第二章 沸騰、往復書簡! ──またはチーズバーガーと茹でジャガイモ
第二章 第一話
「
ガリア救国の
「私に手紙か?」
「……シャーロット・E・イェーガー?」
「へえ〜、シャーリーから?」
501ではバルクホルンと共にWエースと
部屋は空き巣に入られたかのように
制服の下を
「あ、こら! 人の手紙を勝手に!」
奪い返そうとするバルクホルン。
「いいじゃ〜ん」
ハルトマンはさっそく封を切る。
「か、返せ!」
「読ませてよ〜。それとも、何か読まれちゃヤバいこととか?」
「そんなことはない! 断じてあるかああああっ!」
と、二人が手紙を取り合い、
「何しているの?」
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
「ミーナ、シャーリーからだってさ!」
ハルトマンは奪った手紙を持ってミーナに
「あら、
と、ミーナ。
「だよね〜。宮藤なら、半月に一回ぐらいは様子を知らせてくれてるけど」
ハルトマンはうなずいた。
「宮藤さんはもう民間人でしょう? シャーリーさんとは立場が
扶桑に帰った宮藤芳佳の名を聞くと同時に坂本美緒少佐のことを思い出したのか、ミーナの
「そっか。もう宮藤たちと
故郷に
坂本少佐も
「不思議な感じ。分かってはいるのに、あの二人とはまたどこかの空で一緒に飛べる気がするよ」
ちょっと
「でも、よりにもよってトゥルーデ
「よりにもよってとはなんだ? ま、まあ、同じ階級だった
それに、ブリタニア時代は意外と腹を割って話す機会も多かった。
山盛りのポテトを取り合ったこともある。
バルクホルンにとってもカールスラント組以外では、シャーリーが一番気安い相手だったことは確かだ。
「……あいつ、元気かな?」
バルクホルンはようやく手紙を取り戻し、
「読んで、トゥルーデ」
ミーナがいつものように
「ああ」
バルクホルンは近くのベンチに座り、右にハルトマン、左にミーナが
「ええと……」
久し
あたしとルッキーニは今、×××の×××で×××の任務についている。
「んだよ、
最初の2行まで読んだところで、ハルトマンがプラチナブロンドの頭を
「当然ね。任務については対外秘」
「先を続けて」
「ああ」
どうせ、今の
ここから後は、なるべくそのあたり引っかからないように書く。
「分かってるなら、最初から書くな」
読み上げながら、バルクホルンは
急に手紙を出して悪い。
そっちの様子を知りたかったんだけど、上官だったミーナ中佐に私信を送るのは何となく(このあたしでも)気が引けるし、ハルトマンに出しても返事が来ない気がしたんだ。
「正解だな」
バルクホルンはチラリとハルトマンを見て、その先を読む。
こっちの話になるけど、501にいた時ほどの
もっとも、整備にかける時間は長くなった。
昼間の暑さや夜中の信じられないくらいの冷え込みよりも、そっちの方にうんざりしてる。
そのうちまた最高速度に
ルッキーニは元気。
みんなに会いたいって言っている。
あたしもしょっちゅう、パスタ料理をせがまれて大変だ。
といっても、
あいつも一応、お湯は
カールスラントはどうだ?
中佐は無理していないか?
ハルトマンは……やっぱり相変わらずだろうな?
気が向いたら、知らせてくれ。
きっとルッキーニも喜ぶ。
変わらぬ友情を
「……返事、書くんでしょ?」
バルクホルンが読み終えると、ミーナは
「あ、ああ」
バルクホルンは照れ
「私たちが元気だってことも、伝えてね」
「元気元気〜」
と、ハルトマン。
「貴様は元気が過ぎる!」
バルクホルンはハルトマンを
* * *
北アフリカのシャーリーのもとにバルクホルンからの返信が届けられたのは、
「見せて見せて見せて〜」
と、せがむのは501では最年少だった、ロマーニャ空軍のフランチェスカ・ルッキーニ
「ほらほら、
シャーリーはルッキーニの
こちらも全員、息災だ。
相変わらず、ミーナは世話焼きだし、エーリカはだらしがない。
カールスラントの
毎回決まってミーティングには
つい先日など、
これは
それをあいつときたら、いつものようにヘラヘラと誤魔化して!
まったく、ルッキーニと
もっとも、そちらとしてはお断りだろう?
任務については分かっているだろうが、
まあ、
こちらは防寒ジャケットが手放せない日が続いていて、温暖な北アフリカが
お
また、折を見て
元気でな。
貴官の戦友、バルクホルンより
「……そうか、みんな無事か」
便りを読み終えたシャーリーは
「息災って表現があいつらしいというか」
「よかったね〜」
ピョンピョン
「ああ、そうだな」
シャーリーは
* * *
シャーリーからの次の便りは、意外と早くカールスラントに届いた。
拝啓 ゲルトルート・バルクホルン空軍大尉
さっそくの返事、ありがとう。
みんな元気だって聞いて、安心したよ。
そっちにも連絡いってるかも知れないけど、ガリアにいる二人、ペリーヌとリーネも復興のために頑張っているみたいだ。あの
エイラたちの方は、まあまあ、だそうだ。
そう言えば昨日の夜、映画
クロード・レインズの『
あたしは『風と共に去りぬ』の方が
絶対本物だ、あの透明薬が飲みたいって
やっぱり、映画はハリウッドだな。
カールスラントには、こういう
お
何だったら、そっちに映画のフィルム、送ろうか?
リクエストがあれば言ってくれ。
また何か面白いことがあったら、連絡する。
シャーリーより
「映画だと? くだらん」
手紙を読み終えたバルクホルンは、少しばかり
「あら? 映画なら、カールスラントには表現主義の名作がたくさんあるし、娯楽作品として
「教えてくれ! こいつに
バルクホルンは身を乗り出した。
「はいはい」
ミーナは
「……張り合ってどうするんだよ?」
その横で
「う〜ん」
ミーナが挙げる映画のことを手紙に書きながら、バルクホルンはまだ物足りない表情だ。
「なんか、こう……絶対にリベリオンにないような、これがカールスラントの文化だ、と自慢できるものってないか?」
「そうねえ……じゃあ、オペラなんかどうかしら? ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのような、世界中で上演されるようなオペラを書ける作曲家は、あまりリベリオンにはいないと思うんだけど……」
「よし! それだ! オペラ、オペラっと……」
オペラなど、生まれてからただの一度も見たこともないバルクホルンは
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