第三章 第二話
ミーナ、バルクホルン、ハルトマンの三人は、基地をバスで
ミーナとバルクホルンは
「シャーリーから聞いたんだけどさ」
ハルトマンは三個目のアメを口に
「カジノで有名なラスベガスって、
「……」
「……」
「……って、あれ?」
「……」
「……」
バルクホルンは
ミーナは、誰から来たものだろう、絵葉書を取り出し、
「……これだから、カールスラント軍人はユーモアのセンスがないって言われるんだよなあ」
ぼやくハルトマン。
「失礼なことを言うな! 私でもユーモアぐらい解する!」
バルクホルンは、ハルトマンの呟きに反論した。
「じゃあ、今のジョーク、どこが面白かった?」
「う……」
正直、バルクホルンはジョークだとは気がついてなかった。
「高級自家用車で
絵葉書を見つめたまま、ミーナが解説する。
「さっすが、ミーナ!」
「でも、大して面白いジョークとは言えないわね。自家用車とバスの値段の落差がもっと大きいと、笑えるかも知れないけれど」
「……ぶち
ミーナもやっぱり、典型的なカールスラント人だと確信するハルトマンだった。
* * *
ウィッチたちを追い出すと、マロニーはすぐに基地をウォーロック対応の
ストライカーユニットが納められた格納庫は、H鋼で
一段高い位置に立つマロニーの背後には、
これも、ストライクウィッチーズ時代にはなかったものだ。
(ふ、これだ。
満足そうなマロニー。
「閣下、ウィッチーズ全員が、当地より
兵士の一人が、マロニーを見上げて報告する。
「うむ」
「すべて、順調です」
「どこが順調なものか」
「まったく、想定外のタイミングだ。こちらの戦力はまだウォーロック一機しかない。表に出る時期ではなかったのだ」
「しかし、もう
と、副官。
「そうとも。元はと言えば、
「扶桑に帰してもよろしかったのですか?」
「軍を離れ、ストライカーを失ったウィッチーズなど、ただの小娘に過ぎん」
悪意に顔を
「
* * *
「さらばブリタニア……ですわね」
「ペリーヌ、悪かったな。わざわざ扶桑にまでつき合わせて」
「あ、いえ! どうせ帰る国のない身ですので! 坂本
故郷ガリアは
それに、自分たちを追い出した軍に
「……」
坂本は
「済まなかったな、宮藤。わざわざブリタニアまでお前を連れてきて、こんな形で帰すことになるとは思わなかった」
「そんな、謝らないで下さい。本当言うと、こうやって帰ることや、ウィッチーズのみんなの役に立てなかったのは、とっても悲しいです……でも……」
坂本を
「私、あの基地にいたことは全然
もう泣くのはやめ。
これから自分にできることを探そう。
決意した芳佳の顔は、晴れやかだった。
「……そうか」
ちょっと安心する坂本。
「……」
ペリーヌも、そんな芳佳が今までもよりもちょっぴり、ほんの少しだけ、好ましく思えた。
* * *
ミーナたち三人は、ロンドンへ向かうバスを、小さなバス停で下車していた。
「やっと
周囲に
「このまま、カールスラントに
「……」
「……え?」
まじまじとバルクホルンを
「……な、何だ?」
異様な気配に振り返るバルクホルン。
「トゥルーデが戻ろうって言い出したんじゃん」
とうとうボケが来たか、思いながらハルトマンは
「いっ! それは、み、宮藤に……」
たじろいだバルクホルンは視線をそらし、
「借りがあるから……」
「そうだね、たっぷりとね」
たっぷりを強調するハルトマンの横で、ミーナも微笑む。
「つ、つまりだ!」
追い
「あいつを失意のままに帰してしまっていいのか!? カールスラント軍人が、そのようなことで……!!?」
そんなバルクホルンの
「はいはい、気持ちは十分よ。それに、宮藤さんの言ってたことも、気になってるの」
「ネウロイと友だちになるってやつか?」
「いいえ。ウォーロックがネウロイと接触してたって話」
と、ミーナ。
「宮藤さんがあの話をした時のマロニー大将の
「報告義務
バルクホルンも、ミーナの言いたいことを理解した。
「そういうこと」
「ああ!」
大きく
「問題はここからどうやって……」
と、ミーナが思案していると。
「ああっ!」
ハルトマンがこちらに向かってやってくる一台のトラックに気がついた。
「そのトラック〜!」
ハルトマンはウインクし、美少女の
「ハァ〜イ!」
牛乳を積んだトラックは、
心なしか、ハルトマンの姿を認めた
「こら〜! このセクシーギャルを無視すんな〜っ!」
去ってゆくトラックに向かって、
「……ああ」
「とにかく、ここで待っていても仕方ないわ」
ミーナは先ほどの絵葉書を取り出すと、表の風景写真を
すると、剝がした
どうやら、絵葉書は
「何だ、それは?」
短い文面を
書かれていたのは、地名と数字。
どうやら、どこかの住所のようだ。
「さあ、何でしょうね」
ミーナはそう
「あ、待て! 説明しろ!」
「ねえ、ヒッチハイクは〜?」
バルクホルンとハルトマンは、ミーナの後を追った。
ミーナたちがはるばる歩いてやってきたのは、基地からそう遠くない
かつては農家だったのだろうか?
「気の
バルクホルンは、そばの壁に立てかけてあった
その間にミーナは床板の一枚をめくり、その裏にテープで留めてあった大形の
封筒の中身は書類。
ミーナはそれに
「それってさ……」
「何?」
「私たちも、ただマロニー大将の
ミーナは
これを見ると、本来ならウィッチ隊に回されるべき予算が、どこか他の場所に流れていることが分かる。
「……数字ばっかじゃん」
中身を理解しようとする努力を、ハルトマンはゲンナリした顔で
「私たち? ということは、坂本
バルクホルンは書類を手に取ると、ピュウと小さく口笛を
「……しかし、よくこれだけのことが調べられたな?」
「確かに、スパイだらけの軍の中からだったら、難しかったでしょうね」
と、ミーナ。
「でも、私だって、軍の外にお友だちぐらいいるのよ」
「お友だちねえ……」
(これでこそ、いつものミーナだ)
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