掌編小説「チャリティー」
ナガス
チャリティー
会社の上司が、話した。
「昔、僕が副店長をしていたお店があって、二十四時間テレビに共催して募金活動してたんだよね。その時に八千円を払っていって、名前も名乗らないで去って行った人が居てね。僕は思わず泣いてしまったよ」
そう涙ながらに話していた。正直、気持ち悪かった。
ふむ。この人は、自分で八千円払った訳じゃないんだよね。
じゃあ、なんでそんな話をする? 私はたまらず、つっかかった。
「私にも、それをしろって言ってるんですか?」
「いや、そうじゃなくてね、そういう人も居るんだって言う話」
「そんな話、気分悪いだけですよ。私の日給よりも高い値段の寄付をした人の話なんて聞かされて、どう思えばいいんですか?」
その上司は言葉を失った。
いいか、私だって毎日、ピィピィキュウキュウだ。
明日の飯に困った時だってある。死のうと思った過去がある。
その時お前は、他人は、家族は、何をしてくれた?
「言わなかったから知らなかった」というのは言い訳だろ?
目の前に居る私を無視して、ずぅっと昔のチャリティーの英雄を称えてる。
バッカじゃねぇの? お前は何もしていないではないか。
私は最悪、目に見える人は助けてる。興味を持った人にはトコトン優しい。
しかしお前は、部下に全く興味無し。
はは。笑ってしまう。
テレビで報道されたから、苦しんでいる人が居るって知ったんだろ?
だけど、知らないだろ。苦しんでいる人はテレビで放送されているよりもっといっぱい居て、助けを求めている人はテレビで放送されている数の何倍も居るって事。
気付かないんだろうなぁ。目の前の事に怒り、感謝し、他を気にもしない貴方は。
それが大半だから、世界は変わらない。
大災害があったこの先も、変わらない。
賭けてもいいね。人は人を、助けない。
掌編小説「チャリティー」 ナガス @nagasu18
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