第476話 五柱の大神で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
「「分かっててもそういうの言うもんじゃねえ!!」のじゃ!!」
この世界に居る五柱の大神について、唐突に話題になる職場ってありますぅ?
という感じで、急にホットな話題がぶっこまれるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
「この世界には五柱の大神が居ると言われていてね人々に信仰されているの」
「のじゃぁ、そうなのじゃぁ? 五柱もいるとか結構大変なのじゃぁ」
八百万の神が生きる現代日本で生きておいてそういうことを申しますかね。
ともすれば、自分も誰かに祀られているんじゃないのかと、そういう不安を感じさせる発言を繰り出す加代さん。
しかし、異世界に入りては郷に従え。
素で言ったのか、それとも冗談で言ったのかは分からないが、とにかくそれがいい感じに会話の潤滑油になった。
本当に何も知らないのねぇと、馬鹿にする風でもなく笑う加代の同僚たち。
言葉と裏腹に嫌味が一切感じられない所からどうやら悪い人たちではないらしい。職場に恵まれたなぁなんてことを思いながら俺は目の端の涙を拭った。
「桜やん、どんだけ涙もろいねん」
「お前には分からないんだよ。加代の奴が就職でどれだけ苦労してきたか。そのことを思えば、ここは天国だよ」
「異世界でんがな」
ともあれ。
優しい加代の先輩たちは、異世界から転移してきた――という体の加代の立場を尊重して、いろいろと丁寧に教えてくれるのだった。
「まず、一番ポピュラーなのが海母神マーチね。この世界で一番信仰されているわ。大陸を越えて教会が建てられて祀られている。それだけの影響力がある神よ」
「海母神マーチ。具体的にはどういう権能の神なのじゃぁ?」
「母なる海っていうじゃない。その言葉の通り、人々を慈しみ癒しを与える神よ。なんていうか、こう、安心感という奴」
「安心感」
「そう、日曜日の夕方六時半くらいの安心感を与えてくれる神様よ。そのいつまでも変わらない安定感に、皆が癒される感じだわ」
癒される訳がない。
そしてなんだその妙な権能の神は。
どうかしてるんじゃないのか。
日曜日の夕方六時半に会社行きたくないシンドロームしか感じたことがない俺には理解しがたい感覚であった。そして、この異世界の人々が、ろくでもない神を奉じているのだなと直感した瞬間であった。
「あと、海産物の神でもあるわ。海で取れる物は全て、海母神マーチからの贈り物と解されているわね」
「のじゃぁ、いろいろじゃのう」
「次に有名なのが戦の神ミッテルよ。これは冒険者で前衛職に就く人間も、後衛職に就く人間も、武器を持って戦う者ならば信仰しているわ」
「のじゃ、して、権能は」
「戦に強くなると言われているわ。まぁ、相手がミッテルを信仰していたらどっちがどっちなんだという話もある。けど、武門の人は必ずと言っていいほど信奉してるわね。冒険者ギルドも、年に一回代表して、ミッテルの神殿にお金を奉納するわ」
「向こうの世界の八幡神みたいなものかのう。のじゃぁ、まぁ、争いのない世界になっても有難がられておるのだから、争いのあるこの世界ではことさら有難がられるのも仕方のない話じゃろうて」
うんうんと納得する加代さん。
俺にはちっとも納得することができない。
俺の教養がないからだろうか。
なんにしても、ちょっと彼女だけが一方的に分かる状況に不満ではあった。
まぁ、仕方ない。
実際神代の頃から生きているオキツネさまだものな。
その後、加代の先輩は、人造神オッサム、冥府の神ゲルシー、破壊神ライダーンと、この世界で崇め奉られてる神の説明を先輩から受けた。
人造だの、冥府だの、破壊神だの。
どれもこれもなんというか物騒というかなんというか――。
それよりなにより――。
「著作権的に大丈夫なんかこれ」
「ほんまやで。ゆでエッグ神とかも出てきそうな流れやなしかし」
「FとかⒶとか出て来ないだろうな、勘弁しろよフォックス」
いかれた異世界は出てくる神からしていかれている。
いや、いかれているというか――。
「確かに神だけど、神にする必要ありますぅ!?」
駄女神もヤベェ奴だけど、素の神もヤベェ奴らばっかりだ。
この世界の住人は気づかないだろうけれど、やべぇネタばかっかりだ。
俺はあらためて、このとんちきアドベンチャーの恐ろしさに戦慄した。
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