第516話 プロのお掃除屋で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
フルアーマー九尾(シロアリ退治仕様)。
もふい尻尾の中に隠していたその自慢の装備で突撃する加代。
しかし、この物語は、九尾がクビになる物語。
「のじゃぁーー!!(やられたーの意)」
流石の九尾。
異世界に来てから調子よかったが、シロアリ相手に敗北してしまうのであった。
だってしょうがない。
加代ちゃんだもの。
「異世界来てから本気出た感あったのになぁ」
「知らんけど、なんや、ドロン〇ョ的な安定感のある叫び声やん」
「せやろ」
「うわぁ、ドヤ顔」
◇ ◇ ◇ ◇
ほうほうの体で家の中から転がり出てきた加代さん。
彼女を追いかけてやってきたシロアリ(大型犬並感)を、ダイコンで殴り倒すと俺たちは慌てて家の扉をしめた。
そりゃこんなのワラワラ湧いたら、ドラコもお手上げですわ。
おぉ、怖い怖いと震える手で握り締めたダイコンを放り投げると、俺は大丈夫か加代と同居人を気遣うのだった。
「のじゃぁ、おかしいのじゃ。あんな巨大なシロアリ見たことないのじゃ。突然変異なのじゃ。放射能を浴びて異常進化してしまったのじゃ」
「フォール〇ウトみたいなこと言い出したで、桜やん」
「まぁ、PC〇8あるから、展開的にありえない話ではないかもしれない」
実は一周回って俺たちの文明が滅んだ地球なのかもしれない。
前々から訝しんでいる世界設定だが、確証はないからなんとも言えない。
そしてそんなことを言っている場合でもない。
加代さんが敗退するような巨大シロアリ。
何気にタフネス、俺よりもファンタジー適正は確実にある加代が、すごすごと敗退するような正真正銘のモンスターである。
そんなものに占拠されてしまった我が家。
こりゃまたいったいどうしたものかねと、俺は頭を抱えるのだった。
「シュラトやんにもうちょっと残ってもらっとったらよかったな。そしたら、おまえ、シュパシュパパで退治してくれたで」
「それだなぁ。あいつ義理堅いから、頼んだらやってくれただろうな」
なんですんなりと仕事が終わったら別れてしまったのだろう。
ちょっとくらいお茶でも飲んで行ったらと引き留めてやるべきだったと今更ながら後悔してしまう。
しかし、後悔は先に立たない。
もう既にシュラトはいないのだから仕方ない。
となればもうどうすればいいかなんて決まっている――。
「俺たち異世界転移者には身に余る事態ということは間違いない」
「せやな」
「郷に入りては郷に従え。こういう時は素直に」
この世界の冒険者に頼るとしよう。
なんだか異世界転移モノとしては、本末転倒な展開な気がしないでもないが仕方ない。だってこの世界、俺たちが平和にしなくても、普通に回っているんだもの。
俺たちより、元から住んでいる人たちの方がたくましいんだもの。
ぜえはあと肩で息をする加代にそれでいいよなと問いかける。
九尾の沽券にかかわるとか言い出すかなと思ったが、加代は素直にそうするのじゃぁと涙声で了承するのだった。
まぁ、仕方ない。
「こういうのはやっぱり素人仕事が一番よくないんだよ」
「そうそう、水のトラブルも、シロアリ退治も、プロに任せるのが安心安全。どの世界でもそこは変わりないってことやで」
「……のじゃぁ、
言い訳は見苦しいフォックス。
狐なのにもうワンチャンスと立ち上がろうとした加代を、もうやめときなさいと俺は嗜めるのだった。
というか、これ以上変に頑張って危ない目に合われたら、それはそれでたまったもんじゃないしね。
そういう無茶はするもんじゃないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます