第5話 レベルアップ
まさか、レベルアップするとは思っていなかったため、俺は今の状況を飲み込めていなかった。喜びもなく、ただ驚いていた。
俺はしばらく呆然としていたが、少しずつ状況が飲み込めてきた。
「よっしゃあああ!!」
俺は、嬉しさのあまり大声で発していた。俺はガッツポーズをしたり、飛び跳ねたりと体を使い、喜びを表していた。それから、夢や見間違いじゃないかと確かめるために、頰をつねったり、何度も画面を見たりしていた。
一通りやり終え、俺は夢や見間違いじゃないことを確認すると、また喜んだ。
それから、俺は喜ぶことに疲れ、その場に座り込んだ。座ったことで、一旦落ち着くことができた。
とりあえずは、これで今まで文字数が足りなくてできなかったこともできるようになる。それを考えただけでやる気が出てきた。
でも、まずは、この空腹をなんとかしたい。別に1日くらい何も食べなくても問題はない。しかし、腹は減る。それに、さっき喜んだ所為でさっきまで忘れていた空腹を思い出してしまった。そのため、なんとかしようと文章を考え始めた。
それでもまずは、水が飲みたかったから、水を創るための容器を創ることにした。
しかし、容器を創るには形状を指定したり、何からできているかを入力しないといけない。正直に言って、「何からできているか」の方はなんとか入力できる。が、形状を入力するのは俺にはできない。まず、どう表現したらいいかわからない。お椀にしようにもおそらく、大きさは必要だろうし、どれくらい深さでとかも必要になってくるだろう。そうなると、20文字では全然足りない。
ということから、創れそうなのは、水槽みたいに長方体なものなどに限られてくる。水槽なら、縦横高さを決めれば創れるはずだし。
ということで、早速「ガラス製の縦横高さ1mの水槽を目の前に生成」と入力したところ、1文字文字数を超えてしまった。しかも、それだけでなく、こんな文も表示された。
『水槽の厚さを入力してください』
終わった。希望なんてものはなかったんだ。
俺は、容器が創れないことに絶望したが、まだ諦めてはいなかった。
そこで、俺が新たに考えたことは、もともとある容器を創ることだ。つまり、コーラなどのペットボトル容器は創れるのではないか、というものだ。地球から持ってくることはできなくても、創ることはできると考えたわけだ。
俺は、また文章を考え、「2Lのコカ・コーラの容器を目の前に生成」と入力した。これなら、どうだ!と発動ボタンを押した。
『目の前とはどこですか?具体的に場所を指定してください』
と、またしてもふざけた文が表示された。
「それくらいはいいだろ!もっと察しろよ!」
俺は、そんなふざけた文にイライラしてたが、場所を指定しやすくするために、×印を地面につけて、さっきの文章を少し直し「2Lのコカ・コーラの容器を×印の上に生成」と入力し、発動のボタンを押した。
『上とは、どのくらい上ですか?』
ほんと、ここまでくるといっそのこと呆れるね。そこまでして魔法を使わせたくないのかと思ってしまう。正直、難癖をつけているとしか思えない。これを作った奴本当に嫌な奴だと思うよ。
でも、文字数の制限を30文字にすれば、創れそうなので、先にレベルアップの方をしていこうと思う。ちょうど、レベルアップする前に考えていた文章もあることだし、それを使っていこうと思う。まあ、そのまま使うということはせず、1回文章を考え直してから使おうと思う。
まずは周りの雑草というか、とにかく草が邪魔なので、「俺を中心に半径1mの雑草を根元から刈る」と入力して、発動のボタンを押した。
今度もダメなんだろうな、と思いながら画面を見ていたが、一向に文が表示されることはなかった。不思議に思い、顔を上げて見ると、さっきよりも今いる場所が広くなったように感じた。というか、実際に広くなっていた。今度はちゃんと発動していたみたいだった。
ちゃんと発動するとは思っていなかった。さっき発動したのは、目に見えることじゃなかったからな。発動したとか言いつつも実際には発動してないんじゃないかと少しだけ思っていた。
でもこれを目にすると、ちゃんと発動はするんだなと思った。
それによく見て見ると、俺が押し倒した草もちゃんと刈られていた。俺の座っていた場所の草もだ。しかも、俺には一切のダメージはなく、服が切られているということもなかった。
服が切られるかもしれないということに、この時気づき、危なかったと思った。下手をすれば、俺の体の一部が切られていたかもしれなかったからだ。
と、怖いことは忘れ、俺は刈られた草を集め始めた。これは、単純に草が多くあった方が座っているのに、楽だと思ったからだ。
ただ、割と草は多く、刈られた草を全部集めることはできなかった。それでも充分な量の草を集められたから、座っている分には問題ない程度には、座りやすくなった。
それから俺は、1つだけやりたいことができたのでそれを実行することにした。
それは、邪魔な木があるからだ。雑草を刈った中にその木が入っていたらしく、木は切られずにそのまま残ってしまったのだ。これは邪魔だと思い、切ることにしたわけだ。
俺は、木に近づき、木に触れ、「俺が触れている木を消滅」と入力した。なんとなく、切ると入力すると、どこから切りますか?みたいになりそうだったから、それなら消してしまえという考えになったからだ。
結論から言えば、俺の思惑通り木は跡形も無く消えた。しかし、消えて欲しくない部分まで消えてしまった。それは、木の根だ。木の根が消えてしまったことで、根があった部分沈んでしまい、穴ができてしまったのだ。それもかなり根が広がっていたらしく、大きく穴ができてしまった。穴というよりは、窪み?凹み?に近いかもしれない。
