第33話 テレフォンショッキングで九尾なのじゃ

「のじゃじゃ!! なんと、今まで金たわしでこすっても、ちびっとも落ちなかったお鍋の焦げが、このオキツネパウダーをふりかければあら不思議!!」


 するり、布で拭っただけで取れていく。


 すごい、きゃぁ、欲しい、と、おばさんたちの黄色い声が響く。

 のじゃのじゃ、と、頷いてオキツネさん。そんな彼女たちにでんと、黄色いプラ容器入りの洗剤を突きつけたのだった。


 びっくり仰天、宇迦之御魂大神もびっくり、オキツネパウダー洗剤。


 好評発売中。


 お申込みはフリーダイヤル、なんちゃらのなんちゃら番。


 ふざけたCMもあるものだなと、俺は呆れてテレビの番号を変えた。


「のじゃ!! なんで番組変えるのじゃ!! わらわがせっかく頑張ってテレフォンでショッキングしているというのに」


「それは、今はもうやっていない名バラエティ番組のコーナーじゃないかよ。というか、お前、またこんなしょうもない仕事を引き受けたのか」


「しょうもなくないのじゃ。テレビに出られるだけで、ありがたいのじゃ」


 流石にアイドル志望の三千歳、根性が違うね。

 呆れて俺はため息を吐いた。


 と、言ってるそばから、変えた番組でまたこのアホギツネの顔がどアップに。


「えぇ、始めたときには信じていなかったんです。一ヶ月で、バストサイズがツーランクアップ。嘘だって。でも、使って見て実感しました。これは本物です」


 ちろり、と、オキツネの胸を見る俺。

 画面の中のそれと、今の加代のそれは、そう、変わったようには見えない。


「お前、流石にこれは、詐欺で訴えられるぞ」


「なんでなのじゃ!! ちゃんと、成長しているのじゃ!! 測ってないけど、効いてるのじゃ、たぶんだけど、本当なのじゃ!!」


 まずはバストアップの前に、資格講座でも取ったほうがいいんじゃないだろうか。

 このアホギツネは。


「そもそも、わらわの胸のサイズはほぼゼロじゃからのう。ゼロに何を書けてもゼロということは、掛率は無限大――」


「言ってて悲しくならんのか」


「の、のじゃぁっ!!」

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