第6話 試行錯誤

「つか…れ…た」

 

 家に戻ってき…た。

 繁忙期と月末と週末が重なって今日はとても忙しかった。

 残業はそれほどでもないが、時間あたりの密度がやばかった。


 昼食を抜いたため、帰りに昼食兼夕飯を食べていたので急がなくてはいけない。

 畳を捲り壁に立て掛けると、いつもの様に穴の中に商品を送り込む。

 スルスルと降りていき、地面についた途端に釣り竿をクンクンと引っ張られる感触。

 思わず昔ハマっていたバス釣りの記憶が蘇り、あわせをしてしまう所だった。

 しばらく待っていると、またクンクンと引かれる感触、紐を解き手紙と代金をタッパに入れてくれた合図だ。

 

 さぁ勝負だ!

 パカッ

「毎日お仕事お疲れ様です、杉浦様。

 前回送ってこられた商品が売れましたのでご報告します。

 詳細はまた鑑定書を同封いたしましたのでご確認下さい。

 追伸-プレゼントとして頂いたカイロのうち2つばかり売りに出してみました。

 その事で少しばかりご相談があります。


 鑑定書

 携帯用の釜戸 1個

 希少性 3

 作り  5

 利便性 1

 芸術価値1

 査定額 銀貨5枚


 火打ち石 1個

 希少性 2

 作り  2

 利便性 3

 芸術価値1

 査定額 銀貨8枚


 熱を出す袋 2袋

 希少性 5

 作り  1

 利便性 4

 芸術価値0

 査定額 銀貨3枚


 瞬間火おこし機

 希少性 5

 作り  4

 利便性 5

 芸術価値2

 査定額 金貨1枚銀貨2枚


 ロックロズワード商会」


 おうふぅ、今回はダメだ、大赤字だった。

 タッパには駄賃を除いた金貨1枚と銀貨4枚が入っていた。

 そして、もう一通の手紙を開く。


「一枚に入り切らず手紙を分けました、実は先方が使い捨てカイロに興味を示され、作り方を教えてくれたら売り出してその儲けの2割を渡すと言ってきています。

 いかがしましょうか?

 また、火起こし用に入れてあった使い捨てライターは、その利便性と燃費の良さから評価が高く、たとえ大量に持ってきても銀貨6枚は最低でも出すと言っていました。

 暫くはライターで稼ぐのも良いかもしれません。

 それでは、カイロの件とあわせてご一考下さい。」


 うん、ライターは凄く評価が高く売値も高い。

 逆にコンロの方は釜戸と書かれている通り、向こうでは石を組んで自由に釜戸が作れるために需要が無かったようだ。

 ファイアースターターもしかり、少しだけ使い勝手の良い火打ち石であり、ライターにはかなわないのだ。

 商品が低評価でプレゼントとおまけで入れた物が高い評価を得たことで、結構自信をなくしてしまった。

 とりあえず今日は、ネットで使い捨てカイロの材料を調べて寝ることにしようと思う。

なにせ本業はあくまでサラリーマンなのだ、今日は早寝して明日に備えよう…

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