第二話
戦場の中心にいるWエースは、息の合った戦いを見せていた。
小型ネウロイはなす
特にハルトマンは、陸にいる時とは別人。
さすがに
しかし。
(っ!)
一瞬の
(それなら!)
身体を
ハルトマンは曲芸飛行のような動きで、ネウロイをやり過ごした。
さらに、小型ネウロイがハルトマンを追って反転しようとし、速度が落ちたところを、バルクホルンの連射が仕留める。
「20!」
バルクホルンの撃墜数はさらに加算された。
「きりがないよ〜」
ぼやくハルトマン。
「コアは一体どいつなんだ!?」
再び背中合わせになったバルクホルンも、そろそろ残弾数を気にし始めていた。
一方。
「コアは見つかった?」
主戦場から距離を置き、魔眼でコアを探す坂本のところにまで、ミーナが上がってきた。
「……
戦場全体を見つめながら、坂本は答える。
「!? ……まさか、また陽動?」
「
坂本はミーナを振り返った。
「コアの気配はあるんだ。
「戦場は移動しつつあるわね」
視線を坂本から眼下に
「ああ、大陸に近寄っているな」
と、坂本が
「上っ!」
芳佳は、自分たちに向かって急降下してくる気配を感じ取った。
太陽を背に、数機のネウロイが芳佳に迫る。
「くそっ! 見えない!」
坂本も振り向くが、逆光で
「行きます!」
最初に動いたのは芳佳だった。
坂本とミーナに先行し、シールドを張ってネウロイのビームを
5機のネウロイが光の破片と化し、次々に砕け散る。
「よし、いいぞ! もう少し頼む!」
と、魔眼をネウロイに向けながら坂本が
「はい!」
必死に、だが確実にネウロイを
「……見つけた!」
とうとう坂本がコアを発見した。
外見的には
「あれなの?」
大陸方面に降下してゆくネウロイをにらむミーナ。
「ああ」
「全隊員に通告。敵コアを発見。私たちが
ミーナはインカムを通じ、全機に命ずる。
「了解!」
と、バルクホルンたち。
「行くわよ!」
「了解!」
芳佳たち三人はコアを追い、雲の中に突っ込んだ。
「いた!」
雲を抜けると、急に視界が開けた。
ミーナは急降下を続けるコアを発見する。
そして、坂本と芳佳も。
一発がかすめ、コアは弾かれたように方向を変えた。
「宮藤!
「はい!」
コアを追って、反転する芳佳。
一発、二発、三発。
命中する
そして。
パーン!
中心部を
降り注ぐ光の破片に対し、三人はシールドを張る。
しかし。
「うっ!」
坂本のシールドだけを、破片のひとつが
「……あ!」
破片は側頭部をかすめ、髪の毛が数本、宙を
「美緒っ!!」
この時、ミーナが放った叫びには、
だが、その場に居合わせたウィッチで、これに気がついたものはいなかった。
* * *
「芳佳ちゃん、すっご〜い!」
真っ先に芳佳に飛びついたのは、リーネだった。
「ふん! あんなの、まぐれですわよ」
「いや、不規則挙動中の敵機に命中させるのは、なかなか難しいんだ」
バルクホルンは、やられたな、というような表情を見せた。
「宮藤〜、やるじゃ〜ん」
エースのハルトマンも
「えへへ、そ、そうかな?」
と、照れる芳佳たちの下方では、ネウロイの光の
「きれい……」
「ああ、こうなってしまえばな」
坂本も認める。
「きれいな花には
ペリーヌもしんみりとした口調になるが……。
「自分のことかあ〜?」
と、ハルトマンに冷やかされる。
「なっ! 失礼ですわね! ……まあ、きれいってところは認めて差し上げてもよろしいですけど」
「棘だらけってか?」
さらに
「うぬぬぬ〜っ! どうしてあなたって人は、ど〜してそう他人の
「や〜い、棘だらけ〜!」
「き〜っ!」
と、はしゃぐ彼女たちを
(……まさか)
(まさか)
ミーナは
(まさか)
「……ミーナ?」
地上に向かう彼女に最初に気がついたのは、バルクホルンだった。
「えっ?」
「お〜い、どこへ行く……」
と、追おうとするハルトマンを坂本が制した。
「待て……。ひとりにさせてやろう」
「……そうか」
バルクホルンはつぶやく。
「ここはパ・ド・カレーか……」
パ・ド・カレーは、ガリアのほぼ最北に位置する地。
ペリーヌの故郷でもあるこの土地は、ワイン大国であったガリアには
ただ、
(私は……何を探し求めているの? 苦い
ストライカーを
(だけど、さっき見えたのは……)
やがて。
彼女の目が、
(まさか)
同じ型の車なら、それこそ無数にある。
だが、ミーナには、それが誰の車であるのか、一目で分かった。
(まさか)
錆びついていると思ったドアは、簡単に開く。
「……あ」
赤いリボンのかかったすみれ色の包みが、運転席の上に
まるでついさっき、車の主が忘れていった物のようだ。
もどかしげにリボンを
包みの中にあったのは、一通の手紙と、赤いドレス。
(あの人だ)
ミーナには分かった。
これを残していったのが、彼だということが。
(クルト……)
君だけを戦わせたくない。
あの日、静かに燃える
クルト・フラッハフェルト。
ネウロイさえ現れなければ、同じ音楽の道を、ずっと手を
ミーナと
あの星降る夜、クルトは自分も軍に志願したことをミーナに告げ、
ミーナは初め、自分の耳が信じられなかった。
自分が戦場に
だが。
ミーナにとって、クルトの指は
その才能は音楽を通じてのみ、発揮されるべきものだったのだ。
しかし、機械いじりが好きだったクルトは、整備兵としても
戦場は、
そして何より、クルト自身が、ミーナが自由に空で戦えるよう、手を差し
(それでも……止めるべきだった)
もう二度と。
ミーナがクルトの
生きている限り再び
「…………」
「もういいのか?」
地上に降りた時、ストライカーを脱いだ場所には、坂本が待っていた。
「ええ」
ドレスの包みを
顔を上げると、もうそこには打ちひしがれた少女の悲しみはなかった。
「基地に
「了解」
坂本は小さく
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