第690話 カモンジョイナスコヨーテさんで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 次々と集まる加代ちゃんの古巣チーム『Beoulf』のメンバーたち。

 その一癖も二癖もある面子に、ちょっと気圧されつつも――というか気圧されるばかりの桜くんたちなのであった。


 どうして、彼女の知り合いは濃い奴らばかりなのか。


◇ ◇ ◇ ◇


「しっかしまぁ、見事に妖怪ばっかりだな加代さんのチーム」


「のじゃぁ。まぁのう。やはりデジタル時代とはいっても妖怪は妖怪。生活スタイルが似通っているメンバーが集まってくるのは必然というかなんというか」


「まぁ、ぶっちゃけ、世の中の人と時間の使い方が違っていたっていうか」


「妖怪が活躍できる時間帯はどうしても似通ってきますからぁ」


 丑三つ時ですか。

 その時間って、オンラインゲームの廃プレイヤーなら普通に居そうなきがしますけどね。


 こなちゃんとかもそのくらいの時間までゲームしてた気がしますし。

 おすし。


 また懐かしいネタになりそうだなとか、そんなことを思って辟易する。

 すると何故だか死神のサティが、ひょいと人差し指を立てた。


「あ、けど。コヨーテは普通に人間だったよね」


「コヨーテか。まぁ、確かに、彼女は人間だったな」


「のじゃぁ。コヨーテは確かに違ったのう」


 えっ、えっ、なに、人間のメンバーもいたの、加代さんチーム。

 人間と妖怪の生きる時間がなんとかとか言っておいて、なんだその裏切り。


 けどなんか加代さんっぽいぞ。

 出た、いつものへっぽこストーリーっぷり。


 名前からしてなんだかスピリチュアルな気がしないでもないコヨーテさん。

 それでなくても、座敷童、死神、そして九尾と来たなら、次は狗神かなとか思っていたけれど、そんな感じじゃなさそうね。


 ははっと安心したのか変な笑いが漏れたその時。


「ワォ!! リーダー!! ロングタイムノーシー!!」


 がばりとなにやら大きな影が加代さんに覆いかぶさった。


 巨大。それはあまりに巨大。

 加代さんの1.5倍はあろうかという身長に、ナイスバディにボンキュッボン。

 黒髪ロングにどこかエスニックな顔立ちに見事な褐色の肌。


 まるで砂漠に咲く大輪の華のような美しさを持った彼女は、俺の加代さんに犬コロのごとく頬ずりをした。


 そう――。


「のじゃぁ!! コヨーテ!! 相変わらず騒がしいのじゃ!!」


「んふー!! そんなことないデース!! コヨーテのステイツじゃこれくらいオールウェイズ当たり前!! ノーマルな挨拶ですネ!!」


「おぉ、コヨーテさん、なんだか立派になりましたね」


「はわわ。コヨーテちゃん、立派になって。昔はあんなに小さかったのに」


 現れたボンキュッボンのお姉さん。

 明らかに日本人ではない感じの彼女は、メキシコに吹く熱風のようなさわやかな笑顔を振りまいていた。とてもじめじめとした日本妖怪とは相いれないその感じに、きょとんと俺とダイコンは言葉を失くす。


 そんな前で――。


「ハァイ!! あなたがリーダーのステディ、ブロッサムくんね? 後ろのサティに負けじと劣らじなナイスガイが、スポンサーのMrブリティッシュ?」


「……あ、はい、ブロッサムこと桜です」


「……Mrブリティッシュことダイコンタロウです」


「よろしくね!! ミーはサポーターのコヨーテ!! リーダーのお世話はリーブ・イット・トゥー・ミー!! パーフェクトにプレイをサポートしてみせるヨ!!」


 片方の手で俺たち二人の手を同時に握り、振り回す元気いっぱいの南米娘。

 運動不足、デスクワーカーの俺たちには結構つらいアクションだ。


 だが、その腕を振るう度に、胸についている大きなものがたゆんたゆんと揺れるのだからたまらない。


 うぅむ――。


「コヨーテさん、もし、よろしければ、これからどうです。俺と二人で食事でも」


しゃくらァ!!」


「ノー!! 浮気は駄目ですヨ、ブロッサムさん!!」


 思わず紳士モードに入った俺を、加代がすぱりとスリッパではたく。


 とほほ。

 しかしこんな知り合いがいるのなら、紹介して――。


「……しゃくら? 二度目は流石に許さないのじゃよ?」


「オーケィ、加代さん、大丈夫。俺、ジャパニーズ、浮気しない」


 インディアン嘘つかない。

 ジェロニモのノリ。


 俺はこちらを九尾らしい邪悪な表情で睨む加代さんに笑顔で応えた。

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