第12話 頑固者?

 さて、我が社の当面の目標は黒字を出すことと、安定した商品の発送。


 しかし、商品受け取りが安定的に出来るかは向こう、そう異世界次第。

 ここが我が社のウイークポイントになる。

 そこで与三郎さんが言うには、


「そこでですが、向こうにも会社を設立しましょう。当面の儲けは全て向こうに送って、商品の落着地点に砦なり塔なりを立てて100%向こうに届く体制づくりを始めましょう」


「でも、こっちの買い付けにもお金がかかるし…」


「そうですね、当面は赤字が続くかと思われます」


 ああ、確かに商売の規模が大きくなったとき度々商品を盗まれていては困る、大きな取引もままならない。

 がしかし、無いものは無いと! よく言う様に、私は自分でやっとな生活をしてきたのだ。


「一応、一応ですよ…私も結婚資金とか貯めてたんですけど、そんなにはお金無くってですね」


「はい、しかしこちらは銀行がありますから、暫くは融資で乗り切ります。あと私の家と土地を売って、私もこのアパートの空き部屋に住むことにします」


「そんな、お給料も払ってないのに」


「もちろん、差し上げるのではありません。会社が大きくなって株式会社になったとき、株で返して頂ければそれで結構です」


「そんな、悪いです! 何から何まで」


「いいえ、私は楽しいのですよ。今私の持つ財産・能力・コネ全てをフル活用してチャレンジをする。こんな事サラリーマン時代には無かったことです」


 与三郎さんは両手を広げ、充実しているのだと言わんばかりの表情だ。


「見てるこっちも楽しそうです」


「それには一つ、お願いがあります」


「何でしょう! わたしも全力で頑張りますよっ」


「はい、それでは今勤めている会社をお辞めになって、社長業に専念して頂きたい」


「ふぁ!」


「あと一つ、その結婚資金には手を付けないで行きましょう」


「でもでも、それじゃ私が出すお金なんて」


「結婚資金と会社の資金は別、よろしいですね」


 自分は家財投げうっておいて、私の結婚資金に手をだすななんて、納得出来るわけがない。

 でも、与三郎さんは頑としてそこは譲らず、私は折れるしか無かったのだ…

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