第467話 金と銀で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
「ワイ、綺麗な大根太郎。女性の皆さん、安心してください。太くて大きくて立派だけれど、なんの変哲もない綺麗な大根ですよ」
「なんの変哲もない綺麗な大根はそんなこと言わん」
「今なら、大根太郎ゴールド、大根太郎シルバーもついてくる!! さぁ、はじめよう、ダイコンモンスター!! 君も今日から憧れのダイコンマスター!!」
「砕くの面倒だから、先に砕いてから川に落とすね?」
「やめてや桜やん!!」
という訳で。
川に落ちた大根太郎が、ゴールドになったり、シルバーになったり。
なんかそんな感じ。
「最近、特に緩いな、この小説」
「他の小説にリソースがっつり食われてるからなァ。まぁその分、気楽にかけてるからええやん。ワイはそれもええと思うで」
「先週、加代の奴がついに出て来なかったけれど、それはいいのか、タイトル的に」
はい、それじゃ、今週も行ってみようか!!
◇ ◇ ◇ ◇
「という訳で、本日の最大の釣果は、金の大根と銀の大根でした」
「ワイの体を砕いて作った金塊と銀塊。大事に使こうてや、桜やん、加代やん」
こんもりと山と盛られた大根太郎――だったものの塊。
叩けば砕けてリスポーンする大根太郎。
しかしながら、金と銀の大根太郎はそうではなかった。
彼らは叩けばすぐに金の塊となった、銀の塊となった。
なんというかそう――。
「まぁ、普通に道具屋で売ると、一生遊んで暮らせるレベルの収入となりました」
「護衛してくれたパーティの人たちも一緒に行った釣り仲間も、目玉が飛び出すくらいに驚いとったで。いやぁワイのことながら、流石にちょっと恥ずかしいなぁ」
「の……のじゃぁああああ!!??」
素っ頓狂な声を上げてひっくり返る加代。
あまりに現実離れした収入。そう、まるで宝くじでも当たったかのような事態に、貧乏生活が身に沁みこんだ彼女は、白目を剥いてその場にひっくり返った。
そう。
ポンと頭と尻にモフモフのものを生やして。
それから口から泡を吹いて。
しかしながら決して全ケモモードにならず。
人の姿のままで彼女はその場にひっくり返った。
――無理もないなぁ。
素直な感想だった。過ぎたるは及ばざるが如しというかなんというか。
あきらかに降って湧いたこの金は、俺達の手には余るものだった。
「まぁ、お金を稼ごうと思ってやり出したことには違いないんだけれど」
「まさかこんな楽に金が稼げるとは思ってなかった言う奴やな。ほんま、桜やん、ワイに感謝しいや。ワイがど腐れダイコンやったから、金のダイコン、銀のダイコンバグ技が発生したんやからな」
「はいはい、感謝感謝」
「誠意が足りひんのとちゃう!?」
それより俺は加代の方が心配なんだよ。
突然、目の前に今まで手にしたことのないような大金が現れる。
その視覚的な効果。既にひっくり返って悶絶している時点でお察しだが、正直に言って貧乏系妖怪の加代ちゃんに対して、効果は抜群だった。
ひくりひくりと麻痺してのけぞる彼女にすぐに俺は駆け寄り脈を計った。
うん、なんとか脈はあるみたいだ。
呼吸はちょっと止まっているが。
「なの!! 加代お姉ちゃん、しっかりしてなの!!」
「きゅるる、きゅるるーん!!」
「加代やん!! あかん、あかんで!! そっちに行ったらあかん!! しっかりするんや!! 桜やん、ワイのことは気にせんと、一発、ワイで加代やんどついて正気に戻したってや!! ダイコンパワー注入や!!」
誰がするかそんなこと。
とりあえず、大根太郎を家の外へと放り出す。
それから加代から金と銀が見えないようにそっとそれらを布で覆って隠すと、俺はゆっくりとその腹に活を入れたのだった。
かはと息を吐いて蘇る三千年生きた九尾。
危ないという感じに額を拭う彼女の姿には、あきらかな死の影が落ちていた。
「あぶなかったのじゃ。あともうちょっとで、魂が封神台に飛ぶ所だったのじゃ」
「しっかりして加代ちゃん。ここは異世界よ」
お母さんと違って、ゴージャスな生活に縁のない奴だなぁ。
まぁそういう所がいいんだけれども。それにしたって、こらまたオーバーだなと、俺はため息を吐かずにはいられないのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます