第4話 食事と寝床
俺は文章をいろいろ考えた。
「自宅に瞬間移動」みたいなことができるなら、もしかして、逆に自宅から何か取り寄せられるのではないか?と考えた。もしくは、日本にある便利な物とかだ。
現状困っているのは、食糧や水だ。あたりを見回してしも、草木しか目に入らないからだ。それに生物の気配もしない。最悪、食糧はこの辺りの葉っぱでも食べればなんとかなると思う。でも、そんなことにはなりたくない。それに水に関してはそうも言ってられない。
そんなことで、なら取り寄せて、出してしまえば良いという考えになったわけだ。
俺は、自宅に災害時の非常用として買ってあったはずの水を取り寄せようと考えた。
文章としては「自宅の水を瞬間移動」で良いはずだ。
文章を入力して、発動のボタンを押した。
しかし、水は現れなかった。
俺は、スマホの画面を見た。そこには文章が書からていた。
『水を特定できなかったこと、どこに瞬間移動させるかわからなかったため、発動に失敗しました』
「水を特定ってなんだよ!特定するようなことなんてないだろ!」
場所に関しては、まあ、納得はしてないが、わからんでもない。でも、水の特定は意味がわからなかった。
そのことに少しイラっときたが、召喚できないことはないと知れたから良いだろう。それから俺は、水の特定をしなくて良いよう、こんな風に入力した。
『所持品を目の前に召喚』
瞬間移動と入力するには文字数が足りなかったため、召喚に変更はした。
そして、発動のボタンを押した。
しかし、目の前には何も現れなかった。
また、俺は画面を見てみた。画面にはまた文章が出ていた。
『所持品の範囲を指定してなかったため、発動に失敗しました』
「うがぁ!意味がわからん!」
俺は画面をタップし、閉じようとしたら、また文章が出てきた。
『日本から物を転移させたりするにはMPが足りません。MPが2000を超えないと、日本からの転移はできません』
「は?」
俺は、頭がフリーズしてしまった。
つまり、現状では日本には帰れないってことか。それにLv20を超える必要があるのか。
俺はLv20になるために必要な発動回数を計算しようとしてやめた。Lv10になるまで計算したが、約200回程必要になるとわかったからだ。そう思ったら、考えるのが嫌になった。Lv15を超える頃にはレベルを1つ上げるのに100回を超えてくるとわかったからだ。
まあ、単純に見積もっても1000回は超えてくるはずだ。これは、あくまでも計算をせずに出した予想だ。合っているかはわからない。
でも逆に考えれば、1000回使えば、日本に帰れるかもしれないし、日本から物を持ち込むこともできるということだ。
でも今はそんな先のことを考えるよりもまず、1回文章魔法を発動させないといけないということに気づき、また文章を考え始めた。
「うーん、ほんとどうすればいいんだ?」
俺は、悩んでいた。物を取り寄せたりするにも多くの情報が必要みたいで、文字数が足りないということがわかった。
既存の魔法も使えない、オリジナルも文字数が足りず使えない。そうなると、あと何が残っているのかわからなかった。
考えているだけじゃダメだと思い、考えついたことを端から、入力し始めた。
まずは、さっきの続きで食糧を手に入れるために「ご飯が目の前に出現」と入力し、発動のボタンを押した。しかし、発動することはなく、代わりにこんな文が画面に出てきた。
『ご飯とは、食事のことですか?それともお米のことですか?』
と、疑問形で返されてしまった。
そこも入力しなければならないのか、と嫌になりなった。でも選択肢に米があることから、今の段階でも米は召喚できると思われた。そのため俺は、「米が目の前に出現」と入力し、発動のボタンを押した。食事にしないのは、何となく、発動できるとは思わかったからだ。
さっきと同様に発動したようには見えなかった。そのため、スマホの画面を確認してみると、また文が出ていた。
『お米の量を指定してください』
俺は、怒りたい気持ちをこらえ、量を指定して「米1合が目の前に出現」と入力した。
これでできるだろうと思い、発動のボタンを押した。しかし、またしても発動したようには見えず、画面を確認した。
そこには、また違う文が出ていた。
『お米の品種を指定してください』
「ふざけんな!そんなまわりくどいことをしないで1回でまとめろよ!」
希望を持たせから、突き落とすとかほんとたちが悪い。1回でまとめてくれれば、入力しないで済んだのに。
考えるのをやめたくなったが、やめたところで何も進まないから、俺は不機嫌になりながらも、俺はまた文章を考えた。
しかし、機嫌が悪い中考えたところで何か文章が浮かんでくることもなく、入力しては消してを繰り返していた。うまく文章ができないとイライラしてしまい、悪循環となっていた。
でも、イライラしていては進まないと気づき、一旦落ち着こうとした。それにイライラしていては、正しい判断もできなくなってしまう。そのため、落ち着こうとしたが、なかなかイライラは治まらなかった。治まったとしても、文章を書き始めるとまたイライラしてきてしまう。
そんな悪循環をしばらく続けて、わかったのだが、いちいち気にしていてはキリがないと気づいたのだ。もう、このスマホは酷い物と思い、気にしないことにした。
気にしないようにしてからは進むが、一向に文章魔法が発動することはなかった。
