第596話 異世界転移のキャラも九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
九尾、クビ、
この小説は、九尾がクビになるシニカルポップ天丼コメディ。
長編になってもその辺りの天丼の匙加減は変わらない。
そう、オチはいつだってぶれない――。
加代さんがクビになる最後へ一直線。
そう、この壮大なサーガのオチは、もはや始まった時から決まっていたのだった。
「異世界転移者としてポンコツ過ぎるでしょう、加代さん」
「異世界転移しても主人公を九尾になるのは残当やで、加代やん」
『さぁ、いつものオチをかましてもいいですよ、加代ちゃん』
「の、のじゃぁああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「のじゃぁ!! ちょっと待つのじゃ!! 確かに、
『一生懸命やっているのに、それはないのじゃぁって言いたいんですね、加代ちゃん。わかります、わかりますよ』
「加代さん。そこまで含めて、もはやテンプレだってことをお気づきになられていないようだな」
のじゃぁのじゃぁと何度も叫ぶ加代さん。
こうして狼狽える展開も幾月ぶりだろうか。
いやはや最後はやっぱりこういうオチになってくるのか。
異世界転移してからというもの順調以外の何物でもない。きっちりと仕事を務めあげ、しっかりと周りに必要とされ、何だよ加代ちゃん周りのレベルを下げれば、きっちりとお仕事できるやれる女狐じゃないですかやだーとなっていた。
しかし、しかしである。
『もうお気づきかと思いますが、異世界転移はそのチート能力でさくさく敵を倒していくか、逆に能力はないけれど独特の現代知識で攻略していくのが話の肝』
「なのに加代さん、完全にこっちの世界に順応していらっしゃるんだもの」
「まさかの敵さえ出てこないヌルゲー展開やったしなぁ。いやまぁ、最後に出て来たけれど、むしろ敵に味方する世界破滅させるENDやし」
「のじゃぁ、けれどそれは別に
だまらっしゃい。
そんな叫びと共に、虚空から出した手でペシリと加代さんをぶつ駄女神さま。
ぶったね二度もぶったと一度しかぶたれてないのにじっと天上の女神を見る加代。しかしながら、今回ばかりは仕方ないと俺も女神側に立った。
だってそうだろう。
「加代さん。つまりね、メタ的に今回の話を見なくてはいけないんだよ。延々だらだらとなんの緊張感もワクワク感もない、だらだら日常異世界モノなんて――」
『ドラマとしての体をなしていない』
「そりゃ、人気が出るとか出ないとかそれ以前の問題で、
「のじゃぁ!! そうかもしれないけれど!! けど、
『だまらっしゃい!!』
また女神がここで加代ちゃんをぺしりと叩く。
まぁなんだ、いろいろと向こうも察してくれているのだろう。
軽くたたいてくれているのが分かる。それが救いでもあり、なんというか、ぐだぐだでもある。
今度こそ本当に二度もぶったねというアムロ顔をする加代さん。
そんな彼女に険しい顔で――。
『ここで終わらせなくちゃ異世界転移編にオチはつかないわよ!! いいからそういうことにしときなさい!! でないと本当に、終わりのないのが終わり――黄金体験的に異世界転移生活が続いちゃうことになるのよ!!』
的確にメタなツッコミをいれるのであった。
そう、ここで終わらなければ、いつ終わるのか。
もしこの世界に神様――を更に超える作者がいるとして、息切れしているのは間違いない。たぶん、俺たちのようなどう考えても現代ドラマかラブコメでしか通用しないキャラクターを異世界にぶち込んだことを後悔している。
でなければ、こんな平坦な展開になるはずがないのだ。
いや、むしろ、こんな平坦な展開になることを見越して転移させたのだ。
加代さん――。
「この
「なっ、なんだってー(AA)」
ダイコンが合いの手を入れて驚いてくれた。
空気の読めるダイコンが居てくれてクライマックスばかりは助かる。
そして、話の展開もお約束も自分の役目も分からないでもない加代さんではない。
ぐぬぬと口を閉じながらも彼女は、ようやく――。
「……のじゃぁ。異世界転移のヒロインさえもクビになってしまったのじゃぁ」
この一連のとんちきアドベンチャーを締めくくる言葉を彼女は吐き出した。
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