第二章 第二話
二式は
真っ
「見事に……何にもない風景ですね」
「さすがにこのあたりには、観光の目玉はないだろう?」
リベリオン案内を手にした芳佳に、坂本は笑いかける。
だが。
「イヤッホ〜!」
「ヤピカイエ〜!」
「て、
二式の周囲をグルグル回る男たちを見て、芳佳は坂本にしがみつく。
「何を
と、坂本は答えたものの、男たちの正体がつかめない。
そのうち、ひとりのヒゲ
「お前ら、ストライクウィッチーズだそうだな!?」
「その通りだ!」
坂本はズイッと進み出る。
「ヘイ! やっぱりだぜ!」
ヒゲ面の男は、仲間を振り返ってグイッと右手の親指を
おお〜っ!
という
「シャーリーを知ってるか!?」
ヒゲ面男は芳佳に
「は、はい」
声が裏返りそうになる芳佳。
「シャーリーは、俺たちにとっちゃヒーローなんだ! その
ヒゲ面男はニッと笑うと、仲間に
「おい、パーティだ! バーベキューの用意をしやがれ!」
「イエア!」
ランチワゴンが運ばれてきて、火が
「わ、私たち歓迎されているん……ですよね?」
「ちっこいお
バーボンの
「み、宮藤芳佳です」
「そっちの気の強そうなのは?」
男は次に坂本を見る。
「私は扶桑海軍
胸を張って名乗る坂本。
「さしずめ、扶桑のカラミティー・ジェーンってとこかあ〜っ!」
ガハハハッと笑う男。
「カ、カラミ……?」
「お〜っと、ジョークだぜ!」
男はウインクすると、バーボンの瓶を坂本に押しつけ、背中をドンと
「さあ! そろそろ肉が焼けるぜ! どんどん食いな!」
こうして始まったカウボーイと扶桑海軍兵士のバーベキュー大会は、深夜まで続いた。
「みんな、
ハンバーガーを手に、坂本の
「ああ。それに、シャーリーはみんなに好かれている。
「会いたいな……」
「おい、それは無理だろう」
風が冷たくなってきたので、坂本は自分のマントで芳佳を包んでやる。
「あいつはルッキーニと
「……です……よ……ね」
「……宮藤?」
いつの間にか、芳佳は
「……やれやれ」
「あれが自由の
二日後。
東海岸での補給を終えた二式大艇は、とうとう大西洋
「ほう、大きいな」
これには坂本も
「
「とうとうリベリオンともお別れですね」
「ああ。この先は戦場だ」
坂本は
「さよなら、リベリオン!」
芳佳は自由の女神に向かって手を
パシャ!
その後ろ姿を、土方のカメラのレンズはしっかりと
後日。
リベリオンで
「……これ、どこなのかしら?」
「さあてねえ」
ほとんどのスナップに写っているのは、どれも真っ暗な背景に、不気味に浮かび上がる芳佳と坂本のちょっとピンぼけな姿。
どうやら土方は、写真を
「こ、
思わず呟くみっちゃんだが、一枚のスナップを手に取ると、あっと息を
「……これ! こ、この人!」
みっちゃんが指さしたのは、ロサンジェルスで芳佳と一緒に写ってくれた女の子である。
「おやまあ?」
「エリザベス・テーラー!?」
祖母と母は顔を見合わせる。
芳佳の隣で笑っているのは、世界に愛された名子役、『緑園の天使』や『若草物語』でその名を知られる、未来の大女優だったのだ。
* * *
「ヴィルケ
ここはロンドン、連合軍司令部の一室。
「やってくれたわね」
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐を呼び出した司令官ガランド将軍は、出頭してきた彼女を見て
「あら? 何のお話でしょう?」
「各国の軍司令部に
「将軍の命令だなんて、私は一言も」
おやおや、という顔で
「ただ、ヴェネツィアの
「私だって分かっているのよ」
ガランドは
「どの国の首脳もガリア
「今までの戦いが前奏曲に思えるほどの厳しい戦いが、この後に
ミーナが言葉を
春といえども、
ガス
「物資はもぎ取れたとしても、ウィッチはどうするの?」
ガランドは
「かつての501のような
ミーナが
「まさか、
「将軍、人は集めるものではなく、自然と集まるものですわ」
ほんの少し、首を
「……あのマロニーが、貴官のことを
「まあ」
ミーナは心外だと言わんばかりの表情を作る。
「……いいわ。私もあなたぐらいの
将軍は
「どちらに?」
「いったん
「パーティ?」
「英国首相との会食よ。せめてお
ガランドは
「
どうやら、こちらも元ウィッチ。
* * *
「お
気だるそうな声がした。
ここは
ロマーニャ公国空軍第4航空団所属フランチェスカ・ルッキーニ
先ほどの情けない声は、ルッキーニ。
「
それよりも、さらにかったるそうに答えたのはシャーリーである。
「リベリオンの缶詰はやだ〜! おいしい料理が食べたい〜!」
じんわりと
「無茶言うなよな〜。大体ここって、補給ないんだぞ」
補給があったとしても、シャーリーの
「やだ〜! 芳佳の料理が食べた〜い!」
ブリタニア時代に、すっかり芳佳に
やってられないという顔で空を見上げるシャーリー。
と、そこに。
「……ん?」
シャーリーがその
よっこらしょっと反動をつけて起き上がり、受話器を取る。
「は〜い、こちらイェーガー。………………何? ホントか!
無線を切ったシャーリーは、ニッとルッキーニに笑いかけた。
「喜べ、ルッキーニ! 扶桑から補給が来るぞ!」
缶詰の日々よ、さらば。
「やたっ! ご飯が飛んできた!」
ルッキーニの顔が、パッと
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