第655話 突然ですがここで加代ちゃんレポーターで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
性産業とエロゲの中でしかできないような特殊なお仕事ばかりに怒り心頭フォックスな桜くん。
いい加減にしろ。
まともな仕事をやらせてちょうだい。
キレる彼の姿に、やれやれこの程度の事で音をあげるとはと加代ちゃんもあきれかえるのであった。
「いや、そういう話じゃなかっただろフォックス!!」
なんにしても、今週も桜くんリベンジ。
まともな仕事をしてみせて、シュラトに有能アッピルするんじゃ――。
「のじゃぁ。もう既にタイトルで不穏な感じがするのじゃ」
はい。
もはや否定するまでもなく、今週もそういう感じです。
「どういう感じフォックス!?」
◇ ◇ ◇ ◇
やれやれ。画面映えする男というのは誰が見ても分かるものらしい。
一連のトンチキドラマへの出演。
及び、ジャッキーよろしくそのエンディングでのNGシーン集で公開された俺のキレッキレのツッコミ。そいつを見かけたライオンディレクターの知り合いが、俺に番組への出演依頼をかけてきた。
ふっ、加代さんに続いて俺まで芸能界デビューとは。
カリスマ性を持つ者はひかれあうということかな。まぁ、俺の方が駄女狐アイドル地獄変の彼女よりもテレビ映えすることは間違いないだろう。
人間だし。
名前もなんだかアイドルっぽいし。
「んふー、桜ちゃん、やっぱりメイクで化けるわね。イケると思った私の直感を褒めてあげたいわ」
「まぁ、化かされるのを近くでさんざん見せつけられてきましたからね。このくらいのことどうというものでも」
控室。
メイクを済ませた俺の部屋を訪れたのは、ライオンディレクターの知り合い。
もうほぼほぼゴリラ。
体つきから顔の造りまでゴリラゴリラしている上に、口調はオネエな感じのゴリラディレクターだった。組み伏せられたら、もう、どうすることもできない感じのむくつけきゴリラであった。
そう、大自然の掟を前にして反抗は不可能。
ジャングルでは強さこそが正義。
恐ろしいまでの圧をかけてくるアニマルディレクターだが、ただ、まぁ、女装されているとか、変なキャラを強要されるとかそういうことはない。
ごくごく普通な感じのディレクターさんであった。
正直、見た目と中身のギャップにほっとした自分がいるのは内緒だ。
「それより桜ちゃん。出演前に確認しておくけれど、うちの番組は基本トークバラエティよ。べしゃりができなくちゃお仕事にならない」
「……はい、分かっています」
「どんなに素材がよくっても、カメラの前でその実力を発揮できないようじゃ役者としては失格よん。桜ちゃん、覚悟はしてこの場に来ているんでしょうね」
「もちろんですよ。これから俺は、地方のテレビ番組各局でひっぱりだこ。どこに出してもそこそこに存在感を出しつつ、主役を食わないポジション――ひな壇芸人として立派にその役目を務めてみせますよ」
「その気迫は買ってあげるわ。せいぜいこの番組という女神の前髪をわしづかみにできるよう頑張ることね」
ふっと不敵に笑って去っていくゴリラプロデューサー。
最後に投げキッスをかましたのを華麗に躱すと、俺はさてととウォームアップを始めた。
場はトークバラエティ。
関西近縁の漫才師。
全国区のアイドル。
辛口コメンテーター。
いろいろ揃えてのゴシップトークだ。
俺にできることはなんだろうかと言われれば、ただひとつ。
本職の漫才師に勝るとも劣らないツッコミ。
そう、ボケボケアンポンタンだけれどキューティーお九尾さまと一緒に生活するうちに身に着けた、ボケに対する即応能力である。
剃刀のように切れる言葉のツッコミである。
狙うは――爆笑問〇の田中ポジション。
さぁ、今から俺の伝説が始まるのだ。
「桜さん、スタジオ入ってくださーい!!」
「分かりましたぁ!!」
アシスタントディレクターの呼び声に応えて俺は立ち上がる。
パイプ椅子から腰を上げて俺はスタジオへと向かう廊下と言う名の、未来へと続く道を歩み始めたのだった。
そう、この一歩から全ては始まる――。
◇ ◇ ◇ ◇
『速報!! 速報ですのじゃ!! 実はかねてより狸たぬきと言われていた、徳川総理が緊急記者会見!! 実は狸ではなくアライグマが化けていたということが判明したのじゃ!! 徳川総理は、アライグマの日本での扱いのひどさにむしゃくしゃしてやったと供述しており、まったく反省の気配はない模様!! この後も、記者会見の様子をたっぷりとお伝えしていくのじゃ!!』
「どうでもいいフォックス!!」
どうでもいい。
本当にどうでもいい。
そんなニュース速報により、俺の明るい未来は一瞬にして断たれた。
そら、緊急ニュース速報にはどんなバラエティも勝てないけれど――。
こんなしょーもなニュースで番組つぶれるとかぶっちゃけ思ってなかった。
フォーックス。
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