第563話 完全勝利で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
「キングエルフ、半端ねっぞ。マジ、エルフリアン柔術、半端ねぇ」
という感じで、異世界なまはげをちぎっては投げちぎっては投げで倒してしまったエルフキング。商人プレイ(へたくそ)勢の桜くんには、応援することしかできないのだった。
「見ろダイコン!! 見ることもまた戦いだ!!」
「せやな!! 桜やん!!」
「青春漫画っぽい台詞を言ってもダメなのじゃ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
なまはげを倒してからもエルフキング無双は続いた。
やってくる稲わらの奴らをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
実際にズタボロの稲わらに変えて、エルフキングは乱舞を続けた。
そしてその動きが止まるころには――。
「……のじゃぁ」
「……すげえ量の稲束だなおい」
「豊作やで。サーモン豊作やで」
辺り一面、稲わらの山。
新しい稲が風に靡く水田。その青さが霞むほどに、茶色い稲束が山となってそこには溢れかえっている。
きぃきぃと鳴いて森の中へと逃げていく稲わらの一味。
もはや彼らに抵抗するという意志は微塵も感じられなかった。
キングエルフの完全勝利である。
もちろん相手は稲でできた植物モンスター。
なまはげはともかくとして、稲わらの一味は攻撃が当たった所でたいしたことはない。
とはいえ、まったくの無傷。
息の一つの上がっていない。
ふざけた格好にふざけた技だが、この男が異世界の冒険者として相当に腕が立つことだけははっきりと分かった。
分かったが――。
「こんなふざけた奴が強いとか、ちょっと腑に落ちんよな」
「異世界転移系で、意外なキャラが無双するのはようある話やけれど――褌エルフってのはちょっとないわ。なしよりのなしやわ」
「……うむ、なにやら不興を買ってしまったようだが、何かまずかっただろうか?」
「のじゃ、何も悪くないのじゃ。むしろ助けてくれてありがとうというべき所なのじゃ。お主ら、守って貰っておいてそういう言い草はちょっとダメなのじゃ」
いやだって、加代さん。
言うて褌男ですよ。
男装の女騎士に助けられたなら、あぁんキュンキュンするって感じになりますけど。褌男ですよ、あーた。そんなのに助けられてもうれしくないでしょうが。
どこに需要があるっていうんだ。
ゴールデン〇ムイならともかく。
この小説の主要な読者は男なんだから、そんなケツキャラサービスなんてしてもらったところでどうにもならんてーの。
どうせなら、ビキニアーマーのエルフを出してフォックス!!
「……しゃくら?」
「邪なことなど考えておりません。いや、加代さん、マジで、これは大切な話でね」
「のじゃぁ……。生命の危機に瀕すると、人間は子孫を残そうとそういう気分になるそうじゃのう?」
股間を凝視しながら加代が光のない目で言う。
えっ、ちょっとまじでと確認すれば、股間は普通。
ちっとも湿ってはいやしなかった。
なんだ、てっきりと子孫を残すようなエキスを出しちまってたのかと思ったけれど、そんな山口展開なんてなかったんだ。
粥のような奴がでろりと発射されたかと思ったけれど、そんな死に瀕した〇眼流の高弟みたいなことはなかったん――。
「のじゃぁ!! 簡単に誘導尋問に引っかかりおってたわけ!!」
「へぶっ!!」
やれやれ。
柔術の次は空手ですか。
フォックス空手。矢継ぎ早に繰り出される、九つの尻尾は、人体の急所を的確に突いてくる。一度に九箇所も急所を攻撃されれれば、防御することは不可能。
それを覆す必殺技なぞひらめくことなどできるはずもなく、俺は無様に宙に舞い上がると、ぐはぁと白目を剥いて吹っ飛ぶのだった(イメージ)。
あぁ、こっちの時代ものですか。
これはこれで懐かしいですね。
あと違う意味でぶっ飛んでいる。
実際俺の身体もぶっ飛んでいる。
エルフキングも完全勝利なら、加代ちゃんも完全勝利。
いや、一撃必殺。ワンパンで勝利を納めた九尾狐は、瞬〇殺立ちで俺を睨んでくるのだった。
はい、すみません。
しょうもないこと考えて申し訳ございません。
ビキニアーマーの加代さんの方がテンション上がりますフォックスフォックス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます