第515話 異世界白アリは強靭で九尾なのじゃ

【先週のおわび】


 久しぶりに投稿時間をミスってしまい混乱させてしまいました。

 今後このようなことがないように――と言っても絶対やらかすと思います。


 ほんますみません。


 謝ることしかできない筆者ですが、作品自体はこれからもほよほよと続いていくので、生暖かく見守っていただければ幸いです。


【前回のあらすじ】


 異世界白アリに占拠されてしまった加代ちゃん亭。

 桜と加代の生存圏を取り戻すために、再びイベントが発生しようとしていた。


「しっかしまぁ、カタクリイベントも終わって早々シロアリイベントとか、せわしないでぇ。ちったぁゆっくりする時間も与えて欲しいもんやなァ」


「なんかなぁ、こうもポンポンイベント発生すると気も抜けないよな。まったりスローライフのはずだったのに」


「のじゃぁ、呑気なこと言ってないで、さっさとシロアリ退治するのじゃ」


◇ ◇ ◇ ◇


 フルアーマー九尾。

 白い防護服に身を包みゴーグルをかけたオキツネが家の前に立っている。


 手にはなんかよく分からない噴霧器。


 ぐっとそのレバーに白色のゴム手袋で覆われた指をかければ、ぶばぁと黄色い液体が辺りに飛び散った。

 その液体が当たるなりモノが溶けるということはないが、人間の身体にもなんだか悪そうな、そんな匂いが風に乗って漂って来る。


「汚物は消毒なのじゃー!!」


「おわぁー!!」


「聖〇軍かよ!! なにテンション振り切っちゃってんの、加代さん!?」


 シロアリ掃除はわらわに任せよ。

 そう言って、いそいそと準備をし出した加代さん。彼女の職歴の豊かさを知っている俺は、まぁ好きにやらせてみようと、好きにさせてみることにした。


 したら、この格好である。

 そして、この台詞である。


 気合が入りすぎではないだろうか。

 というか、異世界だというのに、どうしてそんな噴霧器を持っているのか。異世界の店先で売られていたのか。だとしたら、どういう世界観なんだ。


 ファンタジーなのかSFなのか、どっちなのかフォックス。

 そんな気分で俺が思考停止する中、のじゃふふとオキツネ加代さんは不敵に笑ってゴーグルを外すのだった。


「まぁ、なんでもや稼業というのは道具が肝心。どんな状況で呼ばれたとしてもお仕事できるように、装備一式、尻尾に隠しておいたのが役に立ったのじゃ」


「マジか。そんなことしてたの加代さん」


「加代ちゃんの尻尾は四次元ポケ〇トかよ。そんな、チートアイテム持ち込み放題とか展開的にどうなん」


「のじゃ!! できる九尾は心構えが違う!! 常在戦場、いついかなる状況に置いても生き残るぞという覚悟――その賜物だから問題ないのじゃ!!」


 そんな覚悟を持って生きている九尾、世界広しと言えど、異世界にまたげど、お前くらいしかいないってのフォックス。


 こんなこともあろうかと、にも、限度ってもんがある。


 まったく生きるのに不器用な九尾ちゃんなんだからと呆れる俺の前で、加代は得意げに噴霧器のノズルを手の中で回して、格好をつけるのだった。


「のじゃ。シロアリ退治は任せるのじゃ」


「予想以上の逞しさに期待がストップ高だぜ」


「やったれ加代ちゃん!! シロアリを消毒やでー!!」


「なの!! 加代お姉ちゃん!! やってやるのなの!!」


「きゅるくるくーん!!」


 まぁ、そんな感じで盛り上がる俺たち。

 とはいえ言葉と裏腹に心は冷めている。


 だって、ここまで含めてテンプレ。

 実際に突撃すると――。


「のじゃぁあああ!! 大きい!! 大きすぎるのじゃ!! シロアリちょっと、考えてたサイズとだいぶちがうのじゃぁ!!」


 はい、ここ異世界に来てからはじめて、お仕事失敗というオチが付くのだから。

 まぁ加代ちゃんだから、そこは仕方ないよね。

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