第47話 台所の片隅で九尾なのじゃ
「育てるのじゃ、ちゃんと育てるのじゃ!! 豆苗、ちゃんと育てるから買って欲しいのじゃ!!」
「そんなもん育ててどうなるってんだよ!!」
「立派に育ったらおまめさんすりつぶして茹でて豆乳にして、そこににがりを入れてお豆腐にしたら、薄く切ってあげてお揚げさんにするのじゃ!!」
「そういう商品じゃねえよ!! なんでそこまで知ってるくせに豆苗のこと知らんのだ!!」
のじゃ、そうなのかえ、と、迫真のリアクションを見せるアホ狐。
まぁ苗には違いないが、そんな簡単に収穫できるまで育つ訳ないだろう。
そんなだったら、みんなありがたがって枝豆食べてないっての。
いや、そんなにありがたがってもないか、枝豆。
「のじゃぁ、これで毎日お揚げさんが食べれると思ったのに、とんだ期待外れなのじゃ」
「そんな理由で豆苗育てようとするやつ、俺は初めて見たよ」
「じゃあなんで人間は、こんなニョロニョロ育てようとするのじゃ? 食べても味気ないし、正直栄養もそんな無さそうなのじゃ」
「いや結構豊富らしいぞ、俺はしらんけど」
この手の生命力あふるる系の食べ物は、なぜだか女子に人気がある。
カイワレだろうが、ブロッコリーの芽だろうが、願い下げの俺である。
とんと分からんが、人気があるということは、当然、それだけの効果があるのだろう。
あんまりそういうこと言うんじゃないぞ、と、たしなめる俺の横で、主婦がさっそくそれを手に取ると籠の中へと放り込んで隣の島へと消えた。
「のじゃ。買っていったのじゃ。物好きな奴もおるのう」
「ほれ、要らないんならさっさとそれを棚に戻しておやりよ」
「残念な奴よ。ちゃんとお豆さんに育ったなら、妾が手ずから揚げてやるものを」
というか、そもそもお前、揚げ物とかできないだろう。
はて、なんのことじゃったかのう、と、首を傾げるアホ狐。そんな彼女を連れて、俺はスーパーを奥へと進むのだった。
「のじゃ!! 桜、豆乳があるのじゃ!!」
「だからお前は、なんでそんな回りくどいことまでして、油揚げを作ろうとするんだよ!!」
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