第146話 格安スマホで九尾なのじゃ
「いい加減スマホ買い替えるかな」
例の海外旅行中、無茶な旅程やイベントがたたったのか、俺のスマホはバッキバッキに液晶画面が割れている悲惨な状況になっていた。
まぁ、幸いなことに、今現在、会社勤めはしていない訳で、人様にこれを見られる機会はないのだが――そうは言っても使いづらい。
以前、加代の所に持って行って、買い替えてから半年もたっていないが――使えないものは使えないのだから仕方ない。
「さすがに再就職前に変え時って奴だよなぁ」
と、俺は自宅のパソコンで、スマホの通販サイトを眺めていた。
「こりゃ!! またそんなものを見て!! 無駄遣いはダメなのじゃと何度言ったらわかるのじゃ!!」
するとまた、最近やけに俺の金遣いに対してうるさい加代が、ふんすと鼻を鳴らして後ろに立ってきた。
じろりとこちらを見る目が、完全に駄目人間を見る目になっている。
いや、スマホは無駄なものではないだろう。
「仕事で使うものだし、ちゃんとしたのを買っておきたいんだよ」
「失業保険貰いきるまで休むと言っておったのは、どこのどいつじゃ」
「ここのこいつじゃ。いいじゃんかよ別に」
「ダメなのじゃ。まだ動くうちは、それを使うのじゃ」
それ、このスマホの液晶見ても同じこと言えるの、と、俺はのじゃ子にバッキバッキになったそれを見せてみた。
流石にそれを見ては彼女も俺から視線を逸らした。
そうだろう、そうだろう。俺だってよくここまで使ったものだと思ったのだから。
「のじゃ、けど、最近買い替えたばかりなのじゃ。お高くなるのじゃ」
「そりゃしゃあないわな。ある程度は」
「
「あんな怖いもの使うくらいなら、まだ、これ使うわい」
というか、そういうお前も普通のスマホ使ってるじゃねえかよ。
人にろくでもないもんすすめといて、自分は普通のとか良い根性しとるわまったく。
とまぁ、それは置いといてだ。
「心配せんでも、最近は安いスマホがあるから。一万円くらいで買い替えれる」
「一万円は安いとはいわないのじゃ。あぶりゃーげにしたら、150個買えちゃうのじゃ!! 半年あぶりゃーげが食べられるのじゃ!!」
「なんでもあぶりゃーげ換算するな。まぁとにかく、心配するほど高い買い物はしないよ」
ほんとうかえ、
「まぁ、会社との連絡に使うだろうから、大手キャリアになるのはしかたないとして、もうちょっと携帯代は抑えたいよな」
格安SIMとかに変えれればいいんだが。通話し放題プランがないからな。
LI○Eで取引先とやり取りする訳にもいかんし、そもそもそれはそれでパケットがかかる。
現代社会で働く上では必要なものとはいえ、煩わしいもんだよ、まったく。
「のじゃ。あれなのじゃ、実質0円のスマホにするのじゃ。お得なのじゃ。
二年縛りになるから、お得ではあるが面倒くさいんだよな。
基本料金もそんないうほど安いわけでもないし。
そして、その契約が使えないから、こうしてSIMフリースマホを探しているっていう。
まぁ、オキツネ娘にそんな話をしても分からんか。
「さらになんと、オプションで300円でファイヤーウォールソフト、500円で指定アプリが使い放題。1000円で、二年間故障しても修理してもらえるのじゃ」
「――お前それ、一回プラン見直した方がいいんじゃないか?」
というか、月にどれだけ携帯代使ってるんだよ、と、逆に加代を睨む。
別に普通なのじゃ、と、彼女は部屋の隅にある明細表などをまとめているフォルダを持って来ると、そこから先月の明細表を取り出した。
なんと。
「これ、あれじゃん、データ通信料定額のプランの奴じゃん」
「のじゃのじゃ。データ通信をしなければお得なのじゃ。電話はどうしようもないけれど――まぁ、そこは社会人じゃし」
いや、お前、これ、おもいっきりボラれてるぞ。
通話し放題でデータ通信量制限してる従来プランの方が圧倒的に安くなる奴だ。
なんで携帯ショップで働いてて、その辺りが分かってないんだ、こいつ。
まぁ、人様にスマートコーンなんて貸し出す奴だけども、それでもこれは……。
「――ちなみに、この機種も相当古い気がするが」
「のじゃ。言われてみれば、もう四・五年、変えておらんかのう」
なるほど。
プランの切り替えの時期を逃したということか。
物持ちいいなこのオキツネさま。流石昔の人間だ。
「のじゃ!! そうじゃ桜よ、友達同士だと何分かけても0円になるプランがあると聞いたことがあるのじゃ!! せっかくだし、それに登録するのじゃ!!」
「いや、そんなことしなくても――」
「家族間でかけ放題になるのもあったのう。内縁の妻は――どうなのじゃろう、できるのかのう?」
「誰が内縁の妻だ。ペットの間違いだろう」
のじゃ、なんなのじゃその言い草は、と、怒る加代。
まぁ、犬の親父が宣伝してるんだ、ペットでも大丈夫だろう、きっと。
「まぁ、それ以前にプランを変更しなきゃだがな」
「のじゃ? なんの話なのじゃ?」
「毎月、データ通信量は最低額だし、これなら一番安い容量で契約しとけば十分だろう」
加代、もっと携帯料金を安くしてやろう。
まるでオーケンの歌のタイトルみたいに、俺はこの現代社会に馴染めてないポンコツ狐に優しく微笑んだのだった。
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