第505話 追跡フォックス部隊で九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 エルフ趣味とは。

 言葉の響きにヤバさを感じる。桜は混乱状態に陥ったのだった。


「なんていうか、この世界っていろいろと業が深いよな」


「のじゃ、神の名前とか、PC〇8とか、ギミックがマニアックなのじゃ」


「……いや、自分らの属性も相当マニアックやで」


◇ ◇ ◇ ◇


 エルフ趣味というのはいったいどういうものなのか。

 それについて問いただすことさえもためらわれてしまう字面であった。


 エルフ趣味――いったいどんな趣味なんだ。


「エルフ趣味というのは、エルフを愛で、エルフを尊重し、エルフを大切にする、そういう心情の下に行われる自発的な活動のことを言います。にわかに信じがたいことですが、この大陸ではポピュラーなものなのです」


「嘘だろ市民権を得てる感じなの」


「のじゃぁ、そんなのに市民権与えるなんてどうかしているのじゃ」


 まったくだ。

 いわゆる人道支援的みたいな活動のように思うけれど、エルフを愛でるってなんやねん。そういう性的嗜好にしても、二次元という前提が入るだけに性質が悪い。


 というか、エルフってそんな愛でられるものなんかい。


「彼らは、魂の名という、自分が信奉するエルフを表す名前を持っており」


「いや、説明しなくていいから、アリエスちゃん!!」


「なんか涙目になってるのじゃ!! 無理して語る必要なんてないのじゃ!!」


 違った。市民権得ていなかった。

 ポピュラーな趣味だけれど、軽蔑される感じの趣味の奴だ。

 具体的には隠して嗜む感じの奴だ。


 そんなものを恋人かどうかは定かではないが、黒騎士に懸想している感じがするアリエスちゃんの口から語らせるのはどうかというものだ。

 俺と加代は察して、それ以上の発言を止めた。


 しかし――。


「のじゃ、それならそれで、エルフが集まる場所にシュラトは居るのじゃ?」


「可能性は高いかもしれないな。つっても、いったいどこにそういう施設があるのかわからないけれど」


「ききこみや、はりこみや!! 脚を使って探索するで桜やん!!」


 とまぁ、そうなるのは自明の理。

 かくして加代ちゃん探検隊――探せ幻の黒騎士が幕をあけるのだった。


 あけるのだった――が。


「……探したくねぇな」


「……のじゃぁ。なんかろくな展開が予想できないのじゃ」


 俺たちの間に衝撃が走るまでも無く。

 幸先があまりよさそうではない感覚がひしひしとしてくるのだった。

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