第595話 ブチギレ駄女神さまで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


「長らく続いた、でていけあんたは九尾さん異世界転移編ですが――来週で最終回となります!!」


「「やっとかよフォックス!!」なのじゃ!!」


 一ヶ月の時をぶっ飛ばすヤベー女神のヤベー攻撃。

 華麗なるキングクリムゾ〇。


 異世界には介入しないんじゃなかったのかとツッコミを入れる桜たち。

 そんな主人公たちをよそに運命は残酷。長らく続いたこの一連の異世界編に終止符を打つべく、クライマックスが始まろうとしていた。


◇ ◇ ◇ ◇


『というか!! というかですよ!! なんなんやいわい、このグダグダ展開は!! 某ソシャゲのぐだぐだイベントだってもう少ししっかりとしたストーリーしてますよ!! 最後のオチはグダグダかもだけれど、そこまでに緩急つけて盛り上げてきますよ!! なのに、なんで女神に時をすっ飛ばさせてクライマックスさせるんですか!!』


「国内最大手のソシャゲと比較されても困るっての!!」


「のじゃぁ!! 豪華で実績のあるあかぬけたシナリオライターと、片田舎の勤めワナビでは執筆量や読書量が違うのじゃぁ!! そもそも、休日に一気呵成で書き上げている、その休日も本業の疲れが残っていて回復させつつという荒行じみた執筆状況なのによくやっているのじゃ!!」


 なんだそのメタくて痛くてそれでいてなんか悲壮感の漂う加代さんの切り返し。

 そんなん読む側からしたら関係ないだろ。面白いか面白くないかが全てだろう。

 いや、しかし――。


 実際、展開を面白くしろと言われても困る。だって俺たち、幸運値以外に転生特典を持たないパンピーなんだよ。そんな、異世界で幸運値だけで生きていくみたいな、今時転生譚――。


「……今思うと面白くなる余地いっぱいあったなぁ」


『設定だけなら美味しいとこどりじゃないですか!! もうやだぁ!! なんでそれでこんなキンク〇展開になっちゃうんですか!! いろんな異世界転移者の担当女神をしてきたけれど、アンタらブッチギリでダメ転移者だよ!!』


「いや、そもそも女神が駄女神なのがいけない。お前のような駄女神が担当についたから、面白い設定が活かせていないんだ」


「そうなのじゃ!! そうなのじゃ!!」


『うるさい!! 女神がダメでも面白くするのがアンタらの役目じゃろうがい!! だいたい駄女神なんて面白い異世界転移小説のギミックの最たるものでしょ!! なのに、なんでそれを上手く使うことができない!! ホワイ、アナザーワールドドリフター!!』


 うっさいボケ。

 そんな属性を上手く使える器用な俺たちだったら、とっくの昔に大人気ウェルカムようこそ九尾さんになっているよ。世話好きなんたら九尾さんになってアニメ化だってしているってもんだよ。


 そもそものじゃ喋りなのにロリじゃない所から察してフォックス。

 いろいろと属性のかけ違いを転移前からしているんだよ。そんな俺たちに、いったい異世界に転移して何を期待しているっていうんだ。


 というか――。


「出ていけあんたは九尾さんは、最終的に加代さんがお仕事クビになって、のじゃぁって言って終わる天丼小説やろがーい!! 異世界転移先でも、主人公不適格としてクビになるなら、それもまたテンプレやろがーい!!」


「のじゃぁ!! そうなのじゃ!! そうなのじゃ――って、え?」


 黙り込む駄女神と駄女狐。


 ふっと、笑った駄女神。

 硬直したままの駄女狐の肩を優しく叩くと、彼女はこれまでで一番いい笑顔で、どんな仕事もクビになるプロフェッショナルのこれまでの健闘を労った。


 そう――。


『よかったですね、ようやくオチが付きましたよ?』


「の、のじゃぁあああああ!!!!」


 ここに来て加代さんの本領発揮。

 お仕事クビになる九尾の面目躍如。

 もはやこの展開は――お約束といえばお約束。


 納得の結末オチへと昇華されたのだった。

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