第100話 第七部やっぱりジョ○ョネタで九尾なのじゃ

【はじめに】


 みなさまの応援のおかげで無事に百話を迎えることができました。ありがとうございますなのじゃ。

 しかしながら、今回も相変わらずひどいパロディ回で申し訳ない。。。


====


「さぁ、という訳で、シンガポールはクランジ競馬場から、本日は特別中継で国際記念レース『スティール・ウェイト・ラン記念』の実況をお送りいたします」

「いやぁ、まさかたまたま訪れたシンガポールで、レースに出場するとはびっくりですね、ゲスト解説の桜さん」


 そうですねディレクターさん。

 そしてノリノリで中継するアシスタントディレクターさん。


 かくしてシンガポールの夜があけて、俺たちは競馬場へとやってきていた。

 もちろん、加代の奴が参加するレースの映像を撮影するためである。


 一応国際レースらしいから、ちゃんと場所取りしましょうと、朝早くからアシスタントディレクターちゃんにたたき起こされた俺。

 さすがに由緒ある競馬場だけあって、クランジ競馬場はそこそこの人の入りだ。

 のじゃ子が出れる程度のレースだから、大丈夫だろう、なんてふざけて言っていたのだが、どうにも本日の目玉レースだったらしく、開始十分前にはゴール前は人で溢れかえっていた。


「ところで、さっきから会場をきょろきょろと、どうしたんですか、桜さん」

「いや、流石に裸の観客はいないかと思って」

「いつまでつの○ワールド引っ張ってるんですか。それより、レースの前に加代ちゃんを含めた、このレースの出走馬の確認をしましょう」


 楽しそうだな、アシスタントディレクターさん。

 この娘だけはまともだと思ってたんだけど、時々、変なスイッチ入ったみたいにノリノリになるよな。

 流石はこのアホみたいなライオンディレクターについてくるだけあるは。


 はい、それではこれがパドックの映像ですよ、と、アシスタントディレクターさんがハンディカムをこちらに向ける。中央の液晶画面に映されたのは、手取り間溢れる映像であった。


「まずは、一枠一番ハンソクオー。騎手は急きょの飛び込み参加、加代ちゃんさんジョッキー」

「いい感じに仕上がってますね。足の斑点が今日も綺麗です」

「もっと違うところほめるだろう普通」


 まぁ、競馬素人が集まって、勝手に言っているだけだから仕方がない。

 知り合いをよいしょしても仕方ない、さぁ、次だ次。


「続いては、二枠二番ホクトコクオウゴー。騎手は中国人ジョッキーの羅王ラ・ワンさんです」

「うん、いきなり違う世界感の馬が出てきてちょっとびっくりなんですけど」


 なんだこのまるで世紀末の覇者乗せてそうな狂暴そうな馬は。

 こんなん走らせたら確実に死人が出るぞ。


 そんでまたジョッキーも絶妙に濃い顔しやがって。優勝でもしたら、天に拳突き上げて還ってしまいそうな、そんな感じだ。

 やめろお前、これ以上パロディ重ねてどうするんだよ。


「えぇ、情報によりますとですね。羅王さんには二人の弟がいてですね、上の弟が重い病気――死の病におかされていて、それを治すためにジョッキーをしているとか」

「いらんわそんな無駄情報!!」


 あと、四人兄弟だから。

 忘れないであげてマスクの三男坊を。


 次だ次。

 俺はその狂暴そうな黒馬を早送りして飛ばした。


 すると次に出てきたのは――また同じようなタッチの馬。


「三枠三番。マツカゼフユイベント。騎手は日本人ジョッキー、雲井ひょっとこ斎さんですね」

「もはや隠す気すらない」

「えぇ、ジョッキーからのコメントがあります。E2海域なめプで甲選択、資材切れでお迎え損ね候、とのことです。よくわかりませんね」

「そっちの松風かよ!?」

「えっと、追伸で、だがそれがいい、だそうです」

「結局どっちなんだよ!!」


 何なのこの原哲○先生しばり。

 そりゃ格好いい男と馬といったら先生だけれどもさ。これ、著作権とか本当に大丈夫なの、怒られたりとかしないの。


 こういうのには触れないに限る。

 はい、次行きましょうかと、日の本一の傾奇者ジョッキーをスルーして、俺は映像を早送りした。


「えぇ、次は四枠四番、アメリカからやってきたグリーンドラゴン。緑の皮が綺麗ですね。騎手はマリオ・ロドリゲス」

「うぉおおい!! もはや馬ですらない!!」

「えぇ、こちらも騎手からコメントが。カートはだめですが、ダートはどうかな? 強気ですねぇ」

「どっちもダメだから!!」

「いやぁ、往年の実写ゲーム映画を彷彿とさせる、見事なドラゴンと外国人です。子供が見たら泣き出しそう、夢に見そうですね」


 子供でなくても夢に見るわこんなもん。

 だから著作権。ダメだ、下手に弄ると傷口を広げる。

 これはよく似た他人であって、実際の人物とは関係ない、そういうアレだ。

 次。


「えぇ、これで最後ですね。五枠五番イタリアの種馬ゴールデンラズベリー」

「最後の最後で滅茶苦茶わかりにくいボケ突っ込んできたな」

「騎手は覆面騎手のサンデー・シアターさんですね」

「マスクつけた馬は多いですけど、騎手は珍しいですね」


 珍しいというかありなんかそれ。

 しかもまた騎手名までわかりにくいボケかまして。

 確かによく流してるけど、イタリアの種馬の監督が撮った映画。それでも、そりゃないんじゃないの。


「えぇ、一応コメントを求めてみたんですが沈黙で返されました。沈黙の騎手ジョッキーです」

「そっちかぁい!!」

「うぅん、いったい誰セガールなんだ」


 どっちも確かに日曜日に流れてるイメージあるけども。


 というか、なんなのこのレース、まともな馬は一匹もいないじゃないか。今から大乱闘でも始めるのかよ、緑の恐竜もいることだし。


「おっと、そんなアホなやり取りをしている合間に、各馬ゲートに入った模様です」

「それでは国際記念レース『スティール・ウェイト・ラン記念』、ただいまより出走です」


 ラッパの音が高らかに鳴り響く。

 ダートコースに並んだ五つの馬たち。

 どれもこれも、なみなみならない体躯をした馬たちがいななけば、その手綱が揺れる。しかしながら、その握る先は彼らの尻の遥か後方――。


 おもりの乗せられたそりの上へと伸びていたのだった。


「そんでよりにもよってばんえい競馬かよ!!」

「国際交流ってことで呼ばれたらしいねぇ。なんでも日本にしかない競馬らしいよ」


 ばんえい競馬。

 正月とかに中継放送されたりする、馬が重りとジョッキーが載ったそりを引いて走る特殊な競馬である。


 そりゃ、牛みたいな馬だったり、恐竜だったり、不屈のボクサーだったり、たくましい馬が出てくる訳だわ。


 なるほど、スティール重りウェイト競争ランね。

 無理があるだろ。というか、ジョ○ョまるで関係ねえじゃねえか。


 どこからツッコめばいいのか分からなくなった俺は、出走と同時に顔を覆ったのだった。

 もうどうにでもなってくれ。

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