの?」


「いいから、開けろ」


「やだ」


言うことを聞かないので、俺は、無理やり口を開けさせ、肉を入れ、噛ませた。

しかし、1回噛んだだけで、女は暴れ出し、口に含んでいた肉を吐き出した。


「な、な、な、何よ、これ!」


「何って、お前が最初に食べた肉だけど?」


「そ、そんなわけないでしょ!」


「事実だけど?」


「そんなの、嘘に決まってるわよ!」


そう言う女に対し、俺は女の目の前で、肉をスライスし、焼き、そして臭いを消した。

ただ、女からしてみれば、臭いを消したことなんてわからないだろうけど。


俺は再び、女に近づき、言った。


「口を開けろ」


「絶対に嫌!」


そう言う女の口を無理やりに開けさせ、俺は、焼いた肉を入れ、噛ませた。


今度は、さっきのようにはならず、女は肉の変化に驚いているようだった。あまりの変わりようにオークの肉ということも忘れ、食べていた。しかし、飲み込んでしばらくして、自分がオークの肉を食べていることに気づいたらしく、再び嘔吐いていた。


「わかったか。俺はお前と違ってオークだからって言って吐いたりはしない!お前と一緒するんじゃない!」


「でも、吐いたじゃない」


「うるさい!あれはミスだから仕方ないだろ!」


その時、女の腹が「くぅぅ」と鳴った。まだ食べ足りなかったのか、食べれれば良いとでも思ったのか、嘔吐くのはもうやめていた。

その代わりに。


「ねえ、お肉がまだあるなら、私にちょうだい?」


と、図々しくねだってきた。

俺はそのことにムカついた。しかし、俺はあることを思いついた。ただあげないのではなく、臭いを消してない肉をあげることにしたのだ。


俺は早速、肉をスライスし、焼いて、女に与えたすると、案の定女は吐いていた。


「な、なんでこんなにまずいのよ!」


「なんでって、さあ?俺にはわからないけど?」


俺は、そうとぼけた。

そして、ようやく静かになったところで、俺は食べ始めた。俺は、1枚肉をスライスしては臭いを消し、焼いて食べていた。


その様子を見ていた女は、俺が肉を食べようとした時、こんなことを言ってきた。


「ちょっと、待って!」


俺は食べる前の肉を口から離し、話を聞いた。


「何か?」


「そのお肉を私にちょうだい」


と、俺が何かしらの処理をしていることに気づいたらしく、俺が食べようとしていたものを狙ってきた。女はまだ食べ足りないようだった。


「ほらよ」


「え?」


俺が素直に肉をあげることに驚いていた。貰えるとは思っていなかったようだ。


「別にいらないなら、あげないよ」


「ま、待ちなさい!」


「なんだよ」


「いらないとは、言ってないでしょ!」


そう言うので、俺は臭いを消した肉切れをあげた。

しかし、さっきのことがあったためか、警戒していた。でも、俺が無理やり食わせるしかないので、警戒していても関係なかった。

女は肉を噛むと幸せそうな顔になった。


俺は自分で食べるため、含んでスライスし、臭いを消し、焼いて食べようとした。


「待って!」


「なんだよ」


さすがに、全然食べられないこの状況に少しずつ苛立ちがたまっていった。


「そのお肉もちょうだい」


俺はその図々しさにキレた。しかし、俺は怒るのではなく、仕返しをすることにした。

正直、与えなければ良いだけの話なのだが、俺はこの時、そのことに頭が回らなかった。


「ほらよっ」


俺は言葉の不機嫌さを隠すことができず、語調が強くなってしまった。


「ありがとう」


女は、俺が不機嫌になったのも気にせず、食べていた。


俺の仕返しはいたってシンプルだ。この女は、俺が食べようとしている安全な肉を狙っているのだ。なら、話は簡単だ。

臭いを消さずに食べようとし、女が欲しいと言えば、そのまま与え、何も言わなければ、俺が食べる瞬間に臭いを消せば良いのだ。そのためには、事前に文章を作っておいて、いつでも発動できるようにしとく必要があった。


そのため、俺はまず文章を作り、発動はさせずにおいて、その次に肉をスライスし焼いた。その焼いた肉を俺は、食べようとした。


しかし、女は今度は、欲しいとは言ってこなかった。そのことで、俺は作戦がバレてることに気がついた。

女は俺が肉を吐く、もしくは食べないことを期待してるのか、ニヤつきながら、こちらを見ていた。

でも、俺はそんなこと関係なく、文章魔法を発動させ、美味しく食べられるようになった肉を食べた。


女は、俺が美味しそうに食べてることが予想外だったのか、間抜けな顔なっていた。

俺は、女を出し抜けたことに嬉しくなり、顔がニヤけるのを抑えることができなかった。

女は、俺のその顔を見て悔しそうにしていた。


そこから、俺と女の肉争いが始まった。


俺は次の肉を焼いた。

まずは、警戒してなのか、女は何も言ってこなかった。

なので俺は、臭いを消し、美味しそうに肉を食べた。


その次の肉も焼いた。

俺がその肉を食べようと、すると。


「待って、それは私にちょうだい」


そう言うので、俺は素直にあげた。ただ、苦しむ姿が予想できたので、顔のニヤつきを隠すことができなかった。

女も、俺の顔がニヤついていることに気がついたのか。


「や、やっぱいらない」


と、食べる直前にそんなことを言ってきた。


「あっそ」


俺は、女が食べないということで、興味を無くし、俺は臭いを消してから、その肉を食べた。

女は俺が美味しそうに食べていることが意外だったのか、悔しそうにしていた。


それから女はしばらく欲しいとは、言ってこなかった。


しかし、俺が4切れ目を食べようとした時。


「待って、それは私にちょうだい」


俺は、今度はさっきみたいにならないように、平常心を保って、顔が無表情になるよう心がけた。

今度は、顔に出なかったのか、女がいらないとは言ってこなかった。


女は安心していたのか、なんの躊躇いもなく食べ、吐いていた。


「なんで、まずいのよっ!」


「さあ?」


俺はそうとぼけていた。

本当は、知っているが、そのことを教えてやる義務はないからな。


女はこちらを憎たらしそうに睨んできたが、俺はそのことを気にせずに次の肉を焼いた。

俺が食べようとすると。


「それは私にちょうだい!」


と、今度は、連続で言ってきた。


俺は、また、いたって平常心につとめ、顔に出さないようにした。

今度は自信があるのか、勝ち誇ったような表情をしていた。

しかし、その表情も、肉を食べると崩れた。


「だから、なんでまずいのよっ!」


「さあ?」


俺は、騙せたことが嬉しくて、ニヤけるのを抑えることができなかった。


それから、俺が取り出した肉が終わるまで、こんなことを繰り返した。結果から、言うと、俺は全部美味しく食べられたの対して、女は、ほとんど美味しく食べられなかった。

まあ、当たり前の結果だけど。


最後の方なんか、涙目になりながら、食べようとしていた。さすがにかわいそうになって、最後の1切れだけは、臭いを消したのを食べさせてあげた。

その時、女は本当に美味しそうに食べていた。


途中、吐かれたものが多くなってきたと感じ、文章魔法を使い、穴を空け、そこに吐くように指示した。

それは、正解で最後埋めるだけなんとかなり、片付けが楽に済んだ。


俺はこの生意気な魔族の女はいじめられて楽しかったが、後々俺は、多くの肉を無駄にしたことや、片付けの手間などのことを思い出し、激しく後悔していた。そもそも肉をあげる必要がないことにも気がつき、無駄だったと気づいたのだ。

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