第597話 異世界への鍵で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
どうしてこんなことになってしまったのか。
実力のなさ、仕事の疲れ、あるいは公募原稿を書かなくてはならない焦り。
なんかいろいろと要因について考え出すときりがない気がしないでもないが、とりあえず言えることはただ一つ。
異世界転移編、見切り発車で書き始めたのはやっぱり無謀だったかなぁ。
「のじゃぁ!! やっぱり
「加代さん、それでもお前、そこは察しろよ」
「せやで加代やん。このままやとワイら、ホンマに異世界で永遠に彷徨い続ける感じのオチになって、終わりのないのが終わりみたいなことになるで」
『キンク〇に黄金体〇は流石にパロディ盛り過ぎでしょ。せめてどちらかにしておかないと』
「そういう問題じゃないのじゃぁ!!」
のじゃーのじゃーのじゃーのじゃーとエコーをかけて叫ぶ加代さん。
いやほんと、いつもいつも都合の悪いところで貧乏くじを引かせちゃってごめんなさいね。二度もぶたせてごめんなさいね。
しかし、こうしないと話が終わりに向かわないのもまた事実。
ここは心を鬼にして――やっていこうと思います。
「割と最近、こういう余裕ない展開が多い気がするのじゃ!! ちょっと、もうちょっと創作に余裕をもって取り組むような、そういうのが大切だと思うのじゃ作」
はい、という訳で異世界転移編もいよいよクライマックス。
加代ちゃん達は無事に元の世界に戻れるのか。
いや、戻らなくちゃクライマックスじゃないだろ戻るだろうが。
もはや微塵もわくわくもどきどきもない、お約束クライマックスです。
「キャラの叫びを聞くのじゃぁあああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「のじゃぁ、しかし、まぁ、なんじゃのう。最後に
「なぁ、加代さん。一応、最後に見せ場があってよかったなぁ」
「言うてまぁ、そこに至るまでの経緯とかそういうの、全部すっ飛ばしてのしめくくり言うんには変わりないけどな。ほんと、即興言うのも考えものやでしかし」
混戦に混戦が次ぐ戦場。
シュラトとエドワルド、あとなんかセクシーな衣装のエルフさんたちが戦っている横で、俺たちは彼らが崇めている神――魔神シリコーンへと向かっていた。
九尾コプター。
加代の九尾を全力回転させることにより空中を舞うことができる必殺技だ。
物理法則がどうにかなっている感じがしないでもないが、そこはオキツネ気にしない。物理法則がちゃんとしている前の世界でも、ちゃんとこれで飛べていたのだから問題はないだろう。
そう。
ついにこの長きにわたる異世界流浪編に終止符を打つ時が来たのだ。
「しかしまぁ、ワイを型に作った魔神の依り代やから、ワイを使えば封印できるっていうのは、なんや無理やり感はあるけれど納得な展開やな」
「こういうのをもうちょっと掘り下げて、なんていうか読者を魅せるのが肝だよな」
「のじゃぁ、本当にそうなのじゃ。なんなのじゃ、この設定だけはちゃんと考えてたのに、その過程がぐっちゃぐっちゃのわっちゃわっちゃ感。なんでこうなるのじゃ」
加代さん。
それを君が言ったらおしまいだよ。
前話でも言ったように、この一連の話のオチは加代さんの異世界転移者不適格。
異世界転移者を九尾になってはじめて終わるという性質のものである。このぐっだぐっだ感について、もはやどうこう言うのもおこがましかった。
「あっ、あれは――親切な人!?」
陣頭に立って指揮していた黒い騎士が叫び声を上げた。
あれは間違いなくシュラト。あれだけ心配していたのに、どうやら、いろんな悪い大人たちに担ぎ上げられて、難儀なことになっているらしい。
たった一ヶ月時間をすっとばしただけでこれである。
ある意味、俺たちが手を貸さなくても、ここには至っていたのかもしれない。
残念ではある。
だが、情けはかけていられない。
「やばいシュラトが気が付いた」
「急げ加代やん!! というか、もうここで降下すれば大丈夫や!!」
「のじゃ!! 武運を祈るのじゃ!! 桜!! ダイコン!!」
ほいと加代が手を離す。
それと同時に、何が起こったか、急激にピンクのぬらぬら――魔神筒の背丈が縮んで大きな木サイズになった。何がどういう原理かは分からないが、やることは変わらない。
そのぽっかりと空いた穴の中に――手の中のダイコンカリバーをぶっ刺す。
『まぁつまり、穴が合ったら挿りたいって奴ですね!!』
「一言ですんなりと分かるご説明をどうも女神さま!!」
「ごちゃごちゃ言っとる場合かいな!! いくで桜やん!!」
おうよダイコンと息を合わせる。
せいやと俺たちは頭上から――ピンク色をした暗黒大陸を治める神の脳天に向かって舞い降りたのだった。
「おらぁーっ!! 魔神!! 覚悟ォっ!!」
「何が魔神シリコーンじゃ!! こちとら魔ダイコーンやっちゅうねん!! ぬっぷりぬらぬらした格好しやがって!! ワイが煮てよし焼いてよし生でよしの、便利エクスカリバーじゃーい!! 食らえ!!」
突き刺さるダイコンと魔神の孔。
ピンク色の身体がぶるぶると震えるその上で、俺たちは集まる視線に一喝する。
まるでいったいどうしてここに。話の腰を突然折ってなんなのだこいつらはという感じの視線。そんないたたまれない空気。それらを一切無視して、俺は手の中のダイコンを強く握りしめるのだった。
「いくで桜やん!! とどめや!!」
「任せろ!! 喰らえ――
ぐるり、ねじ込むようにダイコンをその穴の中に深く埋め込む。
そうまるで鍵のように。いや、本当はもっと違うあれだけれど、とりあえず異世界への鍵ということにしておいて、俺はダイコンを力強く穴の中で回した。
『あひぃぃい!! りゃめぇっ!! んほぉぉお!! そんな所に大根入れちゃりゃめぇえええ!! 魔神にゃのに!! 魔神にゃのにぃ、封印されちゃうぅぅうう!!』
「……うわぁ」
「……流石魔神筒、断末魔が長いのぉおお」
どうやら女神の言う通り、効果は抜群のようだった。
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