第4話 スマートコーンで九尾なのじゃ
携帯が壊れた。
なんといっても携帯は社会人の必需品。
別に無くても仕事が捗るからいいのだが、周りの眼もありそうも言ってられない。
仕方なく俺は会社帰りにすぐ、近くのアンテナショップに脚を運んだ。
――のだが。
「いらっしゃいませ――って、またお主なのじゃ。なんなのじゃ、妾のバイト先バイト先に現れて」
「むしろそれはこっちのセリフだ」
狐につままれた心地で、俺はアンテナショップの店員こと、加代を睨みつけた。
「なんなのじゃ、怖いのじゃ。そんな眼で見るでない」
「余計なことする前にとっととバックヤードに引っ込め」
「ひどいのじゃ。妾、ここではしっかりお仕事してるのじゃ」
「ほう」
だったらおすすめのスマホでも出してみろよ。
そう言うと、まかせるのじゃ、と、先程までの怯えをどこへやら、彼女は元気よく懐から、それを取り出した。
そう、青々とした竹筒を。
「んだこれ」
「管狐なのじゃ。これを使役すれば、念じた相手にメッセージを届けられる」
「ほほう。すると電話料金は」
もちろんゼロ円なのじゃ。
えへんぷいと誇らしげに鼻を上げていう加代。
なるほどこいつにしては、どうやら真面目に仕事をしているらしい。
まぁ、現代技術ではなく怪しい技術を使っているのは気になるが、なんと言っても携帯電話は安さが一番。
管狐でメッセージのやりとりをしても、別に問題はないか。
「ただ、一つ難点を言うなら、伝えられるメッセージに制限があることじゃな」
「なんだ文字数制限か?」
いんや、と、首を横に振る加代。
すると彼女はすぐさまその竹筒を振ってみせた。
中から出てきたのは、指先サイズのフェレットか、オコジョか。
なんにせよ、可愛らしい動物霊。
そんなのがふよりふよりとこちらに飛んできたかと思うと、くるり、俺の首に巻きついて、ごしょごしょと耳元に口をこすりつけた。
おぉ、これはなんとも愛らしい。
と、思った次の瞬間。
「お前を○す。皮を剥ぎ、内臓を刻み、爪の先から骨を砕いて、○してやる」
俺の背筋に冷たいものが走った。
寿命、一日くらいは縮んだかもしれない。
「呪殺の言葉しか送れないのが難点なのじゃ。いや、弱った弱った」
「うぅん、使いみち、限りなくゼロ」
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