第654話 ハードモード過ぎるだろうで九尾なのじゃ
はい。
という訳でね。
「ハードモード過ぎるだろう!! 仕事の内容が!! 前のアダルト特化型お仕事から更にコアな所に的を絞ってき過ぎだろう!! いくらなんでも!! あんまりだ!!」
いつも心にADDC。
直流と交流のどちらが優れているか。
エジソン君とテスラ君の問答の如く、不毛な問答の果てに苦悶の表情を浮かべてあんまりだと叫ぶ。
そんなメキシコに吹く熱風のように生きたい。
何を言っているかわからねーって。
分かってたまるかこんなもん。
魔法少女、英霊、退魔〇。
三連荘で男がやっちゃいけないキャラクターを漫画のようにやらされれば、キャラクターもブレイクするってもんだ。
そう。
「なんでこんな普通に生きてたら女の子だって経験しないような職業をやらなくちゃいけねえんだよ!! もっとこう、ハードはハードでも普通なハードってもんがあるだろ!!」
「……いや、桜やん。普通なハードって、何を言うとんねん」
「のじゃ。口ほどにもない。最初の威勢はどこにいったのか」
「女装の一つも満足にこなせないとは、所詮桜どのも普通の人間ということか――偉そうに言っておいてこの体たらくとは少々がっかりだな」
「おう、シュラトや。そう言うなら、お前も女装して女騎士になってクッコロでもしてこいや。やりもせんのにいきっとんなやボケこら」
マウント取りに来た元黒騎士をメンチ切って黙らせる。
俺はベストを尽くした。
ベストを尽くした結果がこれである。
なので、その結果についてとやかく言われるつもりはないし、言わせるつもりはない。
不本意な仕事をやり切った男として、そこのところは俺も退かない所存。
それはそれとして。
ひどすぎる。
「ハードというかマニアックだよこんなの。企画モノのそういう奴みたいな職業、普通にやってたらチョイスされないだろう。どうなってんのさ、俺の人生」
「いや、ワイが用意した訳やあらへんから」
「のじゃ。ライオンディレクターの所に、たまたまそういう仕事が立て込んでいただけじゃから。そこに文句を言われても」
「偶然が重なっただけではないか。なのに、何をそんな本気になっているんだ。まったく、女々しいぞ桜ど――」
あんとメンチを切って、復活したイキリ黒騎士を黙らせる。
こいつあ、一言だって今後喋らせちゃいけねぇ。いったい誰のせいで、俺がこんな目にあっているというのだ。
お前が変にごねたりするもんだから、俺がこうして身体を張る羽目になったんじゃないか。本当だったらお前が三役全部こなしていなくちゃいけないところだぞ。
そこんところ、ちゃんと理解しているのか。
まったく。
「とにかく、もっとこう普通の仕事で、ちょっとハードな感じのをやらないと、この暗黒騎士様にはなんも響かんってもんだろうよ。そもそも、ドラマの撮影というだけで、職業ですらない訳で」
「のじゃ、確かに。魔法少女も、英霊も、退魔〇も、お給料の出る仕事ではないからのう。どれも義務感から自発的にやって」
「いや、そういう問題じゃなくてね」
仕事を振る方が降る方なら、受ける方も受ける方だぜ。
まったく加代ちゃん、毎度毎度みょうちきりんな仕事ばかりライオンディレクターからもらいやがって。
仕事を選ばないのは美徳でもなんでもない。
もうちょっと、自分がどうなりたいのかっていうイメージを固めて働いていかないと、いつまでたっても宙ぶらりんなままだぞ。
とにかく。
「今週のこれはイレギュラーだ。なんていうか、想定外だ、お話にならないそれ以前の問題の奴だ。という訳で、こっからだから。俺の本気はここからだから」
「……まぁ、なんというか、一理はあるけど説得力に欠けるというか」
「のじゃぁ、完全に負け惜しみにしか聞こえないというか」
「駄目な奴は何をやっても……ヒィ!!」
だからもうだまらっしゃい。
男だったら誰がやっても上の三職は上手くやれないもんだっての。
なので、もうちょっと身近というかなんというか、やりよい所でリベンジ。
俺は決して仕事のできる人間ではない。
けれども、仕事ができない人間ではないというところを、一つ証明してやろうじゃないか。
そう。
「今回はたまたま環境が悪かった――だけなのじゃ!!」
加代ちゃんと同じ。
俺だって、ちゃんとした仕事にありついて、運さえ悪くなければもうちょっとなんていうか、マシに動けるはずなのだ。
きっと。
たぶん。
おそらく。
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