第506話 厄介な匂いで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
エルフ趣味。
エルフを愛でる異世界ならではの趣味である。こっちの世界で言う所の――ダイコン太郎が好きな感じの奴である。
「エルフもロリも、愛でること自体は犯罪ちゃうやん。そういう所、ちゃんとしてやほんま。想像の自由いうもんが世の中にはあるねんで」
彼の言うとおりである。
言う通とおりなのではあるが。
「……のじゃ。そういう特殊な趣味はどうかとおもうのじゃ」
「加代はん!!」
「耳とかロリとかそういうので人を判断するのはどうかと思うのじゃ。もっとこう、本質的な部分をちゃんとみてあげないといけないのじゃ。ダイコン太郎、そういうとこなのじゃ」
加代の言うこともごもっとも。
そうごもっともなのであるが。
同意を求める視線がこちらを飛んで来たので咄嗟に逃げる桜。
そのまま彼は彼女たちに背中を向けて苦い顔をするのだった。
「……なんもいえねぇ」
中身を見つつ、業の深い相手と付き合っている男には、なんともいえない話であった。
◇ ◇ ◇ ◇
かくして黒騎士捜査網が展開されることになった。
「のじゃ!! エルフがよく居る所といえばどこなのじゃ!!」
「街に定住するエルフはあまり多くありません!! 冒険者エルフ!! 水商売エルフ!! あるいは物好きな奥様エルフ!! だいたいコミュニティを形成しているから、アポイントを取るのはそう難しくありません!!」
流石にエルフ趣味の相棒に振り回されているだけはある。
そんなすんなりと心当たりの場所が出てくるとは思わなかった。
ちょっと言いづらそうな苦い顔をしているのがなんともかわいそう。
女泣かせだなあのアンポンタン騎士。
わざわざよそのエルフを愛でにいかなくても、こんなに身近に愛でるべき相手が居るというのに。なにやってんだか。
二人の関係性が今更ながら不憫になる。
あきらかにアリエスちゃん、あのアホ騎士に気がある感じがするのになぁ。
もうちょっとあいつも気にかけてやったらいいのに、悲しいくらいにその素振りがないのだもの。
唐変木ここに極まれり。
哀れを通り越して不憫に思える。
こんな男に恋したのがそもそもの間違いなんだろう。早くもっと普通の騎士でいい人を見つけることをお勧めしたいが、所詮俺たちは余所の世界からやってきた人間、とやかく言うことはできないのだった。
「のじゃ。となれば、分担して探すのじゃ」
「奥様エルフには何かと伝手がありますので私が行ってみようと思います。残りの二つのグループになんとか接触してくれると助かるのですが」
「のじゃ。水商売エルフに
「いやいや加代さんや。冒険者ギルドの方が適任だろう。アンタ、ギルド嬢やっているんだから、話はしやすいはずだぜ」
「せや。桜やんの言う通りや。適材適所やで加代やん」
水商売エルフのグループには俺たちが接触する。
果たしてどんな水商売なのか、どのようなところまでサービスしてくれるのか。
おいでませ異世界風俗。
俺とダイコン太郎は、しぶしぶと重い腰を上げた。
「やれやれダイコン、ちょっと俺らも本気出すか」
「まぁ、出すんは違うもんかもしれんけれどな。けど、やっと異世界っぽくなってきたで」
「出た。異世界あるある。それ、割と頻繁に言ってるよな」
「ほんで外れるとこまでテンプレ」
わははと笑いあう俺とダイコン。
その時――。
「桜ァ。浮気は駄目なのじゃよ?」
異世界だというのに元から持ってる威圧感。
人の身の毛をよだたせる雰囲気が俺の肩に載せられたのだった。
――はい。ごめんなさいフォックス。
浮気はしませんフォックス。
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