All of the begininng


ここは島の最北端の国、White Snowホワイト・スノウ

White Snowの中心部にあるお城のある部屋では、White Snowのお妃様が魔法の鏡に、毎日尋ねている事がある。それは、この世で一番美しいのは誰かという事だ。

魔法の鏡は必ず、「お妃様、貴女がこの世で一番美しい」と答える。その言葉を聞くとお妃様は安心するのだ。

それはなぜか?

答えは単純だ。自分の血の繋がっていない娘、即ち王女・白雪姫が日に日に美しくなっていくからだ。いつ、自分がこの世で一番美しい女で居られなくなるのかと不安なのだ。

 この日もお妃様は魔法の鏡に尋ねていた。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」


お妃様は当然自分だと鏡は言うと思っていた。言ってくれないと困ると思っていた。

しかし、鏡は違う事を言った。


 「この世で一番美しいのは白雪姫です」


ついに、お妃様にとって一番恐れていた事が起きたのだ。

お妃様は怒り、すぐに従者を呼んだ。


 「お妃様、お呼びでしょうか」


駆け付けた従者が聞くと、お妃様が淡々と言った。

 

「白雪を殺し、彼女の心臓を持ってきなさい」


 「はっ」


従者は返事をするとそのまま狩人の所へ向かい、お妃様からの命令を伝えた。

しかし、城の住人達は白雪の事が大好きだったので、殺したくないと思っていた。

そこで、一人の狩人が森の中で花を摘んでいた白雪の元へ行った。


 「白雪様、どうかお逃げ下さい!」


 「どうして?!」


 「お妃様が貴女様の命を狙っております。貴女様の心臓を持って来いと命令を出したのです。

しかし、私たち城の者は皆、貴女様に死んでほしくありません。ですので、代わりに豚の心臓をお妃様に届けます」

 

お継母様おかあさまが私を殺そうとしているの?! 分かりました。この国から逃げます」


 「どうか、いつか必ずこの国に帰ってきて下さい!」


 「えぇ、もちろん。お継母様が居なくなったら帰ってくるわ。教えてくれてありがとう。さようなら!」


 こうして白雪は、自分の命を自分の継母が狙っていることに驚き、その事を呑み込めないまま、White Snowを出る事になった。

 




