第450話 光合成で九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 無事に異世界で居を構えることに成功した桜と加代ちゃん。

 しかし思わぬ同居人――だけど人外――の増加に、エンゲル係数が跳ね上がる。

 そんな状況を二人は不安に思わずにいられないのであった。


「のじゃぁ、大丈夫なのかのう」


「心配だなぁ」


 はい、タイトルからオチを察してくれて助かります。


◇ ◇ ◇ ◇


「なの!! なのは光合成で栄養補給できるから大丈夫なの!! 水と日光さえあれば、大丈夫なの!!」


「きゅるるーん、きゅる、きゅるるーん」


「ドラコも光合成で大丈夫なの!! 植物系モンスターだから、どこでもすくすく成長することができるの!!」


「……なるほどなぁ」


「……のじゃぁ、要らぬ心配だった訳か」


 ちょっと深刻な感じで、ところで、君ら食事とかどうしてるのって、座敷草鞋ちゃんに聞いた俺と加代さんであったが、それは要らぬ心配であった。


 そして、座敷草鞋ちゃんはなのちゃんというらしかった。

 草編みドラゴンのほうはドラコ。


 なんとも安直な感じで付けた名前という気がしないでもない。明らかな悪意の感じられる大根太郎とは大違いである。

 そして、その大根太郎はといえば――。


「え、ワイか。まぁ、そやな、基本ワイも水と日光さえあれば自家発電可能な、ハイブリット大根には違いないで。けどな、やっぱり太くて、男らしい大根なろうと思うたら、肥料が必要やねん。わかるやろ、桜やん」


「なるほど――牛糞でいいか?」


「でっかく栄養満点に育つのじゃ。死に戻るリスポーンするから、きっと毎晩のおかずに大活躍なのじゃ」


「はっはっは、加代やん、ちょっとほんま冗談きっついわ。桜やんも。えっ、ちょっと、マジで言ってないよね。目、怖い、ちょっと、やめてやほんまー」


 誰がお前のような気色の悪い野菜なぞ食うか。

 寝言は寝て言えと、俺と加代は太郎の小ボケにツッコミを入れたのだった。


 まぁ、いざとなったら食うかもしれないけれど。


 それはそれとして。


「のじゃ。そうすると、食費について考えなくてはいけないのは、わらわたちだけということになる訳なのじゃな」


「そういうこったなぁ」


「自分たちの食い扶持だけなら、たぶん、なんとかなる――かのう?」


「分からん。異世界の食事の相場がどれくらいか分からんから、なんとも言えん」


「のじゃ」


「だが、一つだけ、確かに言えることがある」


 そう、それは――。


「加代さんがお仕事をクビにならなければ、たぶん余裕!!」


「のじゃ!! 異世界に来てまでそう簡単にクビになるなぞ――」


「ないと言い切れないのが、これまた痛いんだよな」


 陰った顔でのじゃぁと呟くオキツネ娘。

 力なく項垂れる彼女に、どうしたのお姉ちゃんと、なのちゃんが歩み寄り、その頭をなでるのだった。


「おつかれなの? だったら今日はお休みするといいのなの。明日からまた、頑張ってお仕事するの」


「なのちゃん」


 うぅん、やはり、天使かな、なのちゃん。

 このなのちゃんを悲しませないためにも、頑張らなくてはいけないな。


 うむ、と、俺と加代は気合を入れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る