第8話
「いつの間に」
男が声を荒げる。
怒りが爆発した。男の腹に突然穴が開いた。自分の荒い息が聞こえる。
オキナの様子を見る。鼻に手をかざした。息をしていない。大量に出血していて、もう死んでいるのだろう。また、怒り。「くそっ」と叫ぶ。男の顔が消し飛んだ。首から血が流れてきて、白い床を染める。
壁も天井も白かった。隅には二段ベッドとテレビが置かれている。簡素な部屋だった。ここがどこなのか、よくわからなかった。オキナの死体は置いて、部屋のドアを開けた。部屋と同じく、白い廊下だった。適当に歩き始める。
自分の手を見た。汚れていない。でも、この手は汚れたんだと思った。不思議と恐怖も後悔もなかった。
突き当りのドアの取っ手に手をかけた。開かない。諦めて引き返すことにした。少し歩くと、組織の人間らしい人に見つかってしまった。驚いた顔をして、走り去っていく。
どうしようか迷った。追いかけるべきか、逃げるべきか。そうこうしているうちにサイレンが鳴り始めた。ガチャンと音がする。きょろきょろしていると、獣使いが現れた。
「誰だ、お前」
「覚えてないのかよ」
「そもそも会ったことないね」
「サチの家で見ただろ」
「サチ。誰だね、それは」
「お前らが連れ去った兄弟だよ」
そのとき、獣使いの表情が変わった。しまった、と思ったけどもう遅かった。
「そうか、見てたんだな。見られてないと思ったんだがね」
獣が現れた。壁を出す。獣がぶつかると、簡単に壊れた。
「なんだそれは。紙かね」
獣が襲ってくる。俺は逃げ出した。でも、どのドアも開かなくて、すぐに追いつかれてしまう。奥にあるドアの取っ手をを何回も引く。ガチャガチャと音が鳴るだけで、開かない。後ろを見る。獣が飛んだ。ドアに半径1メートルくらいの穴が開いた。背中の肉がえぐられるような、鋭い痛み。後ろからの衝撃で、穴から部屋の中に倒れこむ。ジタバタと暴れた。背中に獣が噛みついている。
獣がもう一頭、穴から部屋に入ってきた。飛びかかってくる。顔を噛まれる。そう思ったとき、獣の顔が消えた。顔のない体がぶつかってきて、倒れる。気づくと、背中に噛みついていた獣も消えていた。
「お前、何したんだね。さっきのペラペラで俺のタイガーが消えるわけない。何を隠してるんだね。いきなり現れたことと関係してるのかね」
俺は後ずさった。壁にぶつかる。壁を見ると、去年のカレンダーが貼ってあった。
「答えないのかね。まあいい。力づくで言わせよう」
獣が現れた。1時間は体感的にまだだ。獣が飛びかかってきた。
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