第7話
「危なかったね。どんな力をイメージしたんだい」
「守る力が欲しかったんです。だから、防壁をイメージしました」
紅茶を一口啜った。温かい紅茶が体に染みるようで、少し落ち着く。俺たちはオキナの家に戻ってきていた。
「防壁で木を破壊する…すごく危険な力だ。中でも特に。今日はこれで終わりだね。また今度やってみよう。今度はちゃんとイメージできるようにしようか。防壁はいい力だからね」
「都市伝説で聞いたことがあるんですけど、俺たちが過去に連れてこられるのって、世界崩壊を食い止めるためなんですか」
「確証はないけどね。世界崩壊はここらへんで計画されてるみたいだね。だから毎回、過去に飛ばされるとここら辺に来る。僕は謎を解明したくてここら辺に引っ越してきたんだ」
世界崩壊を食い止めるなんて俺には事が大きすぎてできない。でも、レイとサチの誘拐の真相を調べられるのはいいことかもしれない。
俺はオキナと連絡先を交換して、その家を出た。次の日も、練習をした。
防御壁をイメージする。ふっと力を込めると、目の前に防御壁が出現した。半透明の、薄い壁だ。
「うん、ちゃんと出せるようになったみたいだね」
そう言って、おきなは壁に人差し指を向けた。光の玉が射出される。小さな衝撃が伝わってきて、壁は粉々になった。少し胸が痛い。悔しいような、悲しいような。
「でも、強度がまだまだだね。強くイメージしないと。まあ、これはどうにでもなるけどね」
もう一度壁を出した。おきなはまた、人差し指を壁に向ける。その時、人型の光が目の前に現れた。おきなとの間に挟まれる形になっている。おきなは目を見開く。
光の玉が射出された瞬間、おきなは姿を消した。
「最近さ、ここら辺で事件起きたよね」
「どんな」
「何で知らないの。人が襲われた事件だよ」
おきなが人を殺したことについて、少し気になってサチに聞いてみた。誰も騒いでいなかった。サチも知らないみたいだ。
「なんでそんなに怒ってるの」
一瞬、口ごもった。
「なにかあったの」
「ごめん。何もない」そう言って歩き出した。階段を下りていく。
「ねえ、危ないことしてるんでしょ。やめなよ」
サチの言葉を無視して歩き続けた。サチから姿が見えなくなったころ、人の姿をした光が目の前に現れた。とっさに、目の前に壁を出した。でも、世界は一転した。
目に飛び込んできたのは、レイを誘拐したもう一人の男と、体中を切り刻まれて血まみれになったおきなの姿だった。
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