第4話 アナタ誰?

う~ん、頭痛い、体が重い……。


目を覚ますと知らない天井。


一糸纏いっしまとわぬ自分の姿と、隣で寝てる見知らぬ男!


これ何!?昭和のドラマみたいな展開はなんだ!?


ここどこ?ホテル!?



「……」


もう一度自分の姿を確認してみる。


やっぱり何も着てない!


……この男、誰?


私は隣で寝てる男をまじまじと観察する。


睫毛まつげが長くて、控えめだけど通った鼻筋、大きくも小さくもない口、程よく肉付きの良い唇。


このイケメン、誰だろう?


「そんなに見つめられると起きにくいんだけど」


目の前で寝てると思っていた男が急に喋り出し、私は飛び退いた。


男は私に構わず、上体を起こすとこちらを見て訊く。


「昨日のこと、覚えてる?」


やっぱりすごいイケメン!で、やっぱりこんな人、覚えてない。


私はゆっくりと思い出しながら言った。


「私は会社の黛健人とバーに行って酒を飲んで、酔い潰れて……。黛は私を置いて帰ったんだ!で、あなたに拾われ、た?」


後半は当てずっぽう。


私が言うと男は気持ち良いほどの大笑いを部屋に響かせた。対照的に私は訳が解らず唖然。


男は笑うのをやめ私に向き直ると、いきなり自分の髪の毛を掻き乱し、枕元に置いてあった眼鏡をすかさずかけた。


「……」


私の反応がおかしかったんだろうか?彼は再び笑い出す。


「鳩が、豆鉄砲食らうような顔してる~!」


そりゃあ、驚きもするよ。だって……。


「あーもー!佐田さんカワイーね!」


イケメンが、黛健人に変身しちゃったんだから。


っていうか、黛健人がイケメンに変身?……ダメだ、頭の中が軽くパニック。


「あなたが、実はイケメンって事は解ったわよ。で、どうしてこんな事になっちゃったの?」


私が訊くと、黛くんは眼鏡を外して枕元に置いてから、話してくれた。


「28で処女ってイタイの?28で処女ってそんなに悪いこと?って」


いざ聞いてみると自分の痛々しい発言に私は慌てふためく。


黛くんはそんな私のことなどお構いなしに話を続ける。


「誰ももらってくれないし、何処に行ったら捨てれるの?って泣きながら訊くから、捨てるなら俺に頂戴ちょうだいって言った。で、今に至る」


知らない間に28年連れ添った処女とお別れしたのか……。


厄介者扱いしたけど、初体験の記憶がないのはちょっと寂しい気もする。


なんて、勝手なことを思ったりして。


シーツに血が付いてない。


初めては血が出る。っていうのは迷信?都市伝説?



……ともあれ、黛くんには厄介事まで押し付けて悪いことしちゃった。


「あの、迷惑かけてごめんなさい。あの、ありがとう。お陰」


「まだ、してないよ?」


私が言いかけた言葉を遮って黛くんは言った。私は耳を疑った。


「……は?」


「だから、まだ最後までしてない」


黛くんの言葉に私は硬直した。


「俺に頂戴って言ったら良いよって言ったんだから、今度はちゃんとしよ~ね❤出来ればシラフの時に!」


「そ、そんなの!」


私が反論しようとすると黛くんは私を易々と押し倒した。


「じゃあ、今からする?」


本気とも冗談ともつかない彼の目にゾクッとした。


こんな明るいとこで 恥ずかしさを曝すなんて冗談じゃない。


「もう、明るいし……」


私が言うと黛くんは「ん、そっか」と言って、私の体から離れてくれた。



佐田麻衣子、28歳、処女?

存在感のない地味男子が実はイケメンというベタな展開に実は引き気味……。

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