第362話 加代長の野望で九尾なのじゃ

 ちゃーらーちゃらちゃっちゃちゃー。


 そう、これは太閤〇志伝のテーマ。

 タイトルに偽りありだが、ノブ〇ボのテーマってどんなだったっけと、思い出せないのだから勘弁してほしい。


 ゲーオタではないけれど、男の子だからコー〇ーのゲームはやるのだ。

 俺もなんやかんやで学生時代に、ノブ〇ボ天翔記と、太閤〇志伝Vはひととおりやり倒していた。そりゃもう、真田信之で全国統一、古田織部で商人プレイとか、そういう縛りプレイをしまくったりしたものである。


 当然思い入れも深くなる。

 実家を出て一人暮らしをするにあたり、ゲーム機やらなにやら、いろいろと処分したのだけれど――ついぞこの二つだけは処分することができず、初代プレス〇と一緒に残してしまったのだった。


 そんなものをたまたま、加代と実家へ夕飯食べに行ったときに見つけたものだからあら大変。懐かしいなとそのままアパートに持ち帰り――。


「のじゃ、ではわらわは、この最上家でプレイするのじゃ」


「おっしゃ、それじゃ俺は大友家。どっちが先に京に上るかで勝負しよう」


「望むところなのじゃ」


 という感じで。

 家のテレビに接続し、さっそく二人でマルチプレイを開始していた。


 いやぁ、当時はシングルプレイばっかりで、マルチプレイなんかできるようにしてどうするんだと思ったものだけれど。


「なかなか、二人して競争して戦うというのも、これはこれで」


「のじゃぁ、寂しい学生時代じゃったのじゃのう」


「うっさい。普通ゲームなんて一人で遊ぶもんだろうが」


「のじゃのじゃ。そんな暗い桜の青春を、やり直す機会を与えてやっておるのではないか。にょほほ、なんじゃったら、女子高生に化けてやってもかまわんぞ」


「それはちょっと縛りプレイというか、ちょっと特殊プレイすぎない」


 こんな感じで、気心知った相手と二人、肩寄せあって遊ぶというのなら、悪いものではないのかもしれない。


 一つしかないコントローラーを、加代と譲り合ってプレイする。

 確かに青春のやり直しとしては、悪いものではないように感じられた。


「はい、ターンエンド。そんでもって、城一つゲット」


「のじゃ、凄いのじゃ。なんという手際の良さなのじゃ」


「まぁ相当やりこんだからねこのゲーム」


 早速、高橋・立花・菊池の大友三名将で、まだ育ち切っていない島津家に向かってカチコミをかけると、俺は城を一つ切り取った。有馬と大内は後回しだ。早くしないと、厄介な四兄弟が生まれてしまう――その前になんとかしなくては。


「のじゃのじゃ。京に上った方が勝ちなのに、わざわざ南に進むとは悠長よのう」


「後顧の憂いを取ってからじゃないとおちおち東進できないっての。お前も、うかうかしてると伊達が育つぞ。上杉も来るぞ」


「のじゃ!! どっちも京への道の途上の国なのじゃ!! 全部叩き潰して、上洛してみせるのじゃ!!」


 最上なんていうマニアックな武将を選んでおいて大言する加代。

 やれるものならやってみろ、そういって、俺は彼女にプレス〇のコントローラーを渡したのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


「……お、新しい武将が士官を求めてきたのじゃ」


「いいな。俺んところには来ないのに」


「……ふむ。この松永というおじいちゃんは使えるのかのう」


「ギリワン!!」


「こちらの斎藤もなかなか強面で強そうじゃ。まるでマムシのような顔つき」


「ギリワン!!」


「ややっ、この宇喜多という男、なかなか憎らしい顔をしておるのじゃ」


「ギリサン!!」


 なんでそんな義理の低い武将ばっかり集まってくるのフォックス。

 ゲームの中でまでカモにされるのかこの狐娘は。


「というか、畿内乱れ過ぎだろう!! なんで全部潰れてんだよ!! そんでもって、尼子家が京都を抑えてるんだよ!!」


「のじゃぁ、史実通りにはなかなかいかぬものじゃのう」


 ほんでもって織田家は滅びてるってね。

 それじゃいったい、これは何の野望ゲーなんだっての。ははは。


 まぁ、昔もよくみた光景だけれどさ。

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