第660話 ラグビーで九尾なのじゃ
「しかし、今更だけれどラグビーワールドカップすごい盛り上がりだったな」
「いまさらなのじゃぁ。まぁ、
なんの言い訳。
今はラグビーの話じゃないのさ。
年も変わるかという頃に、こんな話を出すのはどうかというものだが、今年を振り返るという意味でもやはりこいつは外せない。
ラグビーワールドカップ。
いやはやなんとも、日本列島大歓喜となったその大会について、2019年を語るにあたって外すことはできないだろう。
「まさか準決勝まで駒を進めるとは思わなかったのじゃ。開催国の優利というのもあるじゃろうが、それでもここまで進めるかというもの」
「体格差を覆してよく頑張ったって感じだよなぁ」
とはいえ。
ルール的にいろいろと思う所はある。
外国人――国籍的には日本人だが、大会出場のために国籍を取得した選手たち――が活躍して、果たしてそれで日本が勝ったと言えるのか。
そういう疑念が湧かない訳ではない。
いやさ、それこそ今はグローバルの時代。
国籍や人種を問わずに、世界を相手に仕事をするのがこのご時世だ。
選手たちのグローバル化も仕方のないことなのかもしれない。いいじゃないか、それで結果として日本が強くなるのならば。そもそも、サッカーでも野球でも、本場という所にはいろんな人種の者たちが流れ込んでいる。
これもまぁ、言ってしまえばそれだけのこと。
「まぁ、相撲のワールドカップとかし出したら、明らかにモンゴルとハワイの力士が受賞台を総なめするだろうし。仕方ないわな」
「のじゃのじゃ。国籍とか人種とか、そういうのを乗り越えるからこそ、スポーツというのは尊いのじゃ。桜よ、そのように了見の狭いことではいかんのじゃ」
「やから、仕方ないわなって言ってるじゃんかよ」
世の流れには逆らえませんわ。
まぁ、実際これだけ多くの人が、それで楽しめているし、それで盛り上がっているし、経済効果もでているのだからいいことではないか。
俺もなんだかんだで準決勝は見ていたし。
とにかくまぁなんだ、世の中は変わるもんだ。
いろんな意味で。俺たちはそんな風に千変万化の時代に生きているのだなと、ちょとしみじみしたことを思ってしまった。
「……そう言えば、人種はともかくとして、キツネはワールドカップへの参加資格とかあるのかフォックス?」
「のじゃ、その言葉尻で疑問符をつけるのはやめてくれなのじゃ」
「いや、純粋に疑問に思って」
やれやれと首を振る加代ちゃん。
彼女はひょいとスマホを取り出すと――そこからラグビーの某国選手一覧を取り出すと、うぅんと眺めてそれから一人の画像を指さした。
いや、一人ではない。
二人、三人――五、十、十五。
次々と指をさしていく。
「……まさか」
「のじゃ。まぁ、キツネは化かし合いは得意じゃからのう。真っ向からぶつかり合うような戦い方は苦手じゃが相手を躱して隙を突くようなプレイは得意なのじゃ」
「まじか」
「まじなのじゃー」
割とトリッキーなプレイで聞かれた選手たち。
それらを指さして自慢げに言う加代さん。
その自慢の元は彼らが彼女と同族だからか。
それとも、彼らの戦績によるものか。
なんにしても。
「日本代表選手の外国人化よりも、各国選手のキツネ化の方が深刻だわこれは」
「のじゃのじゃ。深刻とは失敬な、ぐろーばりゅ化と言って欲しいのじゃ」
全世界が狐に騙される日も近いぞフォックス。
そして、この調子だと、加代ちゃんオリンピック編とか始まるんじゃないのかフォックス。
やめろよ、そんな超人オリンピッ〇編みたいな長編になるじゃないか。
化け狐は加代さんだけで十分フォックス。
「ちなみに来年のオリンピックに向け、アメリカの友達が遊びに来るという話が」
「ききとうない!! ききとうないでござる!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます