第474話 探せ神様で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
異世界転移を終わらせるために何が必要なのか。
自分たちを転移させた駄女神アネモネに詰め寄る桜だったがその答えは――この世界の神に聞けとのことであった。
かくして、僅かに見えた異世界転移から脱出するための手がかり。
はたして桜が次に取るべき行動とは――。
「その前に、この駄女神、一発ぶん殴っちゃダメかな」
「ひどーい!! 女の子に暴力を振るうなんて最低!! そんな奴は、触手系モンスターを胃の中に転移させて、内側からじわじわとリョナられちゃえばいいのよ!!」
「お前の方が言ってること酷くないか!?」
◇ ◇ ◇ ◇
「のじゃ。なるほど、この世界の神と交信して、異世界転移を終わらせる条件に付いて聞きださなければならない――なんだか王道RPGみたいな話じゃのう」
「だな。いかにもJRPG的だけれど、なんていうか中盤以降の展開だよな」
「なの、お兄ちゃんたち、なにむずかしい顔をしているのなの」
「くるるーん、きゅーん」
心配するなのちゃんとドラコを横に、俺と加代はあらためて、女神アネモネから知らされたこの世界の残酷な真実について語りあっていた。
この異世界から元の世界に戻る方法は、あの駄女神ですらわからない。
彼女はあくまで、請われて俺たちをこの世界に連れてきただけである。
この世界の神々が、俺たちを異世界から呼び寄せてまで望んでいること。
その望みを達成しない限り、俺たちは向こうの世界に帰ることができない。そして、それが何なのか知るために、神々に会わなくてはならない。
簡単にあの駄女神は言ってくれたが――。
「のじゃ、絶対これ、大変な奴なのじゃ」
「だなぁ。正直、どうやりゃいいのかさっぱりと見当がつかない」
「せめて何かヒントがあればいいのじゃが」
助けを求めるようにこちらを見てきた加代。
そんな彼女に俺は首を横に振った。
ノーヒント。駄女神は、この世界の神に会えとは言ったが、実際に、じゃぁどこにその神がいるのかについて教えてくれはしなかった。
そこは自分で探せということか。それとも彼女も知らないのか。なんにしても、この異世界から離脱する方法だけを告げて、彼女は忽然とその姿を消した。
時を同じくしてリスポーンした大根太郎が、三途の川がどうこうと騒ぎだしてうやむやになってしまったが、それでなくても彼女に再び会うのは難しそうだった。
あぁして俺たちに接触したのは気まぐれ、あるいは、彼女なりの何かの目的――しかも限りなくろくでもない――ものに思われた。
この世界の神と交信するのと同じように、彼女からこちらに接触する意図がない限り、再び会うのは難しいだろう。
つまるところ。
「手段は分かったが、どうすりゃいいのかさっぱりと分からない」
「のじゃぁ。肝心の所がすっぽりと抜け落ちたということなのじゃ」
ため息ばかりが口を吐く。
のはぁとしなだれる俺と加代。
そんな俺たちに――。
「なんやなんや、そんな湿っぽい声出して!! 子供もおるんやで!! もっとしゃきっとしいや、桜やん!! 加代やん!!」
何もできない大根太郎が発破をかける。
こいつ他人事だと思って――とは言えない。
割と彼も、本気で俺たちのことを心配してくれている様子だった。
心配そうな視線を向けるなのちゃんとドラコ。
そんな彼女たちから俺たちの姿を隠すように立ちふさがった大根は、珍しく真面目な態度でこちらに迫った。
「ワイも転生して長いけどな、こうして毎日一生懸命やっとんや。そしたらお前、ようやく桜やんや加代やん、なのちゃんやドラコと出会うて、そんでもって元の世界に戻る切っ掛けかて見つかった」
「……大根太郎」
「……のじゃ」
「弱気になってどないすんねん!! ええか、前見て進み続けとったら、少しずつでも目的の場所に近づいてんねん!! 確かにどうすりゃええかは分からんけれど、それでもそんな暗い顔して、うつむいててもはじまらんで!! 分からんなら分からんなりにやってくしかあらんやろ!!」
違うかと啖呵を切る大根太郎。
まったく違わないし、その通りである。
こんなことで元の世界に戻るのをあきらめていいはずがない。
そして、諦めるにはまだまだ早い。
「なのちゃんもドラコも居るんや。二人を心配させへんためにも、しゃんとしときや二人とも。大人やろ」
「……のじゃ」
「……そうだな。すまん、大根」
なぁに、分かればええんやと、ぺしりぺしりと青葉で俺の肩を叩く大根太郎。
まったくイキッた腐れダイコンだが――同じ異世界からの転生者。その言葉がどうにも俺たちには頼もしいのは間違いなかった。
そうだな、こいつの言う通りだ。
「こんなことくらいで諦めてちゃ世話ねえな」
「のじゃ。どんな時でも諦めない。いくらクビになっても諦めないのが、オキツネ加代ちゃんの取り柄なのじゃ」
「その通りだ加代」
俺と加代は手を握り合うとそこからなし崩しに抱きしめあう。
そしてお互いの方に頬ずりしながら、堅く誓い合った――。
絶対に、諦めたりしない。
どんな方法でもいいからこの世界の神と交信して、俺たちが為すべきことを為してみせると。
「おいおい、言うたそばからそんなおこちゃまの前で。はいはいなのちゃん、ドラコ、あっち行きましょうね。二人はこれから、ちょっとハッス――ブリティッシュ作戦!!」
「ほんとお前は、いい奴なんだか、調子がいい奴なんだか」
子供の前でそんなことしないよと、俺は妙なことを口走った腐れダイコンを叩き潰した。
いつもより、少し心地、弱めの感じで。
うん。そうだ。
あきらめるにはまだ早い。
まだいろいろと早い。
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