できてしまったものはしょうがないが、できるだけそこには近づかないようにしようと思う。これ以上、この穴が大きくなるのを防ぎたいからだ。
これで文章を2回使ったことになる。ということは、後1回使えれば、ようやく水が飲める。
そう思うと、やる気が出た。
俺は、やりたいことを思いついたが、それは水ができてからの方が良いと思い、違うことを考え出した。今は、無駄に文章魔法を発動させてMPが減るのを避けたいからだ。
俺は、この端末は何ができるのか確認するための文章を考えた。
俺が思っているだけで、実際にはできないということもあるかもしれない。本番でそうならないため、確認をしておこうと思った。
その確認したいというのは、「本当に瞬間移動ができるのか?」だ。もし、瞬間移動できないということが後で気づくことになるよりも、今の段階で知っておいた方が良いと思ったからだ。
そこで、俺は狭い範囲内でそれを実行することにした。別に遠くに何があるかわからないし、行った先でトラブルになっても嫌だからだ。それより、目に見える範囲でやった方がここにも戻れるからだ。
それにどこかに移動するのはかなり複雑な文章になりそうだったからやめた。
そこで俺は、真上に瞬間移動することにした。俺がジャンプしてないのに浮かべは、瞬間移動したことになると思ったからだ。
俺は早速、「俺を真上に地面から1mの位置に瞬間移動」と入力し、発動のボタンを押した。
すると、俺は急に足場がなくなったことに対応できず、うまく着地することができなかった。俺はそのまま地面に倒れてしまった。それも、急に足場がなくなったことに驚き、体勢を維持できなかったからだ。
しかし、どこか怪我をしたところがなくて良かった。まあ、倒れた所為で体のいたるところが少し痛むが、それ以外は、特に問題はなかった。
でもこれにより、瞬間移動ができることがわかり、レベルも上がった。同時に2つの良いことがあり、俺も気分が良い。
俺は、スマホの画面を見た。一応、レベルが上がっているか確認するためだ。スマホの画面にはちゃんとこう表示されていた。
『3回文章魔法を使用したため、レベルが上がりました。レベルアップに伴い、文字数制限が30文字に増えました。また、MPの上限が300に増えました。さらに、MPの回復速度が10秒毎に3回復になりました』
よし!ちゃんとレベルは上がっているみたいだな。
そうわかると俺は安心した。これで上がっていなかったら、またキレていただろうし、「このスマホは嫌がらせしかしないのか?!」と疑っていただろう。それがなくて、本当に良かった。
レベルが上がったことだから、今度こそ容器を創り、水を飲む。
そう決意して、俺は、「2Lのコカ・コーラの容器を×印の真上、地面に接するように生成」と入力した。しかし、これでも難癖をつけられそうだ。なんか、「どういう向きで生成しますか?」とか、「どこを地面に接しますか?」とか、ありそうだ。
しかし、これで30文字であるから、これ以上文字数を増やすことはできない。それなら、40文字まで増やせば良いと思うかもしれないが、後6つ文章を考えるのは面倒だ。だから、なんとか、これで創られて欲しいところだ。
俺は、また理不尽な要求をされても良いように、精神を安定させ、目を瞑りながら発動のボタンを押した。
その状態のままでしばらく居たが、俺はおそるおそる目を開け、スマホの画面を見た。そこには、何も表示されてはいなかった。
俺はそのことを確認すると急いで地面、×印をつけたところを見た。そこには、紛れもなくコカ・コーラの2Lの容器があった。
容器が創られていたことが嬉しくて、俺はしばらくはしゃいでいた。
はしゃぐことに疲れた俺は、ようやく水が飲めるというところまで来た。そのことがわかると俺は早く水が飲みたくて、「目の前のコカ・コーラの容器に1.5Lの水を生成」と入力して、発動のボタンを押した。
すると、コーラの容器に本当に水が現れた。俺はそのことが嬉し過ぎて、何も考えずに生成された水を一気に半分程飲んだ。
約1日の間飲んでなかったために、水がすごく美味しく感じた。
次は食糧だ!と意気込んで文章を考え始めたが、どうしても30文字以内におさめることができなかった。形状や量、どこに生成するのかを入力するのは無理があった。
そのため俺は、食糧とはまったく関係のない今いるところの整備を兼ねたレベル上げをすることにした。つまり、文章魔法を使い今いる環境を良くしようということだ。
まずは、ここを広くするために俺は草を盛った場所に座り、「俺を中心に半径1.25mの雑草を根元から刈る」「俺を中心に半径1.5mの雑草を根元から刈る」「俺を中心に半径1.75mの雑草を根元から刈る」「俺を中心に半径200cmの雑草を根元から刈る」と順番に入力し、1つずつ発動のボタンを押していった。
なんでこんな変なふうに入力するかだが、それは20文字より文字数を多くするためだ。そうしないとレベルアップに必要な回数にカウントされないからだ。4回なのは後4回でレベルが上がるからだ。
全ての文章は失敗することなく発動した。全てが発動し終わると、スマホの画面に新たに文が表示されていた。
『6回文章魔法を使用したため、レベルが上がりました。レベルアップに伴い、文字数制限が40文字に増えました。また、MPの上限が400に増えました。さらに、MPの回復速度が10秒毎に4回復になりました』
本当に少しでも文章が違えば、レベルが上がるんだな。
文字数の制限が40文字まで増えたので、俺は新たに文章を考え始めた。次のレベルアップまでは31文字以上の文章を10回程発動させないといけない。そのことも踏まえた上で考えないといけない。
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