第三章 私であるために ──または、坂本少佐の命名センス
第三章 第一話
雲間から眼下に、サファイアの
「現在、アドリア海上空。間もなくロマーニャ軍北部方面隊基地に
「うむ」
と、
「う〜、やっと下りられる」
「
横目で見る坂本。
「う」
「この程度の飛行でもう弱音か?」
「……すいません」
へこむ芳佳はふと、思いついて
「あ、そうだ。お父さんからの手紙、何だか分かりましたか?」
「いや」
坂本は答える。
「だが、宮藤博士の研究に関するものかも知れん。技術班には
「またかぁ」
以前の手紙も、芳佳の
(ほんと、間が悪いんだから、お父さん)
と、芳佳が胸の内で
ビーッ!
警報が機内に鳴り
「えっ!?」
「レーダーに未確認機の反応アリ! 急速接近中!」
操縦士が坂本に報告する。
「何っ!」
坂本がベンチから立ち上がるのと同時に、窓の外が赤く輝いた。
ビシュッ!
一条のビームが、二式の機体下部を
ビシュッ!
ビシュッ!
さらに、もう2発。
3発目は左第1エンジンに
エンジンは
「きゃああああっ!」
「うわっ!」
機体が大きく
「どうした!」
操縦士に確認する坂本。
「未確認機からの
「まさか!」
坂本は眼帯を上げ、
その魔法の
言わずと知れたネウロイ、それも大型の
「ネウロイ確認!
「っ!」
芳佳は坂本の方を
「奴らめ、もうこんなところまで来ていたのか!?」
ネウロイはさらにもう1発、ビームを放った。
これを
「きゃあああああ!」
芳佳の
何とか機体を立て直すと、芳佳は
どこかに激しくぶつけたらしく、腹部から出血して
「土方さん!」
芳佳は
土方の表情は
「魔法力が安定している。……成長したな、宮藤」
この様子を見て、満足そうに頷く坂本。
だが、この間もネウロイは攻撃の手を
ビームが何度か、二式大艇を掠める。
「今は
坂本が機長に内線で指示を出す。
「
二式は機首を下げ、雲海に向かって急降下し始めた。
坂本は芳佳と土方の前を通り過ぎ、操縦室に向かう。
「坂本さん!」
はっとして、その後に続く芳佳。
「どうだ、振り切れそうか?」
操縦室に入ると、坂本は機長に尋ねた。
「何とかやってみます!」
必死で
「
坂本はそう
「坂本さん!」
「ふっ、私が
「はい!」
芳佳はほんの少し、安心して
数分後。
芳佳たちの耳に、ドーン、ドーンという
待ちに待った、アドリア海沿岸ヴェネツィア
艦隊は全艦、第3戦速に入り、戦いの
戦艦の主砲、3連射。
対ネウロイ用の
さらに
「何だ!」
高度を下げて雲海から出る二式大艇の窓から、坂本と芳佳は海上を見下ろした。
「すごい……」
爆煙に包まれるネウロイを見て、芳佳は
だが。
「
坂本は失望を
「え?」
「目標が大きいから一見、当たってはいるが、コアに届いていない」
これは魔眼で
坂本の経験が事実を語らせる。
その言葉を裏付けるように、ネウロイは艦隊に目標を変え、反撃に出た。
表面が
「ああっ!」
「駆逐艦がやられた! ロマーニャのウィッチはまだか!?」
坂本は、無線機前に座る土方を振り返る。
「
「航続距離不足だと!」
坂本にしてみれば、そんなもの、飛んでみないことには分からんだろうという感覚だが、
「ああっ! また船がっ!」
「
「直近の504航空団は、先日のネウロイとの戦闘で戦闘力を
さらに絶望的な報告を続ける土方。
「30分だと!? このままでは3分で
「全滅……」
坂本の言葉に、芳佳は
ビシュッ!
駆逐艦を
このままでは確かに全滅だ。
「……出るぞ!」
坂本は土方に告げた。
「えっ!」
芳佳は耳を疑う。
「了解!」
土方はすぐさま整備兵に命じた。
「出撃準備!」
「
応じる整備兵。
「駄目です! やめてください!」
芳佳は坂本の前に立ちふさがる。
「
「退きません! 坂本さんはシールドが張れないんですよ! お願いです、飛ばないでください!」
「……前にも、こんな風にお前に止められたことがあったな」
坂本は芳佳を見つめた。
「安心しろ、宮藤。私はこんなところで命を落とす気はない」
「でも……」
「確かに、
には新型ユニットの紫電改と、こいつがある!」
背にした軍刀にチラリと目をやる坂本。
「一度お前に救われた命だ、そう簡単に捨てたりはしない。安心しろ、宮藤。私は戦える」
「だったら、お願いがあります!」
坂本の決意を感じ取った芳佳は、これだけは
「私も……
「ふっ、ふふっ、はっはっはっはっはっは! ……よし!」
(こいつは変わらないな。だから、私は未来を
坂本は
「行くぞ、宮藤!」
「はい!」
「宮藤、お前が先行してネウロイをヴェネツィア
発進ユニットに飛び乗り、ストライカーを装着する芳佳に、坂本は指示を出す。
「
「その後方から、私がコアを
飛び出す
二式大艇後方上部のハッチが開き、発進ユニットが
「飛べ、宮藤!」
「行きます!」
芳佳は飛び立った。
ネウロイのビームが芳佳を
「くっ!」
体勢を立て直し、二式大艇に追いつく芳佳は、ハッチから
「坂本さん!?」
「やられたのは発進ユニットだけだ! 前を見ろ! 次が来るぞ!」
前方の大型ネウロイの表面が光を帯びた。
「!」
芳佳は手を
円形の光の
「すごい!」
息を
「何て
土方も
「これが宮藤の力だ!」
坂本は
だが。
「
発進準備をしていた整備兵が報告する。
「何だとっ!」
大空でネウロイと
坂本は
* * *
その
少し離れた海岸近くの空では。
「ご飯っ、ご飯っ!」
「補給っ、補給っ」
ルッキーニとシャーリーが
「扶桑のご飯っ」
「ほかほかご飯っ」
「ご飯にタコのカルパッチョ」
「うえ〜っ。タコはカンベンしてくれよ」
代わりばんこに歌っていたルッキーニとシャーリーだが、タコが出てくるとシャーリーが顔をしかめた。
「え〜、タコ
「あんなうにょうにょ〜ってしているの、よく食べられるな」
「うにょうにょ〜として、ぺたぺた〜ってくっつくのがいいのに」
「い〜っ!」
「……そこだけは、よくわかんないなあ」
そこに。
『周辺の全部隊に告げる。こちら、ヴェネツィア第1
インカムに通信が入った。
「聞いたか!? 急ぐぞ、ルッキーニ!」
「らじゃ〜」
二人は一気に加速した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます