第12話 のじゃロリ先生で九尾なのじゃ
「三年B組!!」
「のじゃロリ先生!!」
なんか知らんがよく見知った顔がテレビに映っていた。
掛け声と共に、髪をファッサーしたかと思えば、子どもたちに囲まれていく彼女。
テレビの中でも黄色髪アホギツネ娘がドヤ顔している。
なぜだろう腹立たしいのは何故だろう。
久しぶりに仕事が定時で上がり、二十時台に家に帰った俺。
コンビニで買ったカップラーメンに湯を張り、それから座卓の前に座ってテレビを点ければ、やっていたのはそんなどうかしたような感じのドラマだった。
起用するにしてももうちょっとマシな奴選べよ。
頭にアホみたいに狐耳生やしてる女だぞ。
というか演技できるのか。
そもそものじゃは間違いないとして、ロリではないだろう。
うん、ロリではないはずだ。
胸は確かに小学生並にしかないけれど。
『第一話 のじゃロリ先生 産休する のじゃ』
「第一話の内容じゃねえ!!」
食っていたカップラーメンの汁を、口から机に盛大にぶちまけてしまった。
社会派作品にしてもいきなり問題提起しすぎだろう。
そもそも狐耳の先生という時点からして問題しかない。
なんだこれ。
どういうコンセプトだ。
『えぇ、皆さんご存知の通り、担任ののじゃロリ先生がこの度、出産のためにお休みされることになりました』
『のじゃロリ先生』
『かわいそう』
『大丈夫かしら』
『これから一人で子供を育てて行くのよね』
『くそっ、誰がのじゃロリ先生を』
『あんなまな板に欲情するなんて、とんだロリコン変態野郎に違いないぜ!!』
不穏な台詞が飛び交う中学三年生の教室。
おかしい、おかしいだろ。
なんで先生がドラマ性の全てをひっちゃぶったような扱いになるんだ。
こういうのは年頃のゲフンゲフンがなるから話題になるんじゃないの。
いや、よそう。
あの女が主役の作品だぞ。
「というか、これからいったいどうやって話を続けるんだよ。無理だろこれ」
「第一話は釣りタイトルで、来週から熱血男性教師銅八先生が、校内に潜む種付けおじさん達と超能力バトルを繰り広げる、青春バトルコメディになるのじゃ」
「なるほど、体よくお前ドラマでもリストラされたのな」
うん。
なんだ、今、聞こえてはならない声がしなかったか。
「ところで、ひややっこはどうやって食べるのじゃ? からし? しょうが?」
「あぁ、からしで。あと、醤油は冷蔵庫に減塩の奴があるから――」
くるり後ろを振り返ると、そこには割烹着姿の黄色い髪の狐女。
なんの警戒もなくまぁ、九つの尻尾をぷらぷらとしてからに。
なんで、お前が、ここに居るのん。
俺が眼で訴えかける。
すると狐娘は、くねり、と、腰を曲げた。
「いやじゃのう旦那さま。お腹の子は誰の子だと思っておるのじゃ」
「そんな関わり一度だってお前ともった覚えはないんだけれど!?」
「認知して欲しいのじゃ!! 養って欲しいのじゃ!! 給料日前だけでも!!」
「うぇええい!! 鳴くな、寄るな、摺りつくな!! 獣臭いんだよ、服に匂いが移るだろうが、このアホ狐!!」
ドラマの中の話を、現実の中まで持ってこないでフォックス。
俺と同じで給料日前で金がないのだろう。
のじゃぁ、と、恥も外見もなくむせび泣くのじゃロリ先生を、俺はひっぺがすと、家の外へとつまみ出したのだった。
「酷いのじゃ!! お腹の子はどうなるのじゃ!?」
「ドラマの中の話だろうが!!」
「さんざん人のことを弄んでおいて――この鬼畜!! 悪魔!!」
「うるせえ、お前も九尾だろうが!!」
むしろこっちが弄ばれてるってえの。
帰ってどうぞ。悪霊退散。
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