第3章 -2

「宝石売り場に行きたいのよ」

「友の会のカウンターはどこかしら?」


 見回りで近づいてきた叔父に目線で助けを求めると、叔父は面白がっているのかニヤニヤしたまま僕を放置して行ってしまった。周りの従業員が迷惑そうに睨むため、なるべく催事場の行列と重ならないように端に寄ってご婦人方の相手をすることにした。この辺りはベーカリー・グリムの特製ロールパンの販売でも多少の経験があるからなんとかなる。だけど人数が半端ない。ロールパンは整理券がなくなれば終わるけれど、迷子客は増える一方だ。

 しばらく対応に追われていると、やっと叔父が戻ってきて僕を人だかりから救出してくれた。


「お前、一体何をしたんだ?」

「何もしてないです。一人道案内したら、だんだん増えてきて……」

「あんな光景、今まで初めて見たぞ」


 叔父は怒ってはいないようだったけれど、僕の処遇に困っているようだった。そして、ひとまず人目のつかないバックヤードへ移動するということに決めて去っていった。

 もうすぐ店の裏側へ続く扉、というところで急に誰かとぶつかる。


「すみません!」


 僕が慌てて謝ると、ぶつかった女性は僕をじーっと見つめる。どうやら迷子ではないらしい、と安心したのもつかの間。


「ぬぬぬ! もしや貴殿は在人殿では?」

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