第653話 アクション退魔〇で九尾なのじゃ

 さて。

 もう、タイトルでお察しである。


 俺は退魔〇スーツを着てなぜか東京ドームの天井に立っていた。

 いや、なぜかも糞もありゃしない。


「……なんだよ、実写版退魔〇アサ〇って。しかも全年齢版って」


「仕方ないじゃないっすかサクラさん。優秀なコンテンツってのは、アダルトから次第に一般向けに寄せて行くもんなんですよ」


「そうかもしれないけれど。確かにそういうい流れはいくつも見て来たけど」


 けど、俺が退魔〇になる必要はないだろう。


 俺、男だよ。


 男がなんで退魔〇になる必要があるんだよ。

 しかも男用の退魔〇スーツなら分かるけれども、女用の退魔〇スーツじゃない。


 企画モノでもNGな絵面だし、地上波ならなおさらNGだよ。

 どこに需要があるんだよと思いつつ、俺は――ライオンディレクターひいきのカメラマンを睨みつけた。


 そう。

 また、臨時のテレビ枠がとれたんだそうな。


 そしてその監督をライオンディレクターが――若いもんに出番を回すのも上の人間の役目だと言って蹴った。アシスタントディレクターさんも、前のドラマの仕事で手いっぱいでとてもじゃないけど捌き切れないと断った。


 映像プロダクションでは手に余る事態となった。


 という訳で、まぁ、二時間番組だしちょっとくらい冒険してもいいかということになり、カメラマンくんに話が回ったのだという。


 ちなみに。


「実写版退魔〇の企画自体は君の提案って言うのはマジな訳?」


「マジですよ」


「のじゃぁ、なんでそんな企画出したのじゃ」


「だってLILIT〇は俺の青春だから――姫騎士アンジェリ〇とか大好きだから」


「行動力の化身かよ」


 気持ちは分からんでもないが。

 デジタル同人界隈が一番活気づいていた時代よね。

 退魔〇が出た頃は。


 姫騎士とかも一般に認知されはじめて。

 その一方で規制とかも厳しくなりはじめ――。


 やめよう。


 俺は別にそういうオタクじゃないのだ。

 そういうのとは別にアレだ、距離を置いてる人間だから、わからないのなのだ。

 そして、ちょっと加代さんがすごい形相でこっちを見てくるから自重しよう。そう、自重しておこう。


 大丈夫、男なら誰しも通る道。感度三千倍。四字熟語になるくらいに今では一般的なものなのだから、退魔〇は。うん。


「それにしたって、なんで男の俺をキャスティングしちゃうかなぁ!! もうちょっと、あるでしょう!! こう、せっかく退魔〇するならさぁ!!」


「仕方ないでしょう!! 脱いでもいいAV女優とか呼ぼうとするお金もなかったし!! そもそも、割と本格的にやると――地上波で流せなくなっちゃうし!!」


「退魔〇の時点で既に地上波で流すのに勇気がいることを自覚してくれ!!」


「それにほら」


 さくらと言ったら――。


 それ以上言おうとするカメラマンの口を俺は忍者らしく力強くそして音もない早業で止めた。


 うん。

 たしかに俺は退魔〇かもしれない。

 男だけれど退魔〇かもしれない。


 名前的に。


 けど、言わせてくれ。


「退魔〇じゃないさくらの方が多いってばよ!! さくら退魔〇じゃないもん!!」


 普通の忍のさくらちゃんだっているのだ。

 キャプターやファイターのさくらちゃんだっているのだ。

 だから、そんな理由で選ばないでフォックス。

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