俺は、食糧を手に入るために野菜や肉など何でもいいから召喚しようとしたが、入力した文章は全て、発動することはなかった。
そうして、さまざまな文章を入力して、発動のボタンを押していたら、また違う文が出てきた。
『MPが足りないため、魔法を発動することはできません』
「ああ、そういえば、MPなんてものもあったなぁ」
俺は、そんなことを思っていた。しかし、怒ったすることはなかった。こんなことをいちいち気にしていたら体力をもっていかれていまうからだ。
でも、これで少しの間、文章を入力することができなくなってしまった。でもこれのおかげで少し、落ち着くことができたから、その点では良かった。
ずっと、集中していたため、なんだか疲れてしまった。それにずっと座っていたので、体を伸ばす意味も込めて、立ち上がり体をほぐした。
立ち上がった時に気づいたのだが、少し暗くなってきていた。そのため俺は、一旦文章を考えることはやめて、寝床を確保することにした。
といっても寝床とあるようなところなんて、木に上くらいしかない。そのため、俺は近くの木のところまでの道を確保するために、草を踏み倒して進んだ。今から木に登っても意味はないが、登っておこうと思う。やることも特にないからね。
俺は、木に掴まり登り始めた。
が、登ろうと体を持ち上げようとしたが、持ち上げることはできなかった。
知ってはいたが、やっぱり登ることはできなかった。
別に太っているとか、筋肉がないっていうことはない。ただ登り方がわからないだけだ。それと、懸垂が1回もできないのだ。
体型は、170センチの60キロだ。痩せているとは思わないが、太ってもいないはずだ。それに、30キロ程度の物なら運ぶのも苦労はしないし、腕立て伏せも30回くらいなら余裕でできる。それなのに懸垂は全くできない。
それに今の服装が学生服で、動き辛いというのもあるし、靴はサンダルだ。そんな状態で登るっていうのが間違っているのだ。
だから、俺がひ弱なデブってことは断じてないのだ。
それから俺は再び登ろうとし始めた。しかし、どんなに力を入れても、上に登っていくことはできなかった。
体を持ち上げようと腕に力を入れても、持ち上が方がわからず体は上がらないし、足を使い、体を押し上げようとしても、サンダルが滑ってしまい、登ることはできなかった。
俺は、そうそうに登れないと判断すると、さっきの場所まで戻り、腰を下ろした。動物もいないことだし、地面で寝ることにした。しかし、寝るにはまだ早かったので、また文章を考え始めた。今度はMPの残りも考えながら、やっていこうと思った。
それから、食糧を求めて、いろんな文章を入力したが、寝る時までに、発動したものはなかった。
翌朝、俺は寝不足になっていた。昨夜は、本当に襲われない不安で寝ることができなかった。それと、お腹が空いてしまい、ずっと食糧のことしか考えられず、夜通し文章を考えていた。
しかし、進展はなく、今も文章を考え続けている。片っ端から食材の名前を入力していっているが、文字数が足りず、発動することができていなかった。
しかも、食材を召喚しようとすると大きさとか、品種とか、産地とかいろいろ聞かれ、文字数が足りないのだ。それと、なんか召喚しようとすると、地球から取り寄せるみたいで、MPの関係上できないということがさっきわかったところだ。本当は、最終手段として加工品を召喚しようとしたのだとしたら、MPが足りないと出たことがきっかけでわかった。つまり、俺が今までやってきていたことかは無駄だったかもしれないということだ。
それでも昨日の昼から何も食べられていないし、水も飲めていないから、早く何かを口の中に入れたいのだが、全然文章ができない。
それと、昨夜から寝てないから、ちょっと頭が回ってない。とりあえず、何か食べれる物でも手に入れないといけない。
そして、俺は考えてはいけないことを考えてしまった。
「ん?待てよ、もしかしたら、こっちにある物なら取り寄せられる?」
今まで、食糧のことに気を取られていて、家畜や野菜など、危険の少ないのを出そうとしていた。でもモンスターなら、召喚することができるのではないか?と思った。それに、モンスターもうまいと、聞いたことがある。
俺は覚悟を決め、「オークを召喚」と入力した。なぜ、オークなのかは、単純に豚のモンスターだからだ。それなら食えると考えたわけだ。
でも結局、俺は、発動のボタンを押すことはできなかった。召喚して、もし襲われたらと思うと押すことができなかった。俺は、文章を消して、文章を考え直した。
そして、俺は文章を考えていくうち、あることに気づいた。
「もしかして、召喚はできないが、生成ならできる?」
もしかしたら、物質を創り出すことならできるのでは?と考えたのだ。魔法っていう、ふざけたことができるのだから、それくらいできても良いと思ったわけですよ。
俺は、早速水を創り出すことにした。もう喉が乾いて仕方なかったのだ。
ということで、「水1Lを目の前に生成」と入力した。これなら、文字数制限に引っかかることもなく、必要事項も全部入っているはずだ。そう思い、俺は発動のボタンを押した。
俺は、テンションを上げながら、待っていたが、いつまで経っても水が現れることはなかった。そのため、俺は、スマホの画面を確認した。そこにこう出ていた。
『容器がないと、液体は生成できません』
ほう、なるほど、そうくるか。
でも、今の俺は今までとは違う!そんなことでキレたりなんかしない!
