第1章 -3
開店前から待っていたのか、ほどなくしてお客さんがやってきた。お金持ちそうなマダム、散歩のついでみたいなラフな格好のおじいちゃん。上品なお出掛け着のおばあちゃん。どこかへ遊びに行く前にお昼ご飯を準備しようとしているらしい家族連れ……こんな時間から地下の食品売り場が賑わっているとは思わなくて、僕はまたワクワクしていた。
「ジミーくん、空いたカゴを持ってきてくれる?」
ジミーくん?
そう言われてしばらく自分のことだと思わずに無視していたけれど、パートさんが近寄ってきて「店長が呼んでるわよ」と教えてくれた。そうだ、僕は『治見』と名乗ったんだっけ。だからって『ジミーくん』はちょっとショックなんですけど。
厨房の中を見ると店長さんがこっちを睨んでいた。その顔がめちゃめちゃ怖かったから、急いで厨房に向かう。
「あなたね、ボサッと立ってたらお客様の邪魔になるでしょ。商品を並べ終わったら厨房に戻って調理を手伝うなり、汚れているところを拭くなり、自分でできることを探してよ」
「すみません」
「わかったらすぐ働く! このパン並べてきて」
「は、はい!」
もっと怒られるかと覚悟していたけど、店長さんのお説教は言うだけ言ったらあっさり終わった。きっと、真面目でとてもいい人なんだろうと思う。パートさんたちもこっそりフォローしてくれて、僕は少しずつ仕事に慣れてきた。
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