 白雪はWhite Snowと隣国、Crystal Dreamクリスタル・ドリームの国境の森を一人彷徨っていた。

少し歩いては、木の根元に腰かけ、休むことを繰り返していた。

初めから当てもなく歩き続けていたため、今自分がどこにいるのか分からない。

White Snowから遠ざかっているのか、まだ国から出れていないのか分からないのだ。

 日が沈み、月と星が出て、日が昇る。一体これを何回繰り返しただろうか。

白雪は少し開けた野原に出た。そこには小川が流れていた。

喉が渇いていた白雪は小川へ駆け寄り、水を飲み、顔を洗い、靴を脱いで足を小川に浸けていた。


 「久し振りに少し綺麗になれた気がするわ。ここは一体どこかしら?」


白雪がボソッと呟くと、後ろから女性の声がした。


 「ここはCrystal Dreamですよ」


突然聞こえた女性の声に驚いた白雪が後ろを振り向くと、お世辞にも綺麗とは言えない、継ぎ接ぎつぎはぎだらけの少女が居た。

彼女は、金色の髪に青い綺麗な目をしていた。服はボロボロだが、とても美しい人だと白雪は思った。


 「貴女は誰?」


白雪が言った。


 「私はシンデレラと言います」


 「シンデレラ、よろしくね。私は白雪」


 「白雪、貴女はどこから来たの?」


 「私は隣の国、White Snowから来たの。貴女はこの近くに住んでいるの?」


 「ええ」


白雪は、シンデレラの顔が曇ったのを見て、聞いてはいけない事を聞いてしまったと思った。


 「ごめんなさい。余計な事を聞いてしまったわね」


 「いいえ、大丈夫。この近くの家に、お父様とお母さまとお姉さま2人と住んでいるの。お父様は町で商人をしているわ。でも」


 シンデレラはここまで言うと、口を閉じ、俯いてしまった。


 「シンデレラ? どうしたの? 話したくないなら話さなくて良いのよ」


 「いいえ。ずっと誰かに聞いて欲しかったの」


シンデレラはこう言うと、自分の身の上話をした。


 「私は、生まれた時から、ここに住んでいるの。優しいお母さまといつもいろんな町からお土産を買ってきてくれて、取引をした町の話も沢山してくれる、自慢のお父様と3人で暮らしていたの。でも、ある日、お母さまが病気で寝込んでしまって……」


 「まぁ……」


 「そして、去年亡くなったの」


 「そうだったのね、お気の毒に」


 「ありがとう。その後、お父様がある日、一人の女性と娘2人を連れて家に帰って来たの。そして、『シンデレラ、お父さんはこの人と結婚する事になった。今日から、この5人で暮らすんだ。よろしくな』って言ったの。私の意見は何も聞いてくれなかった。私とお母さまとお父様の3人の家なのにって、再婚する事に納得できなかったの。そしたら、その事が気に入らなかった3人が、お父様がお仕事で家を空けている時は、奴隷の様に私を扱うようになったの」


 「酷い……」


 「お継母様おかあさまは、お金持ちの男の人と結婚をしていて、3人は良い暮らしができていたらしいの。でも、その男の人が亡くなって、いきなり貧しい生活になったんですって。そんな時に私のお父様に会ったらしいわ。一度、お姉様に、『お母様は、私たちに良い暮らしをさせるために好きでもない、あなたのお父様と結婚したの。ずっといい暮らしが出来ているのに、不満ばかり持っているあなたが私は大っ嫌い』って言われた事があるわ」


 「そんなの、シンデレラを奴隷扱いしていい理由になんかならないわ!」


 「そんな事言ってくれるのは白雪だけよ……。今日も、3人のごはんを作って、お掃除をして、買い物を済ませて、やっとごみのような食事が与えられたわ。もうこの生活が嫌になって、こっそり抜け出してきたの」


 「そうだったのね……。お父様は?」


 「それが、1ヶ月前に感染病で亡くなったの」


 「そうだったのね」


シンデレラは空気を変えようと白雪に尋ねた。


 「ねぇ、白雪、貴女は? 何日も歩き回っていたんでしょう?」


 「えっ? どうして分かるの?」


 「だって、『ここは一体どこかしら?』って呟いてたじゃない」


 「そうだったわ」


 「ねぇ、貴女って、もしかしてお姫様?」


 「え、えぇ」


 「やっぱり! すごく良い素材のドレスだったから!」


 「ありがとう」


 「でも、何か事情があってここにいるんでしょう?」


白雪は、シンデレラが自分の事を話してくれたから、自分もと、今までの話をした。


 「酷い! お母様が自分の娘を殺そうとするなんて……」


 「実は、私も、お母様を亡くしているの。私を殺そうとしているのは義理のお母様よ。本当のお母様は私を産んですぐに亡くなったって聞いているわ」


 「そうだったのね。なんか、私達、似た者同士ね」


 「本当に」


 シンデレラは自分と白雪が出会ったのは偶然ではないような気がして、白雪に聞いた。


 「これからどうするか決めてるの?」


 「ううん。決めてないわ。シンデレラは?」


 「私は、Crystal Dreamのお城を目指そうかと思ってるの」


 「どうして?」


 「お城に行くと、生活に困っている人とか、身寄りが居ない人とかを保護してくれるっていう噂を聞いた事があって」


 「そうなの?! それじゃあ、そのお城へ行ってみましょうよ! 私も一緒に行ってもいいかしら?」


 「もちろん! 一人だと心細かったから、一緒に行きましょう!」


こうして、白雪とシンデレラはCrystal Dreamに流れる川のほとりにあるお城を目指し、進んでいった。


 

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Once Upon a Time… JU-RI @lapis-lazuli

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