俺は、気をとり直して、容器を生成することにした。「1Lの容器を生成」と入力し、発動のボタンを押した。
しかし、容器が生成されることはなく、代わりにこんな文章が出てきた。
『容器の形状と容器の材料を詳しく入力してください』
「ふざけんな!」
さすがにこれには、俺もキレるしかなかった。容器を創る段階で、すでに文字数が足りないとか、ふざけているにも程がある。これでは、液体が生成できないではないか。
俺は、再び、文章を考え始めた。
でも、このことが衝撃的過ぎて、この後、しばらくはまともに考えることができなかった。
しばらくして、だいぶ落ち着いてきた時、俺は、ふと思ったことがあった。
「なんで、俺、食糧に拘ってんだ?」
そうなのだ。別に食糧に拘る必要はない。何か適当に文章魔法を成立させて、レベルを上げ、文字数制限を解放すれば、それだけで、かなり楽になったはずなのだ。
なんか本当に自分がバカに思えてきた。
といっても、何か文章ができているというわけではないんだけどね。
食糧に拘らず、俺はなんでもいいから、発動できそうな文章を考えていたが、全く浮かんでこなかった。というか、選択肢が多過ぎて絞れないというのが現状だ。1つのことでできないとすぐに作る文章を変えているのが原因だ。でも、絶対に文章を作れないという場合もある。
例えば、雑草を刈り取るとか、穴を掘るとか、武器を作るとかを考えたのだが、10文字以内に収まらなかった。いろいろ足りない言葉を付け足したりして最終的にできた文章は、「俺を中心に半径1mの雑草を刈り取る」とか、「×印を中心に縦横深さ1mの穴を掘る」とか、いろんな工夫をして作ったが、10文字に収まることはなかった。武器に関しては、形状とか材料とかまで入力しないといけなかったから、文章を作ることをやめた。
そんなことで、別のことで考え始めたが、手軽にできるようなことはなかった。召喚するとかだと文章が長くなるし、指定する項目が多いから、俺の近くのものでできることじゃないと10文字に収まらないことがわかったからだ。
ということで、今、俺に必要なことを考えた。まずは、食糧や水、それと安全な場所、武器といった攻撃ができる手段がとりあえず必要なことかと思われる。
「あ、そういえば、浄化を使わないといけないんだっけ?」
ここに来る前、天の声さんがそんなことを言っていた気がする。ということは、浄化しなければならないってことか。じゃあ、それについても考えてみますか。
俺は、割と重要なことを軽く流していた。
「うーん、浄化ってことは、俺って穢れてるってことか?それとも汚染されているってことか?」
そういった詳しいことはわからなかったが、とりあえず、文章を作ってみることにした。
まずは、「穢れを浄化」にするか「汚染を浄化」にするかだが、そこまで気にすることではないから細かいところをまずは決めた。対象は俺だから、「俺の穢れを浄化」か?でもなんか穢れは違う気がする。ってことは「俺の汚染を浄化」か?
とりあえず、「俺の汚染を浄化」で入力してみることにした。それで、発動のボタンを押してみたが、やはり発動はせずに、文が出てきた。
『汚染の種類を指定してください』
と出てきたので、もういろいろ考えるのが嫌になってきていたから俺は、「俺の汚染全てを浄化」とテキトーに入力して、発動のボタンを押した。
俺はどうせ発動しないだろうと思い、スマホの画面をずっと見ていた。するとやはり文が出てきた。
『1回文章魔法を使用したため、レベルが上がりました。レベルアップに伴い、文字数制限が20文字に増えました。また、MPの上限が200に増えました。さらに、MPの回復速度が10秒毎に2回復になりました』
「え?」
俺は、予想外のことに変な声が出てしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます