第7話 嫌いにならないで……。

私は今、一人でシャワールームにいます。


健人は、先にシャワーを浴びてベッドで待ってる。


……正直言って、怖気づいてます。


どんな事されちゃうんだろう?っていうドキドキと、やっぱり怖いって気持ちが混在してて。


健人にあげたいって気持ちは本当。


最初は、誰でも良いから貰って下さいって思ってたけど、今は健人に貰って欲しい。


でも、よくよく考えてみたら私達の関係って何?


付き合ってる、わけじゃないよね?


セフレ?


セフレに高価なプレゼントだとか、ムードなんて必要あるのかな?


会社を思い出したくないって、名前で呼び合うとか何の意味があるのかな?


そんな事ばかり考えて、時間がどんどん経っていく。



あと、ベッドに行く時の格好ですけど……。


バスタオルだけだと「こいつヤル気満々かよ」って思われそうだし、ガッチリ服着ちゃうっていうのも「脱がしにくい!こいつめんどくせ~」って思われそう……実際みんなどうしてるんだろう?


間とって下着だけ付けてバスタオルを巻くというスタイルに落ち着いたんですけど、鏡で見るとバスタオルからブラの肩紐出ててすごい不恰好。


いつまでも待たせてる訳に行かないから、このままで行くけど……。



ベッドの端に腰掛けてる健人と目が合い、ドキッとする。


健人は笑顔で自分の横に座るようにベッドをポンポンと叩く。


私はそれに導かれるようにゆっくりとベッドに座った。


緊張で心臓が皮膚突き破って飛び出して来るんじゃないか?ってくらいドキドキして。健人の目をまともに見れない。


健人は私の肩を抱いて、私は優しくベッドに押し倒された。


健人のふんわりした弾力のある唇が私の唇を塞ぐ。


優しいキスがどんどん激しくなっていく。


ゆっくり唇が離れて、私は荒い息をする。


健人の唇が首筋に近づいた時、私は不意に変な声を出してしまった。


私は慌てて口をつむんだ。


「麻衣子、カワイイ。もっと聞かせて」


健人はそう言って、丁寧に私の全身を愛撫した。


でも、いざ一つになろうとした時、健人の動きが止まった。


「う~ん、今日はここまでにしようか」


健人の口から中断を言い渡される。


「やだっ!私なら大丈夫だから。……やめないで」


急に見放されたようで、心細くなって私はすがるように言った。


涙が溢れて来て、震えが止まらない。


健人は私を抱き寄せ、手を握ってくれた。


「ほら……震えちゃって。手もこんなに冷たくなってる」


どうしよう、どうしよう、どうしよう!



長谷山先輩の「処女はムリ、めんどくせ~」って言葉が頭の中で繰り返し響いてる。


健人もきっと今、めんどくせ~って思ってる。


優しくしてくれてるけど、もう会いたくないな~って絶対思われてる!


「泣かないで。また次しよう。ね?次がダメだったらその次があるから!こういうのは焦ってもダメだからさ」


そう言って、健人は私を抱きしめながら、私の背中を優しくさすってくれた。


「嫌いにならないで……」


泣きながらそれだけ言うのが精一杯だった。


「大丈夫、ならないよ」


健人のその言葉で救われた気がした……。




佐田麻衣子、28歳、処女。

初体験ってこんなに難しいの?

私には一生無理なんじゃないかな……と、弱気になった。

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