第98話 走れハンソクオーで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
なんやかんやあってようやくシンガポールについた加代さんご一行なのであった。
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ジョホールバルで一泊して翌朝。
シンガポール島へと伸びている土手道をひた走り、料金所でバイクに乗ったまま出入国の手続きを終えると、俺とのじゃ子はついに念願のシンガポールの地を踏んだ。
「のじゃぁあ、ようやっとシンガポールなのじゃぁ」
「ほんともう、どっかの誰かがいらんことするから、長かったよなぁ」
「固いこと言いっこなしなのじゃ」
しかしまぁ、入国するなりいきなりのビル街。
今までどこどこと走って来た田舎道とはえらい違いである。
マレーシアもジョホールバル近くまで来ると近代的な風景ではあったが、やはり音に聞こえしシンガポールだ。街並みは米国のドラマにでてきそうなくらいに近代的。ともすると、日本の片田舎より整然とした感じのするものであった。
「しかし、シンガポールに来たはいいけれど、いったいなにするよ。ここはあれだろ、商業都市だろ。観光するところなんてあるのか?」
「のじゃ、あれなのじゃ、口から水を吐くライオンさん見て、シュマップが歩いてたお船のビルで記念撮影するのじゃ」
「お前、なんで俺よりシンガポール詳しいのよ」
何年か前にCMで見たのじゃと、なんともない感じに言うのじゃ子。
そうういやそういうのやってた記憶があるな。喋る白い犬が出てくる前くらいだったっけか。いや、もう出ていたか。
なんにせよ、完全に日本文化に染まっているなぁ、この駄女狐。
心強いやら不安やら、と、ため息を吐いた時だ。
急に道路の横、藪の中から白い影が飛び出してきた。
のじゃぁ、おわぁ、と、俺と加代が慌ててブレーキを踏む。
後ろから迫っていたワゴン車にケツ掘られそうになったが、なんとかそれは回避することができた。
命があったことに感謝して、息を整えると、おい危ないだろう、なんなんだてめえ、と、俺は怒鳴りつけようとバイクを降りた。
しかし俺たちの前に立っていたのは――藪の中から現れたその白い影は、なんとも意外なことに人ではなかった。
「んあぁっ!! 危ないのねぇん!!」
白馬。
まるでおとぎばなしに出てくる王子様がのっていそうな白い毛並み。足に10円玉サイズの小さな
うん、なんだ、そのつの○先生の人気競馬漫画に出てきそうな口調は。
そしてなぜだ、そのセリフを吐いたであろう人物が、その馬の上に乗っていないのは。
まさか、この馬が喋ったのか。
すごーい、君はウマなのに喋れるフレンズなのじゃね、ってか。
おいおいおい、こっち海外編に突入してから、すごいフレンズ登場し過ぎだろう。のじゃ子弟に妖怪まっくろ小人。深夜番組っていう接点しかないのに、そんなパロして大丈夫なのかよ。
と、まぁ、のじゃ子の反応を予想したのだが。
「お、お前、ハンソクオー!? どうしてこんなところにいるのじゃ!?」
「んあぁっ!? 加代ちゃんさんジョッキー!? どうしてシンガポールに!!」
知り合いですか、そうですか。
類は友を呼ぶとはよく言ったものだが、いい加減、進行が悪いので、控えてくれないでしょうかね、加代ちゃんさんジョッキー。
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