第701話 いつ連載を再開するのかで九尾なのじゃ

「ハン〇ー×ハンターっていつになったら連載再開するんやろな、桜やん」


「……なんでいきなりそんな話を俺に振るんだ、ダイコン」


 IT戦略室のデスク。

 ぽちぽちぽちとやるきねーコーディングをこなしていた俺にいきなり後ろから話しかけてきた会社の社長は、またどうしようもなくしょーもないことを聞いてきたのだった。


 お前これが社長じゃなかったら、俺はお前をぶっ飛ばしている所だぞ。


 ハン〇ー×ハンターがいつになったら連載再開するかだって。

 そんなの、夜も深まった深夜一時に聞くような話じゃないだろう。


 お前、部下が必死に残業しているのに、そんなしょーもないことを聞くな。

 深夜テンションか。


 あぁ、深夜テンションね。

 なんか納得した。


「……たぶん、冨〇先生がゲームに飽きたらじゃないか?」


「せやろなァ。今頃、何に嵌ってるんやろか」


「3ヘルのアレじゃねえ?」


「スマホゲームに手を出し始めたらもう終わりやんか!! それに飽きても次のゲームに走って、絶対に連載再開せえへんで、やだーっ!!」


 暗黒大陸編の続きが気になるねんといやいやするダイコン。

 どうやら、彼はよっぽどハン〇ー×ハンターが好きなようだ。


 その気持ちは分からなくもない。

 俺もいろんな作品の第二部を心待ちにしている人間だからな。


 そう――。


「俺も、いつスラムダ〇クの第二部が始まるのか楽しみにしているからな」


「いや、スラムダ〇クの第二部は絶対にはじまらへんやろ」


「月〇2も楽しみにしているからな」


「月〇もFG〇で手いっぱいで絶対に始まらへん。してええところリメイクやで」


 なんだとこの野郎。


 お前、俺がそれだけを心の支えにして、この地獄のような毎日を生きているというのに、そんなシンプルに否定することはないじゃないか。

 夢見たっていいじゃないか、なんだよ。

 ジョ〇ョだって何部もやってるんだ。

 FG〇だって二部はじまったし、ワンチャンあるやん。


 睨み合う俺とダイコン。


 すわ、一触即発。

 辞表を出すのが先か、クビを言い出すのか先かという、剣呑な空気がただようなか、口を挟んだのは一緒に残ってくれているオキツネ。


「二人とも、くだらないことを気にしているのじゃ」


「んだよ加代さん、くだらねえとはずいぶんだな」


「せやで!! 女の加代やんにはワイら男の子の気持ちが分からへんねんや!! 連載漫画の続きを待ち続ける、男の子の気持ちなんて――」


「ガラスの〇面」


「「すみませんでした」」


 あったわ。


 女子にも長く待たされている、続きが描かれない物語があったわ。

 それも元祖と言っていいほどに鉄板の奴だったわ。なんだったらもういっそ、その手の作品の代表格。ボスと言って差し支えのない作品だったわ。


 そうね、あれもなかなか続きが書かれないわね。


 恐ろしい漫画――。


「あとは福〇漫画とか」


「いや、福〇先生はなんだかんだで連載続けているからえらいじゃんかよ。引き延ばしはするけれど、ちゃんと話は続けているからすごいじゃんかよ」


「……まぁ、確かに一理あるな」


「のじゃぁ、同じ理論だと〇NE PIECEもその分類に入るのう」


「もうそろそろ畳むんだろ。いや、あれだけの看板作品を、無駄に引き延ばさずにすっぱり終わらせるって、すごい英断だと思うぜ」


「どこぞの雑誌なんぞ2とか幕末編とかリメイク頻発しとるのにな」


 わっはっはっはと笑い合う。


 深夜テンション。

 もうなんというか、仕事の疲れでしょうもないことでも言っていないとやっていない空気は、それで一区切り。


 もう十分現実逃避はしたでしょう。


 さ、仕事仕事という感じで、俺たちは再び無言でパソコンに向かい始めた。


 納期は明日の朝。

 こんなことをしている場合ではないのだ――。


「……終わる言うたらあれやけど、彼岸〇は」


「「もういいから、ちょっと仕事に集中させてフォックス!!」」


 漫画の連載は伸ばしていいけど、仕事の締め切りは伸ばしちゃいけないんだよ。

 責任感じて残ってくれているのは分かるけれど、小粋なトークとかいいから。


 というか、彼岸〇は面白いからずっとやってればいいんだよ。

 あと、キングダ〇も。


 青年誌の看板ってのはそういうもんでしょーよ。

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