第223話 タマモクラブで九尾なのじゃ

【連絡】


 ノベゼロコンに合わせてきりよく今の部が終わりそうなので、加代ちゃん更新を週四に戻します。明日から週四更新ですのでよろしくお願いいたします。


◇ ◇ ◇ ◇


「やっほー、。ようやく気づいてくれたぁ?」


「ようやくも糞もあるか……どうしてお前がここに出てくるんだよ!!」


「のじゃ!! こっちに来たなら連絡の一つくらいするのが筋なのじゃ!!」


「だってぇ、お兄ちゃんとお姉ちゃんが、らぶらぶ同棲しているところに顔出したりするの無粋かなぁって……。それに、嫌でしょ? 高級クラブで、自分のお嫁さんの妹とばったり鉢合わせしちゃうなんて」


 何が妹だこのバカお狐二号。


 お前は弟だろうが。


 俺は電話の向こうで、トラウマ級のよい笑顔をしているであろう彼のことを思うとしばし頭が痛くなった。

 なにもこんなドタバタの最中に出てくることはないだろう。


 いつも、俺が出向くと不在だった理由はこれか。

 そしてタマモクラブなんていう、意味深なクラブ名の謎もようやく繋がったわ。


 それにしたって、もうちょっとスマートに伏線回収したらどうなんだ。

 この世界を描いている神様という奴が居るのなら、俺は声を大にして言ってやりたいね。もったいつけやがって、こんな風に使うのかよ、バッキャロウって、さ。


「というか嫁じゃねえ!! ただの同棲相手だ!!」


「のじゃ桜よ!! そんな全力否定というのも、内心ちょっぴり傷つくのじゃ!!」


「うるせえ!! ほんとお前ら九尾一家は、揃いも揃ってポンコツなんだから!!」


「ひどぉいお兄ちゃん。けど、そのおかげで、こうしてテンちゃんのお父さんの居場所を、知ることができたんじゃない。感謝してよね、に」


 もう今すぐにでもスマホをリムジンの床に叩きつけて、通話を終わらせたかった。


 つまるところ、三国社長の愛人にしてタマモクラブのママの正体とは――俺と加代のよくよく知っている人物であった。


 加代の弟にしてニューハーフ。

 どんな女性よりも、女性らしい四尾の狐――ハクくんだったのだ。


「ほら、一時期ママがアニメ化されるからって、こっちに来てた時期があったじゃない。その頃に、ボクも一緒にこっちに来てて」


「ほんと、迷惑な一家。現代になってまで迷惑かけないでくれる」


「それでぇ、その時に気まぐれに大学に通ってた時から、テンちゃんとケーちゃんとは友達なんだよね。ていうか、お兄ちゃん知ってるよね? ボクが昔、日本で学校通ってたって話?」


「そういう話もしたけれど、そんな交友関係は知らん」


「で、その時に、ママが気まぐれで、大手銀行の役員をたぶらかして高級クラブを建ててねぇ。けどほら、基本、ママってば自由人じゃん。アニメが終わって、連載が終わって、ブームが一段落しちゃったらさ、経営めんどくさいからあとは貴方に任せるわって、ボクに放り投げられちゃったの」


「……それ以来、ニューハーフと高級クラブのママの二足の草鞋ですか」


「そうそう!! 週末は日本、平日はプーケットの二重生活!! ボク大変で死んじゃいそうだよ――嘘だけれどね!!」


「嘘なんかい!!」


「狐コプターでひとっ飛びだよぉ!! お狐、便利便利!!」


 狐の常識で世界を語らないでいただきたい。


 そんなに便利なら、今からその自慢の狐コプターで、お前の所のナンバーツーがしでかそうとしている事件を解決してくれフォックス。


 まったく緊張感も見せずに言うお狐息子に、俺と加代はげんなりとした顔をした。

 副社長は、何が何やらという感じだ。


「ちなみに――社長と遊んでらしたというのは?」


「朝までスマ○ラ楽しいよね!! もちろん64だよ!!」


「KENZEN!!」


 大企業の社長が、高級クラブのママと夜な夜なすることと言ったら。

 いやんばかんな想像をしてしまうのが常識だろう。


 しかしスマ○ラ。


 まさかの64。


 俺たちの世代なら仕方のないことかもしれないけれど。


 ないわー。

 はてしなくないわー。

 かんべんしてほしいわー。

 

 不倫じゃなくて安心した俺が居るというか。

 それでなくても社長が男しょ――げふんげふんな趣味がなくてほっとした。

 けれどもやっぱりどこかそういう、社長業に対する浪漫が破壊されたというか。


 なんとも言えない複雑な心境である。


 まぁおふざけはこのくらいにして、と、ハクくん。


 ビジネスモードに入った彼は、俺と加代にスマホ越しに告げた。


「お姉ちゃんの所に飛んで行った管狐が、ママと三国会長のプライベートなやり取りに使ってる子なんだ。彼が、三国会長が今居る場所まで案内してくれるはずだよ」


「管狐を専用回線に使ってる訳か」


「のじゃ、ママってば、年甲斐もなくこんなことして!!」


 まぁ、今回はそれで事件解決の糸口が見えて来たのだ。

 よしとしようじゃないか。


 管の中から顔を出したフェレットのような生き物。

 管狐が命じるままに、リムジンはどんどんと山奥へと走っていく。


 ちょっと昼食でもって場所じゃないねこれは。


 いよいよ、迫りつつある決着の瞬間を前に、俺はネクタイをきゅっと締めた。


 どれ。

 ここは不良サラリーマンらしく。


 一発バシッと決めてやりますか。

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