第714話 天狐がくるで九尾なのじゃ
明智のみっちゃんが主役と聞いて久しぶりに見る気になった大河。
いやはや真田〇からもうかれこれ四年も経ったかと思うと時代の流れってのは早いもんだね残酷だよね。それよりなにより明智のみっちゃんは気になるよね。
いろいろな作品で、本能寺の変については語られているが、果たして今作では彼はどのようにしてそれに至った風に描かれるのか。まだ始まったばかりだというのに、クライマックスが今から気になる作品である。
とはいえ――。
「戦国モノにしては今一つこうギトギト感が足らず物足りねえな」
「のじゃぁ。前の戦国モノが歴史的な傑作だっただけに、それを言ったらかわいそうなのじゃ。アレはあきらかに大河の中でも傑出しているのじゃ」
「そうなんだけどな。まぁ、まだ序盤も序盤だしな」
みっちゃんは爺さんになってからが本番みたいなところがあるから。
そう自分に言い聞かせて視聴する。
まぁ、これからが見どころということだろう。
はてさて。
それはさておき。
「で、人の歴史を横目で見て来た九尾さん的にはどうなのよ?」
「のじゃ? どうなのよとは?」
「みっちーの裏切りの理由。いろいろあるけれどさ、俺はやっぱり怨恨説が有力なんじゃないかなと思うのよ。ほら、信長って結構きついところがあるから」
「のじゃー、それについてはなんともじゃのー。古今東西を紐解いても、裏切りというのは別段理由なく行われるものじゃからのう」
「えーけどー、えーけどー、加代さんならなんかこう確信めいたのしっているんじゃないのー。安土も桃山も生きて来た、歴史の生き字引的オキツネでしょー?」
「
歴史の真実に一番近い所に居るはずなのに、肝心な所にいないのはやはりポンコツオキツネ。ここで彼女が、実は光秀にはほにゃららじゃったのじゃよーと言えば、MMRが飛んできてなんだってーとネタになるというのに。
本当に残念な生き方をしている狐である。
しかしまぁ、その一方でその言葉に重みがあると言えばある。
確かに裏切りなんてものは、特に理由もなく行われるものだ。
今どきの人間だって理由もなく会社を休んだり、辞めたり、時には内部情報を手土産に他の会社に移籍したりする時代だものな。
けれどもそこに何か強烈な理由があるかと言われれば、なんとなーくだったりするから怖いもんである。
それを見越して会社側も厳しい従業員規則なんかで縛る訳だが。
結局それがかえって従業員の心を会社から離して――。
「結局光秀も、そういう所が嫌になったのかもしれないなぁ」
「のじゃ、現代社会的に考えてみても、組織で働くというのは辛いものがあるのじゃ。それよりは、自分で独立起業して――とか考えるのは仕方ないのじゃ」
「けど、そういうオチだったらオチだったで、それはそれでなんかしょぼいというかなんというか」
「歴史上の偉人とはいえ人間は人間じゃぞ」
加代さんが言うと言葉が重い。
確かに、みっちゃんは三日天下の教科書に載っている偉い人だけれど、俺たちと同じ人間には違いない。当然のように辛いことはあっただろうし、それなりに自分の人生に思う所はあったのだろう。
それよりなにより、面倒くせえと思うこともあったろう。
急に裏切りたくなったのかもしれないなぁ。
それまえでかいがいしく尽くした織田家に返り忠してまで、なんかちょっと軽く裏切ってみたくなったのかもしれないなぁ。
果たして大河がどういう決着に落ち着くのかはわからない。
平和な国を造るために、信長を廃する必要があったと、そういうオチになるのかもしれない。けれども、一個人としての明智光秀というものをよく見て、俺たちは歴史というものと付き合っていかないといけないのかもしれない。
ふと、そんなことを思うのだった。
光秀だって、人間なのだ。
「裏切りたくなることだってあるさ」
「魔が差すことだってあるのじゃ」
けどまぁ、それにしたって味方全員を騙して進軍、信長を奇襲っていうのは、ちょっと強烈っちゃ強烈ですけどね。
裏切りのスケールがでかすぎるよみっちゃん。
そこはホント、マジで名将だなって思いますよ、いやほんとマジで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます